【1】今日の株式相場早わかり!
米利下げ期待高まるも上値は重く
日経平均株価は3日ぶり反発! 9日の米国市場では主要株価指数がそろって上昇し、NYダウは7日続伸となった。先週の週間新規失業保険申請件数が予想を上回り、連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ期待が高まったことで、幅広い銘柄に買いが入った。米株高を受け、今日の日経平均株価は上昇して始まると、一時は上げ幅を650円超にまで広げた。しかし、来週に決算発表のピークや米4月消費者物価指数(CPI)の発表を控える中、週末を控えた様子見ムードもあり、早い段階で急失速すると、その後は膠着感の強い展開となった。
決算関連では増益見通しや増配を発表したダイキン工業が急伸した一方、材料出尽くし感からSCREENホールディングスは急落。取引終了後に発表された東京エレクトロンの2024年3月期は営業利益は前期比26.1%減の4562億円と市場予想を小幅に上回った一方、2025年3月期見通しは27.6%増の5820億円と市場予想をやや下回った。米国では今晩、5月のミシガン大学消費者調査(速報)が発表される。
【日経平均】38229.11円↑(+155.13円)
【グロース250】650.23↓(-2.74)
【NYダウ】39387.76ドル↑(+331.37ドル、9日)
【ナスダック】16346.265↑(+43.509、9日)
■日経平均株価チャート/日足・6カ月
【2】今日の注目株!
コスモエネなどが株主還元強化、鉄鋼は明暗
1~3月期の決算発表が佳境に入ってきた。相場全体の方向感が定まらない中、決算を受けた個別株物色はより強まりやすいだろう。個人投資家の注目度の高い株主還元に関する発表も増えており、しっかり内容を確認しておこう。
日本製鉄と神戸製鋼所はともに2024年3月期業績が計画を上振れて着地。一方、2025年3月期の純利益については日本製鉄が前期比45.4%減であるのに対し、神戸製鋼所は特殊要因の影響もあるが、9.5%増と対照的な結果に。経常利益などで比較しても神戸製鋼所の方は減益率が小幅にとどまっている。中国の不動産不況などにより鋼材需要が低迷する中、鉄鋼事業を主力とする日本製鉄の業績が苦戦するのに対し、半導体向けのアルミ板・素材や建設機械などの堅調さが全体を支える神戸製鋼所は、分散経営の強みが発揮される形となった。配当予想は共に前期と同じ水準とされたが、日本製鉄は大幅減益下での配当水準の維持はポジティブであるし、神戸製鋼所も減配が懸念されていたため、好印象の結果となった。
住友不動産は毎年の持続的増配ペースを1株あたり7円から10円に引き上げ、また、政策保有株の比率を10%以下とする目標を3年前倒しにすることを発表した。コスモエネルギーホールディングスは増益見通しや自社株買いに加えて、下限配当を1株あたり250円から300円に引き上げるとした。高配当株として人気常連の武田薬品工業も、研究開発費用の増加などにより、当面は増配が期待されていなかったが、1株あたり配当金を前期の188円から196円(中間・期末ともに98円)に引き上げた。
株主還元に関して積極的な発表をした企業の株価は堅調に推移することが予想され、今後の動向に期待したい。
■神戸製鋼所株価チャート/日足・6カ月
【3】金曜連載「ザイアナリスト小林大純『IPO株ココだけの話』」
4月までのIPO、株価ランキングでチェック!
例年、ゴールデンウィーク後しばらくはIPO(新規株式公開)がない。次は5月28日上場の学びエイドとやや間が空くため、今回は4月までに上場した今年のIPO株をランキング形式でチェックしよう。
今年これまでに26社が新規上場(前年同期間も26社)。公開価格に対する初値の騰落率は26社平均で+57.7%となっている(同+90.7%)。上昇率上位5銘柄は下表のとおりで、1位がジンジブ(+127.4%)、2位がCocolive(+124.2%)、3位が情報戦略テクノロジー(+122.0%)だ。年初からの日本株の大相場で、IPO株にも取引開始から積極的な買いが入り、公募・売出規模の小さい(=換金売りが出にくい)銘柄は初値を飛ばした。ただ、大型株に比べ新興株の上昇は限られ、IPO株も初日の気配値上限である公開価格の2.3倍近辺では過熱感が意識されやすかったようだ。
さらに、4月になると東証グロース市場250指数が年初来安値を大きく更新。IPO株もそのあおりを受け、初値後の株価パフォーマンスは26社平均で-22.6%に沈んでいる。プラスを確保しているのはトライアルホールディングス(+30.6%)、SOLIZE(+27.4%)、ソラコム(+10.0%)の3社のみだ。いずれも初値は堅調だったが、高騰したとまでは言えない水準。その方が上値余地を残していると捉えやすいだろう。
また、九州地盤の小売大手であるトライアルHDと、KDDI系のIoT(モノのインターネット)ベンチャーであるソラコムは公開株の海外販売を実施。SOLIZEは3Dプリンターを活用したものづくりベンチャーとして知られており、幅広い投資家に成長性を訴求することも重要な要素と言えそうだ。
小林大純
ダイヤモンド・ザイ アナリスト
早稲田大学法学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科)修了(MBA)。金融情報サービス会社などを経て現職。日本株アナリストとして各種メディアで活動中。
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