日本企業の業績は好調。2024年3月期の純利益見通しは前期比13%増
日本経済は成長しない、日本企業には期待できない―。
海外投資家からいつも口癖のように言われるこのセリフ。「やはりそうですよね。日本は成長している印象はないですし、欧米企業に比べると魅力的な企業は少ないですし…」と日本人もやや自虐めいた返事をしてしまいがちだと思う。ところがどっこい、今グローバルに見て最も業績好調なのが日本企業である。
2023年7~9月期の決算発表がほぼ出揃ったが、2024年3月期の上場企業の純利益見通しは前期比13%増となっており、9月時点の6%増から加速している。円安の追い風に加えて、国内外で値上げが浸透していることが大きな要因だ。これで3年連続での最高益更新は確実。好業績や金利低下を受けて先週水曜日の日経平均は823円高と今年最大の上げ幅となり、7月3日の年初来高値3万3753円まであと233円にまで迫った。
トヨタ自動車を筆頭に通期純利益を上方修正する日本企業が続出
3月期決算企業を見ると、10月以降に通期純利益を増額したのが66社(金額合計2.8兆円)、一方減額したのは28社(同0.7兆円)となっている。もちろん1社で1.37兆円もの上積みをしたトヨタ自動車の影響は大きいが、それを除いても上方修正の方が優位である。また、日本企業の稼ぐ力を図る指標「営業利益率」を見ると、東証株価指数(TOPIX)採用企業の7~9月期の営業利益率は8.1%であり、同四半期として最高の水準にある。値上げがうまくいっていることが数字として現れていると思う。
グローバル比較で見た場合、日米欧の予想1株当たり利益は日本が14%増、米国が6%増、欧州が10%減となっており、非常に大きな格差が生まれている。特に欧州はインフレと景気後退が同時に進む「スタグフレーション」の色彩が強まっており、ユーロ圏の国内総生産(GDP)成長率は7~9月期にマイナスに転落した。一方でユーロ圏の9月の消費者物価指数(CPI)の上昇率は4.3%、英国は6.7%となり、2~3%台の米国や日本を上回っている。
日経平均28%高など日米欧の年初来株価パフォーマンスも日本が圧倒
こうしたことを反映して、年初来の株価パフォーマンスにも顕著な違いが生じている。11月16日時点での日経平均は28%高、米S&P500は17%高、欧州の主要600社で構成する株価指数「ストックス600」はわずか6%高に留まっている。米景気鈍化懸念など世界の株式市場はリスクを抱えるが、日本株の相対的な優位性が浮かび上がっている構図だ。PER(株価収益率)を比較すると日経平均が15倍、米S&P500が18倍、ストックス600は12倍。ストックス600が最も割安だが、2024年1~3月期まで4四半期連続で減益が続く見通しとなっており、投資家は敬遠している状況だ。
ところで、先週水曜日に内閣府が発表した7~9月期のGDP速報値は前期比年率2.1%減となった。マイナス成長になるのは3四半期ぶりであり、事前の民間予測0.5%減を下回った。経済活動が落ち込んだ大きな理由は根強いインフレである。一方、米国の7~9月期のGDPはプラス4.9%。GDPと企業決算は単純にリンクするものではなく、そのギャップからいろいろな要素が読み取れるが、米国経済は主力の個人消費に弱含みのサインが出ており、金融引き締め効果もあって先行きは減速感が強まるのではないかと思う。
「決算は絶好調も株価が上昇しない」とモヤモヤする個人投資家に告ぐ
さて、日米欧における経済や企業業績の近況を見てきたが、ここからが今回の大事な話である。日本企業の決算発表が続々とおこなわれる最中、次のような質問を私はAさんから受けた。
「決算は絶好調なのに株価が思うように上がっていません。理由が読み取れずモヤモヤしていています。太田先生、どのように考えればいいでしょうか?」
その代表例が銀行セクターだと思う。メガバンクや地銀の決算はいまだゼロ金利下にあっても驚くほど好調の銘柄が相次いだ。しかしながら、日経平均が823円高と今年最大の上昇日に2%も下がる事態が発生。前日深夜の米ADR市場では好決算の発表を受けて三菱UFJも三井住友も急騰していたのにもかかわらず、である。
1つには米長期金利が急低下したことが災いしているという要因はあるが、東京市場での寄付きは2%高から始まった。ところが、寄付き天井でじわりじわりと売りが増えて、まさかのマイナス転換。そのまま売り優勢の状況が支配した。
株価は中長期的には必ず業績とリンクする。イライラしてぶん投げるな
「Aさん、あなたは保有株を抱えたままモヤモヤしているだけですが、少しでも気に入らない動きになると“なんじゃこれは!”と言って株をぶん投げる個人投資家たちがたくさんいます。なので、そういう人になりたいか、なりたくないか…」
「絶好調決算なのに株価が思うように上がらない」「理由が読み取れずモヤモヤしている」―。
「おっしゃることはよく分かりますが、株式市場は実社会とは違って理屈通りに動いてくれないことが往々にしてあります。ましてや、短期的な動きなら尚更のこと。中長期的には株価は必ず業績とリンクしますので、あまりイライラする必要はないと思います」というのが私の回答だが、皆さまの保有銘柄はどうだろうか?
12月6日(水)に今年最後のWebセミナーを開催予定。2024年を占う!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。2021年10月にスタートしてから早くも3年目を迎えた。2023年10月末までの累計パフォーマンスは+22.7%(TOPIX+16.9%、日経平均+9.4%、グロース250指数-42.2%:同期間の配当込みベース)と市場に対して大きく勝ち越しており、おかげさまで会員数も急増している。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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