米大統領選挙はトランプ氏と現職副大統領のカマラ・ハリス氏との対決に
先週は「トランプ・トレードが始まった株式市場」と題してコラムを書いた。11月5日に投開票がおこなわれる米国の大統領選挙。現職の民主党バイデン大統領か、共和党トランプ前大統領か、国民はどちらに米国の未来を委ねるのか。世界のリーダーはやはり今も米国であり、世界中が注目する選挙である。
バイデン氏は数々の失言で評価を落とす一方、トランプ氏はペンシルバニア州での銃撃暗殺事件において間一髪で命を取りとめ、「アメリカの真のリーダーは、どんなことにもくじけない強運のトランプ」「今こそ、すべての米国民が団結を」と歴史的瞬間に強いメッセージを訴えてトランプ氏を優位へと導いた。金融マーケットではトランプ・トレードがスタートした。
「俺は立候補する」と言い張るバイデン氏に対して民主党内は大混乱していたが、結局出馬を断念し、現副大統領のカマラ・ハリス氏にバトンを譲ることになった。ハリス氏は59歳。サンフランシスコ市郡地方検事、カリフォルニア州司法長官、そして上院議員などの公職を長年歴任して副大統領に選出された有能な女性だ。片やトランプ氏は78歳。バイデン氏との戦いでは高齢者批判は有利に働いていたが、今やそのブーメランは自分に戻って来る形となっており、今回の仕切り直し大統領選を「検察官と犯罪者」の対決として見る向きも多いようだ。世論調査ではハリス氏への評価が急速に高まっており、「トランプ氏圧勝」の構図は薄れつつある。9月に予定されるTV討論会は大いに注目される。
株式市場を牽引してきた米ハイテク株が軟調。特に半導体株の急落が顕著
今回の本題は「半導体株は予想通り急落、買うの? 買わないの?」である。
これまで世界の株式市場を牽引してきた米ハイテク株。ところが7月中旬あたりからその様相は一変した。ハイテク株、中でもその中心となる半導体関連の動きを示すSOX指数(フィラデルフィア半導体指数)は7月11日の最高値5904から7月25日には5005まで低下し、下落率は15.2%にもなる。今や半導体銘柄の代名詞にもなっているエヌビディアは6月18日にマイクロソフトを抜いて時価総額世界トップ(3兆3350億ドル、約526兆円)に躍り出て135.58ドルまで買われていたが、7月25日は112.28ドルまで下落し17.2%安となっている。米国による対中半導体規制の大幅強化のニュースが下落に拍車をかけており、世界株安を引き起こしている。
エヌビディアはデータセンターなどで使われるGPUと呼ばれる超高速のAI半導体のシェアが8割と高い。今のところ牙城はほとんど崩されておらず一人勝ちが続きそうとの見方が多い。足元の決算も好調で「今後も期待できる」との思惑から、アナリストたちは次々と目標株価を引き上げた。「エヌビディアのポジションを大量に持っていないと、パフォーマンス競争に負ける」「上昇相場に乗るためにはエヌビディアを買いまくるしかない」という半ば脅迫観念に取りつかれた機関投資家や個人投資家たちがこぞって参戦した。
東京エレクトロン27.4%安、レーザーテック25.1%安など日本勢も急落
それに付随する形で起こったのがいわゆる「エヌビディア祭り」である。エヌビディアの株価上昇をきっかけに、他の半導体関連銘柄がお祭りの如く上昇する現象が米国だけでなく、世界各地のマーケットで見られた。とは言うものの、なかなか本命についていくことは次第に難しくなり、エヌビディアだけのエヌビディア祭りなっていった。むしろ、エヌビディアの上昇についていくため、関連銘柄を売ってエヌビディアを買う動きだ。まさに「エヌビディアのエヌビディアによるエヌビディアのためのマーケット」と化したのである。株式分割によってNYダウの銘柄採用への期待が高まったことも後押しした。
日本市場においては、値がさ半導体株である東京エレクトロン(8035)、レーザーテック(6920)、ディスコ(6146)、アドバンテスト(6857)などが「エヌビディア」祭りに連動する形で買われていた。ところが、先々週から先週にかけて「暴落」とも言える急落が起こった。7月11日と7月26日の株価を比較すると、東京エレクトロンは27.4%安、レーザーテックは25.1%安、ディスコは32.7%安、アドバンテストは19.5%安となっている。
半導体関連銘柄に手を出してはいけない5つの理由
私がダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチとのコラボレーションで投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」の会員には今年の年初から「半導体関連銘柄には手を出すな」と言ってきた。その理由は以下の通りである。
① 投機的・短期トレードが多い(値動きに投資)
② 値動きが激しい
③ 米国発のバブル的な株価形成
④ 株価がすでにかなり割高
⑤ 好決算が出始めたら、株価下落の可能性
日本の半導体関連銘柄はそもそもバリュエーションがアホみたいに高く、しかも中国比率が3~4割もある。米国が半導体という稼ぎ頭の領域において中国牽制の意味合いで規制強化する流れは当然のことだ。要するに「風向きが変わった」のだ。楽観的、ノーテンキに投資して大やけどしている個人投資家たちはお気の毒である。特にレーザーテックは「不正会計をしているのではないか」という投資会社スコーピオン・キャピタルによる詳細なレポートが出された。レーザーテックは否定したが、こういう話が出てくるとたいてい株価は暴落する。気をつけよう。
「半導体株は予想通り急落、買うの? 買わないの?」
皆さんの答えはどうだろうか? 半導体株の現在の下落は「アンシステイマティックリスク」である。個別銘柄リスクそのものだ。ルネサスエレクトロニクス(6723)のように1Q決算が減収減益で急落する銘柄も出ている。だが、それ以外の健全な銘柄にとっては「システマティックリスク」である。要するに市場全体の下落に引きずられて株価が大きく下がっている。日経平均は7月11日の史上最高値4万2224円に対して7月26日は3万7667円。実に4557円安、10.8%もの下落だ。そうすると正しい投資行動は自ずと分かるだろう。システマティックリスクを味方につけよう。
8月8日セミナーは必聴。「勝者のポートフォリオ」が優位な理由を解説
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。次回のWebセミナーは8月8日(木)20時より開催。テーマは『半導体株は予想通り急落、「勝者のポートフォリオ」はますます優位に』。7月のWebセミナーでは「来たるべき金融相場でどう戦うか?」について大事なお話をたくさんした。8月も必聴の内容である。できるだけ多くの皆さまにご参加いただきたい。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。
そして、スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続き、太田流『ポートフォリオ実践』がスタートした。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須で、個人投資家にそれを身に付けてもらうことを目的としている。また、太田流『新NISA活用法』もすでに完結した。700名近くの会員はすでにバッチリ新NISAに取り組んでおり大きな成果を出している。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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