2025年3月26日(火)、米国・シアトルからザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている元フィデリティ投信トップアナリストのポール・サイさんが、ストックボイス社が手掛ける経済・マーケット番組「WORLD MARKETZ」(TOKYO MX 月~金 22時~23時)に生出演した。

今回の放送では、トランプ(大統領、以下略)は関税が貿易にとってマイナスだとわかっていながら、国内に製造業を持ち帰るために関税をかけていると教えてくれたポールさん。関税や地政学と関係ないトレンドがAIやテクノロジーで、アメリカの政治不安で株価が下がっているときが、長期のトレンドに乗るチャンスだそうなので、さっそくチェックしていこう。
1930年のアメリカの関税が巡り巡って戦争につながった。関税によって、海外から製造業を持ち帰りたいのがトランプの本音
番組は、アシスタントの新宮志保さんがポールさんに、今月開催されたFOMC後のマーケットの動きをどう見ているのか聞くところから始まった。
マーケットは、関税に対しての懸念が少し後退したことによって回復してきたとポールさん。チャート的にトレンドのサポートに到達したことも、反転の要因となったようだ。

すると、番組MCの渡部一実さんが「トランプ政権が関税を振り回したり撤回したりするから、訳が分からなくなって、マーケットはいったん下げたという見方でいいですか?」と質問。ポールさんはこれに同意した。
渡部さんは続けて、トランプ政権は関税をかけることが国内産業を守り、強化することにつながると言っているけれど、関税はアメリカにとって本当にいいことなのか、ポールさんの意見を仰いだ。
ポールさんは「関税は貿易にとってマイナスで、非効率になるため、アメリカにとっても海外にとっても良くない」とコメント。関税はアメリカの貿易赤字を解決することを目的としていて、短期的に少し緩和する可能性はあるものの、貿易赤字の根本的な理由はアメリカの消費と投資が貯蓄を上回っていることにあるため、関税では貿易赤字の解決につながらないようだ。
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ここで渡部さんが、ポールさんがザイ・オンライン連載コラム「成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト) 」で、「1930年のアメリカの関税が巡り巡って戦争につながった」と書いていたことを紹介した。
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これは「スムート・ホーリー関税法(1930年関税法)のことです」とポールさんは説明を始めた。この関税によって世界貿易が縮小し、すでに賠償金で窮地だったドイツ経済がさらに悪化して、国民の不満が高まり、ナチスへの支持が拡大して隣国への領土拡張につながったそう。日本も同様の理由から、中国や韓国、その他アジアの国を侵略したとのことだった。
ポールさんの説明を聞いた渡部さんは「トランプ政権は関税の負の面を分かってやっているのか、それとも関税はブラフで振り回しているのか、今のところのニュアンスをポールさんはどう見ていますか?」と質問した。
「トランプは関税が経済を少し打撃すると分かった上でやっていると思います」とポールさん。その証拠に、トランプは「関税で不景気になるかもしれないけど我慢してください」と発言しており、関税によって、海外から製造業を持ち帰りたいというのがトランプの本音のようだ。
そして、ポールさんはトランプが海外から製造業を持ち帰りたい理由を3つ挙げた。
1つ目は、トランプの支持者は製造業の地域の人が多く、関税は分かりやすいメッセージとして政治的にアピールしやすいから。
2つ目は、AIの進化でアメリカから知的産業の仕事が少なくなる分、AIに直接影響されにくい製造業の仕事量を増やしたいから。
3つ目は、中国を敵とみなした場合、中国が製造したものを買えないほか、アメリカには造船業もないため、国家安全保障や軍事力を強化したいからとのことだった。
AIやテクノロジーの進化は、関税や地政学と関係しないトレンド! アメリカの政治不安で株安のときが、長期のトレンドに乗るチャンス
続いては、トランプ政権の関税や地政学リスクを、投資家としてどう受け止めたらよいのかという話題に。
ポールさんはまず「トランプが短期的に何をして、マーケットがどういう反応をするかで取引するのは極めて難しい」とコメント。そのうえでどうすればいいかというと、短期的なノイズに影響されない目線、つまり長期目線で投資すればいいようだ。
先ほど触れたスムート・ホーリー関税法の話にしても、長期な歴史やトレンドを振り返ると、関税が最終的に戦争につながって、国土が全部守られたのはアメリカだったため、今回の関税も前回と同じようになるとすれば、一番安全なのはアメリカだという大きな結論が得られるそう。
また、関税や地政学と関係しないトレンドもいくつか存在していて、1つ分かりやすいのがAIやテクノロジーの進化だそう。
AI関連のバリュエーションを見ると、メタやマイクロソフト、エヌビディアなどのPERは30倍以下で、テスラが100倍であることやこれからの成長を考えると、高いわけではないそう。政治的な不安やリスクで株価が下がっているときが、長期のトレンドに乗るチャンスであり、今回のマーケットの反転もそれを証明するのではとポールさんは考えている。
なお、政治といっても、日本やヨーロッパの政治が世界に与える影響は大きくない場合が多く、アメリカの政治は世界に大きく影響するため、短期的なアメリカの政治によって株が動いたときに、長期のトレンドのエントリーポイントとして利用すればよさそうとのことだった。
ここまで、3月26日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年半で140%上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。