株価の変動に悶々としている個人投資家が知っておくべきことは?
「どうして日経平均株価はたった30分間で500円も下がるの? ひょっとしてバブル崩壊?」
「なぜ持ち株の決算は上方修正したのに株価は急落するんだ? 胃が痛くてつらい」
「毎日株価は上がったり下がったり。正直どうしていいか分からない…」
こうした思いを抱いてモンモンとしている個人投資家が多い。とりわけ、ファンダメンタルズ重視で優良銘柄を中長期に保有している「スマート投資家」に多い悩みだと思う。今回はそうした疑問にお答えし、少しでも安心していただこうという思いから「スマート投資家が知るべき日本の株式市場の実態」と題してお話したいと思う。
株式市場は、自分と異なる様々な思惑の投資家が入り乱れて取引している
まず、知っておくべきことは株式市場において、あなたとは異なる様々な思惑の投資家たちが入り乱れて取引していることである。東京市場における日々の投資家別売買動向の内訳を見ると、外国人投資家が70%、個人投資家が23%、国内機関投資家が5%、事業法人が2%だ。さらに詳しく各々の内訳を見ると、外国人投資家のうちヘッジファンドが7割(残りが年金基金、投資信託、生損保、銀行など)、個人投資家のうち信用取引が7割(残りが現物株取引)を占める。ヘッジファンドと信用取引はもちろん短期投資家だ。
すなわち、東京市場の65%の売買が値幅取りを行う投機目的なのだ。マーケット環境や値動きで勝負しており、ファンダメンタルズを見ていない投資家と言えよう。一方、事業法人の2%(主に自社株買い)を除く33%がファンダメンタルズ重視のスマート投資家であり、中長期という時間を味方につけて果実を得る投資スタイルだ。これを見て明らかなように、日々のマーケットは短期志向の投資家によって動いており、私が「マーケットノイズ」と申し上げる現象を生み出している。
買いポジション解消と売りポジション構築を一斉に行うため下落が加速
マーケットが少しでも動けば短期投資家は即、損失回避や利益追求の行動に走る。例えば、日経平均が1日で500円下がる場合、ヘッジファンドは「買いポジション解消」や「売りポジション構築」を行う。信用取引の個人投資家も同様の行動に出る。「買いポジション解消」と「売りポジション構築」という行動が取られることで株は2重に売られて、株価の一段の下落要因を作り出す。売買を行うキッカケは為替や金利の変動、経済ニュース、市場の噂、様々な思惑など多岐にわたるが、企業のファンダメンタルズに関係しないことが大半である。
ところで、よく聞く「ヘッジファンド」という言葉。皆さんはどれだけその実態をご存知だろうか? 実は、日本の個人投資家はほとんどその実態について知らないのが現状だと思う。ヘッジファンドの「ヘッジ(hedge)」は「回避」の意味であり、価格変動リスクを避けるために信用取引や先物・オプション取引なども積極的に活用するファンドのことだ。マーケットが良くても悪くても絶対的収益(プラスリターン)を出すことが使命だ。一般的なアクティブファンドは相場が上昇した時にのみ利益を上げることができる。その意味において、ベンチマークに対する相対的収益を追求している。決定的に異なる点だ。
ヘッジファンドの運用規模は667兆円。元タワー投資顧問の清原氏が有名
そのため、ヘッジファンドの運用は成果主義的な報酬体系となっており、投資で得た利益に対して20%の成功報酬が基本でマイナスなら報酬なしだ。ヘッジファンドが商売する相手は機関投資家、富裕層に限定されておりファンドの募集は私募形式である。そして、運営形態はリミテッドパートナーシップ (有限責任事業組合)。すなわち法的規制を受けず、投資家保護規定も適用されていない。運用を担当するファンドマネジャーはゼネラルパートナーとして自己資金を拠出するのが一般的だ。要するに自分でもお金を持ち出して「責任を持って働いている」姿勢を見せることで、顧客とファンドマネジャーの利益は完全に一致する。
2023年におけるヘッジファンドの運用規模は4.6兆ドル(667兆円)。世界の運用市場全体(118兆ドル、1.71京円)の約4%のシェアであり、ヘッジファンドの運用会社の分布は米国69%、ヨーロッパ20%、その他11%となっている。ヘッジファンドの大手は米国企業ばかりでシタデル、DEショー、ミレニアム、ブリッジウォーター、エリオット、ソロスなどがある。特にエリオットはモノ言う株主、すなわちアクティビストとして有名で日本の上場企業にも多くの投資を行っている。ちなみに日本は規制が厳しく、小規模な会社しか存在しないが、そうした中でも著名なのが元タワー投資顧問の清原達郎氏だ。2004年の長者番付で日本一(納税額36.9億円)となった。年収換算で100億円。サラリーマンで初のトップとなり「100億円部長」とメディアでもてはやされた。清原氏の個人資産は800億円超という破格の富裕層であり、2024年3月に発売された著書『わが投資術』(講談社)は大きな話題を呼んだ。
東京市場で跋扈するヘッジファンドの投資戦略がグローバル・マクロとCTA
ヘッジファンドには主に8つの投資戦略があるが、東京市場で跳梁跋扈しているのが先物・オプションを積極的に活用するグローバル・マクロとCTA(Commodity Trading Advisor)である。グローバル・マクロは経済指標発表や政治情勢などを材料に投資を行い、CTAはアルゴリズムによるトレンドフォローを自動売買で行う。いわゆる先物主導で現物市場に大きな影響を与えている投資家たちだ。個別銘柄を対象とした投資戦略ではロング・ショートとイベント・ドリブンがある。ロング・ショートは個別銘柄のロング(買い)とショート(売り)を組み合わせる手法で、ロングで儲けてショートでも儲けるダブル収益を狙う。イベント・ドリブンは上方修正・下方修正、M&A、MBO、経営再建などのイベントによる株価変動で収益を狙う。「モノ言う株主」として知られるアクティビストも含まれる。
毎日の株式市場を語る上で、彼らの行動が理解できていないとマーケットは語れない時代になった。今後はこうした視点も交えてマーケット分析をお伝えしていきたい。
3月6日Webセミナー開催。モタモタする日本株の勝機について徹底解説!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。毎週のメルマガ配信による運用の指南だけではなく、2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。
次回のWebセミナーは3月6日(木)20時より開催する。テーマは『モタモタする日本株にこそ勝機あり、ボックス圏の動きはチャンス満載』を予定。2024年9月に米連邦準備理事会(FRB)が4年半ぶりの利下げを行ったことで金融相場に入った。金融相場入り直後は急騰を演じたものの、10月以降の日経平均は3万8000円~4万円の完全なるボックス圏で推移しており、金融相場の高揚感は感じられない。だが、そうした中でも「勝者のポートフォリオ」も最高値更新中である。どういう点に着目すべきかについて投資戦略や個別銘柄の話をしたい。会員限定だが10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。セミナー当日3月6日(木)14時までのお申込みが可能だ。「ザイ投資戦略メルマガ 勝者のポートフォリオ」で検索してお申し込み下さい。毎回300名を超えるビッグイベント。ぜひ一度、お気軽にご参加下さい。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。
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