・S&P500が最高値、日銀決定会合も無難消化で日経平均は3万7000円回復
・金利や為替に敏感なセクターの会合後の株価反応を点検
・ホットなテーマは10倍株を出した「低温物流」!
【1】今日の株式相場早わかり!
欧米株の最高値で3万7000円回復
日経平均株価は3日続伸! 19日の米国市場で主要株価指数はそろって大幅に反発。連邦準備理事会(FRB)の予防的な大幅利下げが経済のソフトランディング(軟着陸)を達成するとの楽観的な見方から、リスクオンのムードが広がり、大型ハイテク株を中心に幅広い銘柄に買いが入った。NYダウが最高値を更新したほか、多くの機関投資家が運用指標とするS&P500指数も2カ月ぶりに最高値を更新。欧州市場ではドイツのDAX指数も最高値を更新した。欧米株の上昇を受けて日経平均株価も550円高からスタート。一方、その後は高値圏でのもみ合いが続いた。日銀の金融政策決定会合では予想通り政策の現状維持が決定され、相場への影響は限られた。
フィラデルフィア半導体株(SOX)指数が4%超上昇したことを受け、東京エレクトロンなど半導体株が大きく上昇。日米の長期金利が上昇し、三菱UFJフィナンシャル・グループなどの銀行株も買われた。来週は週末に国内で自民党総裁選の投開票、米国では8月の個人消費支出(PCE)と注目イベントが控える。
【日経平均】37723.91円↑↑(+568.58円)
【グロース250】666.08↑(+4.02)
【NYダウ】42025.19ドル↑↑(+522.09ドル、19日)
【ナスダック】18013.981↑↑(+440.680、19日)
■日経平均株価チャート/日足・6カ月
【2】今日の注目株!
日銀会合後の関連株の動きから投資家心理を推察
日銀は金融政策決定会合で政策の現状維持を決定。一方、国内経済は「潜在成長率を上回る成長」としたほか、個人消費は「緩やかな増加基調」として従来の「底堅く推移」から判断を引き上げた。また、予想物価上昇率は「緩やかに上昇」と判断。植田総裁は「経済・物価が見通しに沿って推移すれば利上げを進める姿勢に変わりはない」との見解を示している。追加利上げ観測がくすぶる中、金利・為替に敏感なセクターの株価反応から投資家心理を推察してみよう。
取引終盤に失速したが、会合直後は銀行株・保険株が上げ幅を広げた。日銀の声明文が追加利上げに前向きな印象を与えたことが影響したようにみえる。また、午前に発表された8月の全国消費者物価指数(生鮮食品を除くコアCPI)は前年同月比+2.8%と日銀の目標の+2%を29カ月連続で上回った。追加利上げに向けた環境が整ってきているように見受けられ、目先は関連株の底堅い動きが続きそうか。
長期金利が上昇し為替は一時1ドル=141円台後半まで円高に振れたが、16日に付けた139円台からは距離があり、自動車株の動きは概ね横ばいにとどまった。ただ、前日には143.50円台にあったことを踏まえると、円高に振れていることは間違いない。今後の経済データ次第では、米国で再び大幅利下げ観測が高まる可能性もあり、自動車株の上値は当面重いとみておくのが無難だろう。
不動産株はやや軟化する動きがみられた。一方、追加利上げ観測は金利負担の増加として懸念されがちだが、利上げ背景がインフレであれば、賃料上昇などプラスの側面もある。国内の政策金利はせいぜい0.75%~1.00%までしか引き上げられないと思われ、低金利が終わるわけでもない。業績も好調のため、短期弱含みでも長期的には見直し余地がありそうだ。
■三菱UFJフィナンシャル・グループ株価チャート/日足・6カ月
【3】金曜連載「ザイアナリスト小林大純『ホットなテーマ!』」
冷凍・冷蔵倉庫など「低温物流」、10倍株も輩出!
三井不動産などの冷凍・冷蔵倉庫への大型投資が報じられ、低温物流の需要拡大への期待が改めて高まっているようだ。報道によれば、三井不動産は2030年までに冷凍・冷蔵倉庫へ1000億円を投じ、物流施設大手の日本GLPも2000億円超の投資を見込んでいるという。
8月29日号の注目株コーナーでも触れられている通り、低価格品からこだわり料理まで幅広く取りそろえた冷凍食品が需要を伸ばしている。インフレ下での節約志向の高まり、共働きの増加などによる「タイパ(タイムパフォーマンス、時間対効果)」重視の風潮が追い風となっているようだ。また、トラック運転手の労働規制強化(いわゆる「2024年問題」)などもあり、冷凍食品を保管する冷凍・冷蔵倉庫の必要性が一段と高まっている。
三井不動産だけでなく、大和ハウス工業も冷凍・冷蔵物流施設の開発を推進。また、ニチレイやマルハニチロといった食品大手の物流子会社は冷蔵倉庫の保管能力で国内上位であり、グループ外の顧客も多い。物流会社では、低温食品に強いC&Fロジホールディングスをめぐり、SGホールディングスとAZ-COM丸和ホールディングスが争奪戦を繰り広げたのが記憶に新しい。各社の低温物流への意気込みがうかがえる。
2018年に上場した不動産開発の霞ヶ関キャピタルは、自然冷媒を用いた冷凍・冷蔵倉庫を軸に業績が急拡大。上場時の初値は1560円(株式分割考慮)だったが、今年5月に付けた上場来高値(取引時間中)は1万9620円だ。低温物流は「テンバガー(10倍株)」をも輩出する有望分野と言えそうだ。
小林大純
ダイヤモンド・ザイ アナリスト
早稲田大学法学部卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科(現経営管理研究科)修了(MBA)。金融情報サービス会社などを経て現職。日本株アナリストとして各種メディアで活動中。
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