12月FOMCはノーサプライズ。投資家注目のドットチャートの結果は?
「NYダウが512ドル高なのに、日経平均はどうして400円安なんだ!」―。
先週木曜日の東京市場。非常に忙しい取引時間中に、私に怒りをぶつけてくる個人投資家がいた。もちろん心情的には理解できる。「日本株も大きく上がるはずなのに…」と期待していたのに、そうなっていないからだ。だが、一言申し上げておきたい。こういう人は感情をコントロールできず、自分の気分次第で衝動的に売買する傾向がある。いわゆる「負け組投資家」の典型だ。私流に言えば「ダメダメ、ダメ子」である。株式投資に全く向いていないタイプと言える。皆さんはこのような投資家に決してならないようにしていただきたい。
日本時間の木曜日未明に非常に重要なイベントがあった。今年最後となる米連邦準備理事会(FRB)による米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果発表だ。3会合連続で政策金利を据え置いた(5.25%~5.50%を維持)。これは事前予想通りであり、サプライズは全くない。今回最も注目を集めたのがドットチャート(FOMC参加者による各年度末の政策金利予想、3カ月ごとに更新)だ。9月のFOMCにおいて2024年の利下げ回数が従来の4回から2回に変更されたことで「大胆な」金融緩和から「ショボい」金融緩和になったと受け止められて株価が急落したことは記憶に新しい。インフレ懸念も収まってきた12月は果たしてどうなるか? 皆、固唾を飲んで見守っていた。
「利下げ時期を議論」とのFRB議長発言を好感し、NYダウは最高値更新!
ドットチャートの結果は「2024年に3回利下げをおこない、年末の政策金利は4.50%~4.75%へ引き下げる」。すなわち利下げ回数は9月の2回から3回に引き上げられ、「ショボい」金融緩和から「積極的な」金融緩和へ、との評価がマーケットに広がった。取引時間中に始まったパウエル議長の記者会見では「インフレは失業率の大幅な上昇を伴うことなく緩和してきた」「我々は政策金利が今回の引き締め局面のピークか、それに近い水準にある」とコメント。さらに続けて「追加利上げではなく、利下げの時期を議論した」と明言したことで2022年3月からスタートした利上げは2023年7月のFOMCが最後だったと確信された。
これを受け、米国市場ではNYダウが2022年1月の過去最高値3万6799ドルを更新する3万7090ドルに上昇し、S&P500やナスダック指数も揃って年初来高値を更新。ちなみに1年4カ月の利上げ期間は2001年以降最短で、合計5.25%の利上げ幅は1980年代以降で最大である。
NYダウ急騰翌日の日経平均急落を見て「日本株はダメ」と思うのは短絡的
「積極的な金融緩和が明確になり、NYダウが過去最高値を更新。こんないいニュースはない。翌日の日経平均は急騰する!」との期待が高まった。それが外れて苛立つ個人投資家が、冒頭のように私に怒りをぶつけてきたという訳である。
どうして日経平均は400円もの独歩安を演じたのだろうか? この理由をきちんと押さえておくことが大事だ。さもないと「米国株は凄いけど、日本株はダメだ」と短絡的に考えてしまいかねないからである。「目の前で起きている現象を常に冷静に見て、客観的に分析し、投資行動に移すこと」―。これこそが、ダメダメ投資家と対極の「勝ち組投資家」である。
賢明な皆さんなら、もうすでにお気づきだと思う。為替のドル円が大きく動いたからである。FOMC発表前までは145円台で推移していたが、あっという間に東京の取引時間中に140円台後半にまで急騰した。米長期金利が4.00%まで低下したことで、日米金利格差が縮小してドル売り、円買いが起こったというわけだ。これを受け株式指数先物への売りが鮮明となり、自動車などの輸出関連株を中心に大きく下げる銘柄が続出、金利低下によって収益への打撃が懸念される銀行や保険といった金融株も大きく下落した。円が急伸して株が売られる現象は、先々週の木曜日と金曜日にもあった。前回のコラムで話題にした、日銀の植田和男総裁の「チャレンジング発言」が誤解されてマーケットに解釈されたからだ。
利下げ開始で金融相場の扉が開かれる。2024年はグロース株に投資妙味
今後の注目点は日銀の金融政策決定会合だ。今週の12月19日(火)に発表される結果が非常に注目される。植田総裁は前回の10月会合において長短金利操作(イールド・カーブ・コントロール、YCC)の修正を行い金融正常化へ向けて前進した。仮に12月の会合で「大規模金融緩和維持」ならばドル買い・円売り、「マイナス金利の解除」ならばドル売り・円買いが進むと思う。後者の場合は国内金利の上昇で銀行や保険など金融株が恩恵を受ける。
FRBは2024年に3回の利下げ見通しを示したが、実はマーケットではこれをさらに上回る利下げを想定している。フェッドウオッチ(米金利先物の値動きから今後のFOMCごとの政策金利の先行きを予想)では2024年は実に6回の利下げを予想しているのだ。1月の利下げ予想は17%にとどまるが、3月は82%となり、それ以降は年末に向けて毎回利下げすることが想定されている。これはかなり楽観的な見通しだと私は考えている。なぜならば、まだ利下げをするほど景気減速は十分なレベルではなく、下手に利下げを続ければこれまでの利上げ効果を帳消しにする可能性があるからだ。要するにインフレ加速・景気拡大への道だ。
とはいえ、2024年の利下げストーリーは現実的となった。利下げが始まれば、それは「金融相場」の始まりである。今までパッとしなかったグロース株に日が当たり、「利益成長こそ命」という相場展開になる。テンバガー(10倍株)が最も出現するのも金融相場である。2024年は非常にダイナミックな相場展開になることを私は期待している。
1月4日新春Webセミナー「2024年のマーケット展望と投資戦略」を開催
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。「テンバガー」についてのスペシャル講義となる全13本の講義動画が完成し公開中である。来たるべき「金融相場」に向けて着々と準備を進めている。また、12月から開始した太田流「新NISA活用法」も大いに参考にしていただきたい。
12月6日(水)20時よりWebセミナーを開催した。テーマは『年末ラリーに向けてマーケットを総点検』。年末の平日夜にもかかわらず参加者は274名となり盛況だった。次回は年明け1月4日(木)20時より『2024年のマーケット展望と投資戦略』と題してWebセミナーをおこなう。そう、まさに大発会の日だ。このコラムでは個別銘柄の話はできないが、セミナーでは今後大きく上昇が期待できる注目銘柄も存分にお話する予定だ。会員限定だが10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。セミナー当日14時までのお申込み(15時URL配信)。資産運用で大きく躍進されたい方々の積極的なご参加をお待ちしている。なお、有料会員の方々は後日アーカイブでの視聴ならびにプレゼンテーションPDFもご覧いただけるので見逃さないでほしい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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