去年のジャクソン会議はFRB議長発言で株価急落。今年も悪夢の再来か?
パウエル議長の講演でNYダウは1008ドル安、9月も9%安と急落―。
毎年8月下旬にカンザスシティ連銀の主催で3日間にわたって米国ワイオミング州のジャクソンホールでシンポジウムが開催される。各主要国の中央銀行総裁や幹部、経済学者らが集まり様々な議論が交わされる。ジャクソンホール会議と言われるもので、米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長の講演もおこなわれる。米連邦公開市場委員会(FOMC)と同様に世界中が注目するイベントである。
冒頭の「パウエル議長の講演でNYダウは1008ドル安、9月も9%安と急落」は、実は1年前の2022年8月26日(金)に起きた出来事だ。わずか8分40秒の演説の中でパウエル議長は「やり遂げるまでやり続けなければならない」とインフレ退治を目的とした利上げを継続する決意を表明。2023年早々にも政策金利は低下するとのノーテンキな楽観相場に警鐘を鳴らし、タカ派的な姿勢を鮮明にしたことからマーケットは急落し、「逆金融相場」への流れが強まった瞬間である。
「今年はタカ派的な要素は乏しい」と私が予想した通り、波乱なく通過
このような悪夢があったため、今年の8月25日(金)の23:05(日本時間)から始まるパウエル議長の講演を控えてマーケットには緊張感が走っていた。
「今年のパウエル議長はタカ派的なサプライズ姿勢を見せる要素は乏しい」「従来通りインフレ抑制に対する姿勢を示しつつ“追加利上げの判断はデータ次第”、“会合ごとに決定する”との見解を繰り返す可能性が高い」「大きな波乱の可能性は小さい」と私は自身の投資助言業務で前もってレポートを出していたが、実際この日の米国市場は主要3指数揃って上昇し波乱はなかった。パウエル議長のコメントの骨子は「インフレ率は依然として高すぎる」「必要ならば追加利上げの用意がある」という2点であったが、いずれも想定内の発言である。
債券市場では、もう一段の利上げに備えて長期金利は8月22日に4.36%をつけていた。これは2007年11月以来となる15年9ヶ月ぶりの高水準であり、昨年のジャクソンホール・ショック時を上回っていたのだ。それが8月31日時点では4.10%まで低下して落ち着きを取り戻している。
冷静に考えれば、米国のインフレ率はピーク時9%超えの状態から現在は3%台まで低下しているため金利が一段と上昇するのはおかしいわけだが、マーケットはいろいろな思惑で動くため、ファンダメンタルズの実態とかけ離れたことがしばしば起こる。
米国の経済指標を総点検。インフレ抑制は進み、金融引き締め局面は終盤
先週はいろいろと米国の重要な経済指標が発表されたので点検してみよう。まずは7月の雇用動態調査(JOLTS)である。全米での求人件数は予想の946.5万人を下回る882.7万人となり、2021年3月以来の低水準にまで低下した。8月のADP全米雇用リポートは+17.7万人と予想の+20万人を下回った。また8月の雇用統計では失業率が予想の3.5%より悪化して3.8%となり、平均時給の伸びは予想を下回った。労働需給が緩和しており、インフレ圧力の鈍化につながるとの見方が広がった。また、8月の消費者信頼感指数も106.1と予想の116.0を下回った。これによって、政策金利予想を示す民間調査のフェドウオッチでは9月と11月の政策金利据え置きの可能性が高まった。
インフレ抑制に向けて正しい方向に進んでいるという感じであり、私の想定に沿った展開だ。パウエル議長は「あと1回の利上げの可能性」について言及しているが、再利上げの可能性はかなり小さくなっていると見るべきだ。仮に、もう一度利上げをするようなことがあれば「これが本当の最後」という明確なメッセージになると思う。要するにあと1回利上げがあろうがなかろうが、金融引き締めへの警戒をする局面はほぼ終わっているということになる。
私がしばしば議論するマーケットサイクル。株式市場は「金融相場」「業績相場」「逆金融相場」「逆業績相場」の4つの局面がグルグル回りながら展開していくわけであるが、今我々がいる場所は「逆業績相場」である。金利引き上げのメインストーリーが終わったものの、高い金利水準で景気が減速し、企業業績も悪化するというのが「逆業績相場」である。
今の米国の経済状況は非常に強い。これだけ金利を引き上げても多くの主要企業の業績は堅調であり、経済指標も腰折れすることなく、株式市場も底堅い動きを見せている。
逆業績相場もそろそろ最終盤。来たるべき金融相場に備えることが大切
一方、日本においては4~6月期の国内総生産(GDP)の速報値において、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比1.5%増、年率換算で6.0%増となった。プラス成長は3四半期連続であり、事前の民間予測の年率換算GDPの伸び率3.1%増を大幅に上回った。内需がマイナス1.2ポイント、外需がプラス7.2ポイントの寄与度。個人消費が弱含む一方、輸出の復調が全体を押し上げた。GDP実額は実質年換算で560.7兆円と過去最高。コロナ前のピークの2019年7~9月期の557.4兆円を超えた。これは喜ばしいことである。また、上場企業の2024年3月期の純利益は前期比6%増え、3期連続で最高益になる見通しとなっており、日本も非常に好調だ。
「逆業績相場」では通常、景気減速や企業業績悪化に身構えて株式市場は冴えない展開となるがそうはなっていない。今考えるべきことは「高水準に引き上げられた政策金利(米国を中心として)がいつ引き下げに転じるか」である。そもそもインフレ退治のための金融引き締めであり、インフレが鈍化すれば金融引き締めは副作用が大きい。そのあたりのことを考えなければならないのだ。ということで、今の私の頭の中は「逆業績相場もそろそろ最終盤へ」というシナリオになっており、「来たるべき金融相場に備えてどうすべきか?」に移行している。皆さんは今の株式市場をどう捉えているだろうか?
「勝者のポートフォリオ」は過去最高値更新。9月は更なる飛躍を期待!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は1か月ぶりに過去最高値を更新、年初来高値8銘柄と大きく躍進した。8月は米金利上昇と中国景気減速懸念でマーケットは停滞気味であったが、9月は期待したい。
9月6日(水)20時より毎月恒例のWebセミナーを開催する。今回のテーマは『逆業績相場もそろそろ最終盤へ』。マーケットはどんどん進んでいる。来たるべき金融相場に向け「勝者のポートフォリオ」ではテンバガー候補銘柄への投資を開始。テンバガーが生まれるロジックや銘柄発掘法のスペシャル講義もスタート。コラムでは個別銘柄の話はなかなかできないが、セミナーでは今後大きく上昇が期待できる銘柄も存分にお話する予定だ。会員限定だが、10日間無料お試し期間中でも参加可能。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。誰でも参加できるのでぜひどうぞ。なお、会員の方は後日アーカイブでの視聴ならびにプレゼンテーションPDFもご利用いただけるようになっている。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
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