【1】今日の株式相場早わかり!
ダウ8連騰も、日米の景気・金融政策の先行き注視
日経平均株価は小幅反落! 10日の米国市場ではNYダウが昨年12月以来の8日続伸となった。ただ、5月のミシガン大学消費者調査で1年先の予想インフレ率が上昇する一方、消費者態度指数は急低下し、スタグフレーション(インフレと景気後退の同時進行)への懸念がじわりと拡大。連邦準備理事会(FRB)のボウマン理事が年内の利下げに否定的な姿勢を示したことも話題となった。また、日銀は今日、資金供給のための国債買い入れオペ(公開市場操作)を減額し、国内の長期金利も一段と上昇。過度な円安進行に対応したものとみられている。日米の景気や金融政策の先行きを見極めたいとの思惑が強まり、日経平均株価は方向感に乏しい展開だった。
決算発表は先週末10日がピークで、今週は終盤を迎える。決算発表銘柄の動向はこの後の注目株コーナーで確認しよう。また、今週15日には米4月消費者物価指数(CPI)の発表が控えており、米金融政策の先行きを占う上で一段と注目度が高まっている。
【日経平均】38179.46円→(-49.65円)
【グロース250】650.60→(+0.37)
【NYダウ】39512.84ドル↑(+125.08ドル、10日)
【ナスダック】16340.869→(-5.396、10日)
■日経平均株価チャート/日足・6カ月
【2】今日の注目株!
東エレク決算は物足りなさ? KDDIなど還元好感
先週末10日は3月期決算発表のピークだった。また、顔ぶれも日経平均株価への影響が大きい東京エレクトロン、NISA(少額投資非課税制度)で人気株に挙がるKDDI、インフレ下で期待の声が多い不動産大手などとなっており、これらの決算内容や株価反応を確認しておこう。
東エレクの株価は-1.03%。10日の米国市場でフィラデルフィア半導体株指数(SOX)が1%あまり上昇したこともあり、さえない印象だ。2025年3月期の営業利益は前期比27.6%増の5820億円となる見通しだが、事前の市場予想と比べサプライズに乏しい。また、発行済株式(自己株式を除く)の0.8%に相当する350万株、800億円を上限に自社株買いを実施すると発表したが、規模的に大きな影響を期待できるほどではないだろう。その他の半導体関連株では、KOKUSAI ELECTRICが決算を受けて大きく下落した。
不動産大手では三井不動産や三菱地所が大幅安。三井不の今期営業利益は前期並みとなる見通しで、インフレ下の活躍が期待されていただけに物足りなく映ったとみられる。一方、まとまった規模の自社株買いを発表したホンダ(最大3000億円)やオリンパス(1000億円)、KDDI(3000億円、トヨタ自動車が保有株を一部売却)は堅調だった。KDDIは今期、23期連続増配を計画。1株利益(EPS)を2019年3月期比で1.5倍とする目標を来期に1年先送りしたが、持続的成長と株主還元の両立を図る。
なお、今日の取引終了後に発表されたソフトバンクグループの2024年3月期の最終損益は2276億円の赤字だった。前の期(9701億円の赤字)から赤字幅は縮小したが、市場予想を下回った。
■東京エレクトロン株価チャート/日足・6カ月
【3】月曜連載「ザイアナリスト仲村幸浩『今週の焦点』」
米経済指標と金利動向に注目
先週の日経平均株価は-6.96円(-0.02%)。米4月雇用統計が市場予想を下回ったことで、連邦準備理事会(FRB)による利下げ先送りに対する懸念が後退。長期金利が低下し、連休明けはハイテク株を中心に大幅高となった。一方、為替介入への警戒感や日銀の早期利上げ観測から失速すると、その後は、強弱まちまちな結果の主要企業の決算を背景に、膠着感の強い動きが続いた。
今週は15日(水)に米国で4月の消費者物価指数(CPI)および小売売上高が発表される。CPIと小売売上高は直近、ともに予想を上回る結果が続いてきたが、今回は食品・エネルギーを除くコアCPIが前年同月比+3.6%と3月分(+3.8%)から伸びが鈍化する見込み。小売売上高も前月比+0.3%と3月分(+0.7%)から伸びが大幅に鈍化する予想だ。ともに予想通りとなれば、米雇用統計後の金利の低下基調が強まり、株式市場の追い風になるだろう。一方、コアCPIは前月比では+0.4%と3月と同じ高い伸びが続く想定で、少しでも予想を上振れれば、株式相場は荒れ模様となる恐れがある。なお、14日(火)には4月の卸売物価指数(PPI)も発表予定だ。
主要企業決算は、米国では半導体製造装置大手アプライド・マテリアルズ、小売大手ウォルマートに注目。半導体企業の株価は足元で上値が重くなっており、決算反応も芳しくない。アプライドの決算で盛り返せるかに注目したい。米国ではインフレの高止まりを背景に消費者の景況感が悪化しており、ウォルマートの決算が良くないと、スタグフレーション(物価高と景気後退の併存)リスクが意識されやすく、注意が必要だ。国内ではソニーグループ、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの決算に注目だ。
仲村幸浩
ダイヤモンド・ザイ アナリスト
立教大学経済学部卒業。日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA)。証券会社や金融情報サービス会社を経て2023年10月より現職。マーケットアナリストとして各種メディアで活動中。
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