成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

日銀がマイナス金利を解除してもなぜ円高にならない?多くの専門家が年初に円高になると予想していた中、私が大幅な円高は起こらないと見ていた理由とは?

2024年3月28日公開
ポール・サイ
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

 今回は、最近の為替相場に焦点を当てながら、市場のメカニズムについて解説してみたいと思います。

2024年の年初には、多くの専門家が円高になると予想していた

 今年(2024年)の年初には、多くの専門家が円の強含みを予想していました。そのロジックは次のようなものでした。

 まず、2024年が円高になると予想された主な理由は、アメリカの金利低下にありました。

 具体的に数値を挙げると、米国の長期金利は2023年10月のピーク時4.99%から、わずか数ヵ月のうちに3.78%まで低下しました。現在は約4.2%とある程度戻しましたが、4.99%というピーク時の水準までは戻していません。

 また、アメリカのインフレ率も2022年6月の9.1%から3%台へと低下しました。これには原油価格の下落が影響しており、今後もその効果に期待が寄せられています。

 これらとは別の要因として、日本の貿易収支が改善していることも挙げられていました。

 円安が輸出を促進し、安い原油価格が輸入コストを抑制することで、2023年9月に日本の貿易・サービス収支は黒字化しました。この流れは、原発再稼働や外国人観光客の増加によって続き、さらなる国際収支の改善を促すと見られていました。

 このようなことから、今年(2024年)の年初には米ドル/円が1ドル=120円台へ早々に達する可能性があるという見方もあったのです。この予想には多くの人が驚くかもしれません。

米国の金利・インフレの動向や日銀政策変更の市場予想は当たったのに、なぜ円高にならないのか?

 しかし、米国の金利動向・インフレ率、日銀のマイナス金利解除やイールドカーブ・コントロール(YCC)廃止といった市場予想が当たったにも関わらず、円は横ばいか、さらに弱含みとなりました。なぜでしょうか?

米ドル/円 日足米ドル/円 日足 2024年3月19日、日銀はマイナス金利解除、YCC撤廃を含む大規模な金融政策の変更を行ったが、円高(米ドル/円下落)にはなっていない。 出所:TradingView


 この現象は、市場がコンセンサス(一般的見解)とサプライズ(予期せぬ出来事)に基づいて動く良い例です。市場価格は将来の予想と現在の状況を踏まえて形成されます。

 米国の長期金利の低下、インフレの緩和、原油価格の下落、日本の貿易収支の改善は、すべて事前に十分予想されていた事象です。したがって、これらはすでに為替レートに反映されていました。仮に予想どおりに進展しても、すでに価格に織り込まれているため、それによって為替レートが変動することはありませんでした。

私が初めから大幅な円高は起こらないと見ていた理由とは?

 私自身は、初めから大幅な円高は起こらないと見ていました。

[為替に関する参考記事]
米ドル/円相場が急落したが、2024年はどう動く? 米ドル/円、S&P500、米日金利差のチャートで見えてくる為替変動の3つのドライバーとは?
為替は金利差だけでは動かない! 2024年は米ドル安・円高!との予想が多かった中、なかなか下がらない米ドル/円はこれからどう動く?

 その理由としては、日銀が意味あるぐらいの大きな幅で利上げを行うことは難しいと考えていたからです。さらに、米国の長期金利低下もそれほど速くないと予想していました。

 また、政策面で言うと、現在の日本政府と日銀が望むのは円高ではなく、インフレを通じた賃金の上昇です。日本の当局は賃金上昇を景気回復の起爆剤と見ているため、円安を容認する傾向があると思われます。

 そのため、中長期に渡る大幅な円高は期待しないほうが良いと私は思います。

 多くの日本人は、円と日本国内経済に関するエクスポージャーが過度に大きいと思います。円安のリスク、日本国内が不景気になるリスクなどは、常に存在しますので、時間をかけて、通貨、投資先の分散をしたほうがいいと思います。

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2022年の最強クレジットカード(全8部門)を公開!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

大企業で1億円
NISA投信グランプリ
チャート入門

6月号4月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[大企業で10倍株!]
◎第1特集
ソニーやサンリオ、JALなど92銘柄
大企業で10倍株!

●日本が誇る大爆騰株!最強10倍株
●夢を買う!次世代テーマ10倍株
●現実的に狙う!手堅い実力10倍株

●若手アナリスト&編集部員が発掘!
株価10倍になるZ世代株
●株価がすべて200円未満!激安10倍株
●オリエンタルランドや東京エレクトロンは?低迷大型株を売り買い診断

◎第2特集
第3回ダイヤモンド・ザイNISA投信2025
グランプリ宣言!
ザイは毎年、個人投資家目線でNISAで買いの投信を表彰します!

●日本株総合部門
●日本中小型株部門
●米国株部門
●世界株部門
●新興国株部門
●リート部門
●フレッシャー賞
●ダメなモンはダメと言います!期待ハズレな残念投信3本を今年も発表!

◎第3特集
値上げに勝つ!インフレ時代の最強節約術77
●コメの値上がりが家計を直撃!食費のワザ
●省エネで家計を守る!光熱費のワザ

●惰性で払っている固定費を点検!生活費のワザ
●もらえる制度はフル活用!医療&教育費のワザ
●資産40億円の億り人マサニーさんの節約術

【別冊付録】
3回集中講座の第1回!
買い時・売り時がQ&Aでわかる!チャート入門
「チャートのつくりとトレンドの読み方」

◎連載リニューアル!
●プロがこの先1カ月の日本株のポイントを解説&ガチ予測!
●3カ月先を読む「日本株」と「為替」の透視図

◎いつもの連載も充実
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.09
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.04
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年3月編
●おカネの本音!VOL.34 オモロー山下さん
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.102
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
●人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報