トランプ氏の大統領就任後から3日間でNYダウは1075ドル高
2025年1月20日に共和党のドナルド・トランプ氏が米国第47代大統領に就任した。78歳7カ月という年齢は史上最高齢である。30分間の就任演説では米国民の利益を最優先する「米国第一」を掲げ、「今日からすべてが変わる。この瞬間から米国の衰退は終わる」「黄金の時代が今始まる」と力強く宣言した。
トランプ氏は行動力のある人で、自分の言ったことに責任を持ち、有言実行の人だ。その内容はともあれ、ビジネスで大きく成功した彼の振る舞いは爽快である。日本のリーダーもこうあって欲しいと思うばかりだ。上下院ともに共和党が過半数を握るトリプルレッドとなり、閣僚たちも米国ファーストを重視するメンバーが揃った。「トランプ2.0」の政権運営は極めてスピード感を伴ったものになるだろう。
就任初日に大統領令に続々署名。その数は26本と前政権9本と比べて圧倒
それを象徴するのが就任初日早々にトランプ氏が大統領令に次々と署名したことである。大統領令とは大統領が出す行政命令であり、署名された大統領令は連邦政府や軍に対して法的拘束力を持った形での指示となる。これによって大統領は即、新しい政策の方針を示すことができる。歴代大統領たちは就任後すぐに大統領令を出すことが慣例となっており、政権交代の効果を全米に知らしめる狙いがある。
トランプ大統領が就任初日に署名した大統領令の本数は26本。バイデン前政権の9本や第一次トランプ政権の1本と比べて圧倒的に多い。バイデン前政権が実施した78件の大統領令をすべて撤回する命令も出した。やることが徹底している。
署名した26本の大統領令には「パリ協定」やWHOの離脱も含まれる
もちろん、大統領令がすべて思い通りに実行されるかどうかは別問題だ。仮に憲法や法律に反すると判断された場合は無効となる。トランプ氏が署名した1本に「出生地主義制度」の修正がある。米国で生まれた子供には自動的に米国籍を与える現状制度を改正しようというものだ。父親が米国市民権や永住権を保持しておらず、母親が不法滞在や一時滞在の場合、子供が米国で生まれても米国籍を与えないなど移民政策を是正するのが狙いだ。だが、米国の20州におよぶ司法長官たちがこの大統領令が違憲だとして連邦地裁に差し止めを求めて一斉に提訴した。この大統領令は却下される可能性が高い。
トランプ氏の大統領令は多岐に及ぶが、気候変動対策の国際的枠組みである「パリ協定」や世界保健機関(WHO)からの離脱を命じている。ご存知のように、第一次トランプ政権で米国はパリ協定から離脱したが、バイデン前大統領は就任初日に復帰を指示した経緯がある。今回再び離脱することになるだろう。WHOからの離脱も早期に実行されると思われる。米国はWHOの最大拠出国であるにもかかわらず、運営実態は実質CHO(中国保健機関)のようであることは明らかである。「参加する意味がない」との主張はもっともである。
一丁目一番地の関税引上げは慎重。経済取引を有利に進めるため活用か?
世界各国にとって一番気がかりなのは関税に関する大統領令だ。自らを「タリフマン(関税男)」と称するトランプ大統領が米国第一主義の御旗として掲げているのが関税引上げである。ところが、その第一歩はかなり穏当なものだった。大統領令に関税の強化が含まれず、「メキシコやカナダを中心に不公正な貿易慣行がないか調査を命じる」との大統領令にとどめた。
トランプ氏の大統領選挙における公約の目玉は「メキシコ・カナダに25%の関税、中国には追加で10%の関税」だった。どうしてメキシコ、カナダ、中国を名指しで脅しているのかは明白だ。これら3つの国が米国の輸入のトップ3だからである。内訳はメキシコが15%、カナダが14%、中国が14%であり、3カ国で全体の43%を占める。「麻薬が米国に流れる元凶」というのは表向きの理由であり、本音は大きな比率を占めるこれらの国々から手を付けようということだ。だが、こうした具体的な数値目標を明言していたにもかかわらず、関税の即時発動は見送られた。しかも「不公正な貿易慣行がないか調査を命じる」というのは慎重な姿勢である。要するに、トランプ大統領の思惑は「関税」を武器に相手国と本当の意味での経済的ディール(取引)を行いたいということだ。一方的に関税の発動を行ってしまえば、ディールをすることはできず、高関税が米国民の負担にストレートに繋がってしまって自国民にデメリットをもたらすことをトランプ氏は承知している。
ロシアに対しても「関税口撃」開始。根底に流れるビジネスマンの血
だから「日本を含めて全輸入品に一律10%の関税」との公約もトランプ流ディールである。ちなみに米国の輸入の4位はドイツの5%、5位が日本の4%台であり、トップ3の国々からはガクンと比率が下がる。メキシコ、カナダ、中国と比較すれば米国がデメリットを受ける度合いは小さく、本気で関税引き上げのみをターゲットにしているとは考えられない。
ロシアに対しても「関税口撃」を始めている。トランプ氏は1月22日にロシアによるウクライナ侵略について「今すぐ決着をつけ、このばかげた戦争を止めろ。悪化する一方だ」と停戦を要求した。ロシアのプーチン大統領に対して「すぐディールしないなら、高水準の関税、制裁を課す以外に選択肢はない」と警告した。トランプ氏が関税にこだわるには理由がある。それは「貿易があれば戦争のリスクを減らせる」「私はビジネスマンだ。貿易を信じている」との考えがあるからだ。
我々日本人からすれば、米国によるグリーンランド購入や、「メキシコ湾をアメリカ湾に名称を変更する」というのはトンデモ発言に映るが、とにかくやりたいことはすべて口に出してチャレンジするのがトランプ大統領のやり方だ。それを知っていれば、トランプ氏のトンデモ発言を冷静に受け止めることができる。
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