アメリカでは20代・30代の若者から50代の中高年までFIRE達成例が続々と
アメリカでは近年、20代・30代の若者から50代の中高年まで、FIRE(経済的自立と早期リタイア)を成し遂げた人々の例が報告されています。
たとえば、「Purple」と名乗るある女性ブロガーは、2020年に30歳で約50万ドルの資産を築き、早期退職を実現しました。彼女は早期リタイア後の生活に満足しており、「何もしないでリラックスすることが得意」と冗談めかして語っています。
一方、シングルマザーのスーザン・チェザリーニ氏は複数の仕事を掛け持ちしつつFIREの原則を実践し、2017年に50歳で引退を果たしました。
このように、若年層から中高年まで、節約と投資を徹底すれば、年代を問わず早期リタイアを実現できることが示されているのです。
FIREを達成してから、社会とのつながりが乏しいことを痛感する人も…
しかし、早期リタイア後、思わぬ課題に直面する人も多いです。
先ほど紹介したチェザリーニ氏の場合、パンデミック中に「仕事が恋しくなり、目的を見失った」ことに気づき、結局は猫の美容ビジネスを再開して生きがいを取り戻しました。
実際、FIRE達成者の中には退屈や孤独感に悩む人もいて、早期退職は「思ったほどすばらしいものではなかった」と感じ、再び働き始める例も珍しくありません。
ある30代でリタイアした男性は、退職後に社会とのつながりが乏しいことを痛感し、「途方に暮れている」と打ち明けています。仕事による日々の刺激や役割が失われることへの戸惑いは、FIREした多くの人に共通する課題です。
FIRE達成のために収入の70%を貯蓄に回す「超節約」を実践。それが幸福度を下げていた
FIRE達成の過程やFIRE達成直後に、当初想定していなかった事態に直面することもあります。
FIRE運動の先駆者であるアメリカ人ブロガーの1人は、「自由を得た生活はおおむね理想通りだったが、実際に早期退職してみて初めてわかったマイナス面も多かった」と述懐しています。
たとえば、34歳で早期リタイアしたブランドン・ガンチ氏(通称:マッド・ファインティスト(Mad Fientist))は、収入の70%を貯蓄に回す極端な節約生活によって目標を達成したものの、その「超節約」が夫婦の幸福度を下げていたとのちに振り返っています。

このように、心の充足感や生活の質など、金銭面以外に思わぬ影響があることがFIRE達成後にわかってくるケースもあるのです。
FIREを成功させるために必要なことは?
一方で、早期リタイアを成功させるために彼らが実践した有効な戦略や習慣も明らかになっています。
共通しているのは、高収入化と倹約による徹底的な貯蓄・投資です。
FIRE志向者は収入の50~70%以上を貯蓄・運用に回すことを目標としており、実際に34歳でリタイアを果たしたガンチ氏も在職中は収入の約7割を蓄財に充てていました。
また、支出については、支出を劇的に切り詰める一方で、その切り詰める過程を「楽しむことを忘れない」ことが重要だと指摘されています。
そして、副業や転職によって収入を最大化し、そこで得た資金をインデックスファンドや不動産などに堅実に投資して資産形成を加速させた例も多いです。
さらに、最適な健康保険を選んだり、税負担を最小化するような制度面に関する取り組みも、早期リタイア計画を遂行する上で欠かせないポイントになります。
FIREを目指す上で陥りがちな失敗とは?
しかし、FIREを目指す上で陥りがちな失敗や見落としも数多く指摘されています。
まず、多くの人は必要資金を甘く見積もりがちです。FIREしてから「もっと貯金しておくべきだった」と後悔するケースが後を絶ちません。
特に、若いうちに退職した人の中には金銭面で早まった決断を悔やむ声も多く、老後までの医療費や住宅費の増大を十分に織り込めていない例が見られます。
また、公的医療保険や社会保障の不足を補う計画を立てていなかったために、思わぬ出費に苦しむ例も報告されています。
さらに、家族や人間関係の面でも見落としがちな問題があります。FIRE実現に熱中するあまり、配偶者との時間や友人関係を犠牲にしてしまい、退職後になって深刻なツケを払わされることもあるのです。
FIREを目指す上で有益な3つのアドバイス
このようなことを教訓として、今ではFIREを目指す人々へ数多くのアドバイスがなされています。
第一に、資金計画は保守的に見積もり、余裕を持って目標額を設定することが推奨されています。
次に、退職のタイミングを焦らない姿勢も大切です。実際に若くして引退した人の中には、もう1年働いていれば良かったと振り返る声もあります。準備が整うまで無理に退職を急ぐ必要はありません。
さらに、退職後の生活設計――趣味やボランティア、コミュニティ参加など――を事前に考えておくことがお勧めです。お金ばかりにとらわれず、家族や健康、自分のやりたいことを大切にする姿勢が、長い目で見て「後悔しないFIRE」につながることでしょう。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株の分析が毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。