自民党の議席減が濃厚の衆院選。株式市場に追い風が吹かない可能性も
首相就任から戦後最短の8日後に衆院解散へ―。
衆議院は10月9日に解散された。予算委員会を開かぬままの解散。野党からの追及を意図的に避けた解散。これをもって第214回臨時国会は閉幕した。10月15日に公示、27日に投開票の衆院選挙戦に突入したわけだが、解散から18日後の投開票は戦後2番目の短期決戦である。石破茂政権誕生後は何事も異例づくしの展開だ。衆院選は2021年10月以来3年ぶりであり小選挙区定数「10増10減」という新しい区割りで初めて実施される選挙となる。小選挙区289議席、比例代表176議席の合計465議席を与野党で争う。
前回のコラム『ちゃぶ台返しの石破政権に翻弄されるマーケット』で、石破氏の自民党での立ち位置が「党内野党」であったと述べた。自民党総裁そして首相就任後は従来の自らの言動や立場を翻すことばかりが目立ちマーケットも右往左往。今後も不規則発言が続く可能性があり、投資家にとっては非常にやりにくい状況が続きそうだ。選挙は株式市場に追い風となるのが通例だが、今回の衆院選では自民党が議席数をかなり減らすことが確実視されており、追い風が吹かない可能性もある。金融市場はしばらく不透明で投機色の強い動きになることを覚悟しておく必要がある。
石破政権には海外投資家も戸惑い。ただ、相場の趨勢を決める米国に光明
とにかく、自民党総裁選後の初取引日における日経平均株価の下落率は4.8%(1910円安)と堂々のトップだ。通常は新総裁が決まると「ご祝儀相場」と言って、それを歓迎するように株式市場は上昇するが、今回は「逆・ご祝儀相場」となった。「これが株式市場での石破新総裁への評価だ。嫌な予感がした」と私は述べたが、海外投資家も石破政権には戸惑っているようだ。「健全財政を唱えつつ、お金のかかる地方創生を重視」「デフレ脱却を掲げながら、アベノミクスを否定」では無理もない。「日本創生解散」の行く末は何処へ?
ただ、私たちは投資家である。政治評論家ではない。どんな政情になろうともマーケットで戦い、成果を上げていかねばならない。日本株市場にとって最も大事な要素は日本の政治ではなく、日銀の金融政策でもない。米国の金融政策、すなわち米連邦準備理事会(FRB)の動きが最も重要である。その米国の情勢がポジティブな方向に変化しつつある。
米国は景気後退のシグナル「逆イールド」を解消。アノマリー通りに?
まず大事な点を指摘すると「逆イールド」の解消だ。9月4日の米国債券市場で2年債利回りと10年債利回りがともに3.75%となり、イールドギャップが0.0%となった。これにより2022年7月以降から一貫して続いてきた「逆イールド」が解消した。皆さまもご存知の通り、逆イールド発生とその解消は「景気後退のシグナル」とされる。過去の局面を見ると逆イールドが解消されると景気後退がその後実際に発生している。2000年代初頭のITバブル崩壊やリーマン・ショックの前にもこの現象は出現していた。直近では米中貿易摩擦が激化した2019年に発生し、その後の新型コロナ感染拡大で世界経済が大幅なマイナス成長に陥った。株式市場のアノマリー、すなわち経験則となっている現象である。
「景気減速は株式市場にマイナスではありませんか?」という質問を度々受ける。世間の常識では「景気が悪くなって企業業績が悪化すれば株安の要因」という捉え方になると思うが、「世間の常識は株式市場の非常識」。景気後退するからこそ利下げするのであって、金融緩和によって株式市場は活性化される。「不況の株高」という言葉は、まさにこの現象を指している。とは言うものの、あまりにも不況色が強くなると企業収益が低下してバリュエーションが上昇し、株式市場にとって好ましいことではない。「ほどほど」の景気減速が株高には好ましいシナリオである。では、最近の米国の景気動向はどうだろうか?
米国景気は堅調。ソフトランディングどころかノーランディングの可能性
10月4日に発表された9月の雇用統計は、非農業部門の就業者数が前月比25.4万人増と予想の15万人増を大幅に上回り、失業率は4.1%と前月の4.2%から改善。加えて、8月分のデータも上方修正され、雇用は「非常に強い」状況となっている。底堅い雇用情勢が続いている要因として、女性の積極的な労働参加が挙げられる。「プライムエージ(働き盛り世代)」と呼ばれる25~54歳の女性の労働参加率は8月が78.4%に達し、9月も78.1%と高水準を維持。2023年春に2000年の記録77.3%を四半世紀ぶりに塗り替え過去最高水準を更新している。一方、8月の企業の求人件数は804万件とコロナ禍前のピークを超える水準になっている。
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において従前の金融引き締め政策が転換され、政策金利が通常の2倍の0.5%引き下げられた。パウエル議長は「大幅利下げは景気後退の可能性を小さくする予防的措置」と説明した。米国の来年の失業率が3月時点で4.1%、6月時点で4.2%、そして9月時点で4.4%とFOMCの回を重ねるごとに上方修正されており、景気減速を事前に食い止めるとの説明は「良い利下げ」と受け止められた。ところが、9月の雇用統計を見る限りFRBの予想ほど雇用情勢は悪くなっていない。これを受け市場では11月のFOMCでの大幅利下げ観測が後退している。4.1%の失業率はコロナ禍前の2018年2月と同水準である。
NYダウ、S&P500とも最高値更新。米株に連れ高で、日本株も高値更新か
9月のFOMC後のパウエル議長は記者会見で「経済のソフトランディング(軟着陸)の可能性が高まった」との自信を示したが、マーケットではソフトランディングどころかノーランディング(無着陸)になるのではないか、との見方が出てきている。ノーランディングとは文字通り「景気減速がない」というシナリオである。
9月の0.5%利下げの前提であったはずの労働市場の減速感を打ち消すような強い指標を受け、金融市場が織り込む利下げペースは大幅に鈍化し、米長期金利は2カ月ぶりの4%台に乗せた。株式市場はポジティブに捉えてNYダウ、S&P500ともに過去最高値を更新。中東情勢という地政学リスクも織り込みつつの更新だ。11月5日の大統領選挙が当面の材料となるが、ハリス、トランプのいずれの候補が当選するにしても金融相場は始まった。日本の場合、石破内閣の解散後の政局が読めないものの、日本株も7月の高値4万2224円を超えていくことが期待される。
11月14日WEBセミナーは必聴。年末&2025年の相場を占う重要回に
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。10月3日(木)開催のセミナーは過去最高の324名の参加者となった。『金融相場初動で石破ショック、今後のマーケットはどうなる?』というテーマで2時間45分のロングランセミナーだった。次回は11月14日(木)20時より開催する。衆議院選挙、米大統領選挙、そして11月FOMCの結果が出た後での開催だ。年内はおろか、2025年のマーケットも占う非常に重要なセミナーになるだろう。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。
スペシャル講義では『ポートフォリオ理論』に続き、太田流『ポートフォリオ実践』がスタートした。資産運用においてポートフォリオ運用のノウハウを知っておくことは必須であり、個人投資家に身に付けてもらうことを目的としている。最近はシステマティックリスク(株式市場全体のリスク)について講義しており、「バブルの定義」や「ヘッジファンドの実態」など貴重なテーマを取り上げている。資産運用を真剣にお考えの皆さま、「勝者のポートフォリオ」で一緒に大きく飛躍しましょう。ぜひ、ご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。
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