国内初となるアクティブETFが東証上場。新NISA利用拡大の期待も担う
先週木曜日の9月7日に日本で初となるアクティブ運用の上場投資信託(ETF)が、東京証券取引所に上場した。東証はこれまでパッシブ型(指数連動型)のETFしか上場を認めてこなかったが、この度6本のアクティブETFが上場された。2024年から始まる新しい少額投資非課税制度(NISA)を見据え、金融商品の選択肢を広げて個人の投資拡大を促す役割もある。
アクティブETFはパッシブETFと異なり、ファンドマネジャーが市場平均を上回るリターンを目指して投資銘柄を自由に選べるのが特徴である。またパッシブETFや一般の株式と同様に、取引所の立会時間中にリアルタイムでの売買が可能だ。もちろんアクティブETFの価格もリアルタイムで変動する。
世界のアクティブETFの運用残高は約80兆円。2018年から約5倍に増加
世界のアクティブETFの運用残高は、今年6月末時点で過去最高となる5830億ドル(約86兆円)となっている。2018年時点から約5倍に増え、同期間のETF全体の増加ペース(2倍)を大きく上回る活況ぶりだ。日本のアクティブETFの普及は世界から完全に取り残されてきたが、ようやく昨年から解禁の議論が始まり、今回の上場に漕ぎつけた。
第1弾として上場したのは、野村アセットマネジメント、三菱UFJ国際投信、シンプレクス・アセット・マネジメントの3社による合計6本のアクティブETFだ。特にシンプレクスから出された3本のETF「PBR1倍割れ解消推進」「政策保有解消推進」「投資家経営者一心同体」はそれぞれ明確な投資テーマに特化したETFであり、ユニークかつ時代が求める投資視点を提供している。野村からは「日本成長株」「日本高配当株」、三菱からは「高配当日本株」のETFがリリースされた。
アクティブ投信と比べて、販売手数料が不要で信託報酬も低いことが魅力
「アクティブ」と聞けば、投資信託のアクティブ型投信を真っ先に思い浮かべるが、アクティブETFは株式市場で直接売買できるため、証券会社や銀行などの販売会社に支払う手数料がかからず、運用会社に支払う信託報酬もアクティブ投信と比べて低コストで投資できるのが特徴である。
例えば、野村アセットの「NEXT FUNDS 日本成長株アクティブ上場投信」の信託報酬は年0.6875%。通常、年1~2%程度の信託報酬がかかる日本株アクティブ投信と比べて低水準だ。しかも、投資信託は非上場であるため、1日に1回算出される基準価格でしか売買できないのに対して(注文時点では正確な取引価格が分からないのも難点)、ETFなら売買したいときにリアルタイムで取引できる良さがある。
市場平均を上回るアクティブ投信は少数。最大要因は信託報酬等のコスト
世界のアクティブETF市場が拡大している要因として、低コストに加え、価格が大きく変動する場面で機動的に売買ができるメリットが差別化要因となった点がある。コストが高く、流動性も劣り、特徴のないアクティブ投信は淘汰される現象を生み出している。
ところで、「市場平均を上回るリターンを目指して投資銘柄を自由に選べるのが特徴である」はずのアクティブ型ファンドだが、市場平均を上回るパフォーマンスを挙げるものは少ない。S&Pダウ・ジョーンズ・インデックス社の調査では、2022年までの過去10年間で各国の株価指数を上回ったアクティブ型の比率は日本で18%、米国9%、欧州10%、インド32%、ブラジル11%など国内外ともに1~3割にとどまっている。その一番の要因はやはりコストだ。投信の基準価格は運用成績から信託報酬などのコストを引いた値だが、日本のアクティブ型株式投信の信託報酬の平均は年1.6%。指数に連動するインデックス型は年0.1%程度が目立つのと比べると16倍も高い。かなりの負担である。さらに、あまり一般的には語られない問題点がある。
アクティブ投信で巨額の資金流出が起きると、大抵は成績不振に陥る
私が運用会社で中小型株のファンドマネジャーをしていた時代。その時の一番の悩みの種は資金の流入と流出だった。運用成績が良くなると、それに着目した個人投資家が私のファンドを買ってくれる。もちろん嬉しいが、ファンドは基本的にフルインベストメントである。資金流入をほったらかすわけにはいかず、投資しなければならない。何に投資をするか? 基本的には新しい企業に投資するのではなく、今保有している企業の買い増しを行う。流入額が小さいと問題ないが、ファンドの数%にも及ぶ資金流入が連日続くと大変だ。保有株の継続買いで株価がどんどん上がり、ファンドの成績が見かけ上さらに良くなるのだ。すると、さらなる資金流入→保有株の継続買い→資金流入という構図になる。
ファンドの運用額が極端に大きくなると、投資対象を無理に広げなければならなくなり、それがファンドの劣化をもたらすわけである。成績も振るわなくなり、今度は資金流出が起こり、保有株を売らなければならない。自らの売りで株価は当然下がる。するとさらなる資金流出が起こる。資金流出→保有株の継続売り→資金流出という流れが続いてファンドの成績はガタガタになる。
一度出来上がってしまったファンドが大きな資金流出を食らうと、ほとんどの場合、成績が振るわなくなるというのは知っておくべきことだ。これまで成績が良かったのは「単に資金流入の時期に基準価格が吊りあがっただけ」かもしれないのだ。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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