元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。

今回の放送では、トランプの関税発動を受けた株価暴落をポールさんがどう見ているのか、そして株価が暴落したときの対処法を2つ教えてくれたので、さっそくチェックしていこう。
関税が交渉の手段でなく、実際に発動したことに過剰反応して、株価は大きく下落した
番組は、ポールさんが現在、韓国の釜山にいることを番組MCの渡部一実さんが紹介し、大統領の罷免で政情が混乱する韓国はどのような様子なのか、ポールさんに質問するところから始まった。
ポールさんは韓国の政治に詳しくないと前置きしつつ、「昨日はソウルにいたけれど、観光地に警察のバスが止まっていたり、警備がいたり、デモをしている人が少しいて警戒している感じがした」とコメント。ただ、特に違和感があるわけでもなく、平和的な様子だったようだ。
続いて、トランプ関税を受けて日米欧の株価が大きく下がった話題に。
トランプ関税は交渉の手段で、実際には発動しないとマーケットは思い込んだけれど、実際に発動したのが予想外で、株価が大きく下がったとポールさん。
(※トランプ政権は4月9日(水)、同日に発動したばかりの相互関税を一部の国・地域を対象に90日間一時停止すると発表した)

関税引き上げの影響をポールさんも最近受けたそうで、スウェーデンからヨットの部品を購入したら、関税が上がった後にアメリカに到着して、関税がかかってしまったそう。
関税引き上げは、貿易赤字解消と世界中の関税をゼロにするための手段だとトランプは言っているけれど、ポールさんに言わせるとそこには矛盾があるようだ。
例えば、普通の個人はスーパーから物を買って、スーパーは個人から物を買わないため、個人は貿易赤字で、スーパーは貿易黒字だけれど、個人は仕事をして給料をもらっているため、個人の貿易赤字自体が悪いわけではないとのこと。
また、製造業を国内回帰させるために関税を引き上げているのに、関税をゼロにしたら、製造業が空洞化してしまう。
関税の意味がよくわからない状況にもかかわらず、実際に発動したことに過剰反応して、株価が大きく下落した面があるようだ。
株価暴落時の対処法は何もしないか、下がった銘柄を拾うか。リスクを取らないなら何もしないほうがいい
次は、株価暴落時の対処方法の話題に。
リーマンショックと今回のトランプ関税での暴落は流動性に違いがあるけれど、予期せぬ暴落にポールさんはどうやって対処してきたのか、渡部さんが質問した。
ポールさんは、暴落に対する戦略は2つ考えられるといい、1つは何もしないことだと明かした。
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何もしないというのは、下がったら売る、戻ったら買うことをせず、ただじっと我慢して乗り越えることだそう。
2つ目の戦略は下がった銘柄を拾うこと。ただ、注意すべきことがあるという。
まず、トランプのマインドを読むことはできないのに、関税撤廃に賭けて投資するのはギャンブルになるため、やめたほうがいいようだ。
そこで、長期的な視点を持つと、トランプの任期は4年であるため、4、5年我慢できるお金であれば、メタやエヌビディアなど割安になっているマグニフィセントセブンの銘柄を買うことはできるという。
また、下がった銘柄を拾うにしても、大きな動きを一気にすると大きな間違いになってしまうため、時間でリスク分散するのも大事なようだ。
あとは、ポートフォリオ内でディフェンシブに持っているコカ・コーラなどの消費関連銘柄を売って、リバウンドで恩恵を受ける銘柄に乗り換えるという手もあるそう。
もっとも、下がった銘柄を拾うのはリスクを取るやり方で、リスクを取らないのであれば、何もしないことが一番いいとのことだった。
製造業を守れなくても自由貿易がいいとトランプが気付くには、時間がかかるかも
最後は、トランプの関税に対するアメリカ国民の見方の話題に。
「トランプの関税でアメリカの物価が上がってしまうから大変だ」という感じなのかという渡部さんの問いに、ポールさんは同意した。
ポールさんの周りには、関税でiPhoneが値上がりすると思い込んで、早めに購入したほうがいいという考えを持っている人もいるそう。
また、アメリカ人の半分以上は株を保有していて、特に老人は株を多く持っているため、不安を抱えているようだ。
すると渡部さんが「トランプ政権は最初に強硬的な関税を打ち出して、各国に譲歩を迫り、いい取引ができた時点で、マイルドな路線に落とし込んでいかないと、このままの状況では中間選挙に行けないですよね?」と質問した。
ポールさんはここでも、関税をゼロにすると製造業が空洞化するという矛盾を持ち出した。
トランプは製造業をアメリカに回帰させるために、関税を簡単にゼロにするとは思えない。その一方で、関税をゼロにしないと、もともとはAIなどの最先端分野に向かうはずだった資金が製造業に向かうことになり、それはアメリカにとってマイナスで、中国にはプラスとなる。
つまり、トランプは今、孤立がいいか自由貿易がいいか方向を探っている状況で、ポールさんは製造業を守れなくても自由貿易のほうがいいと考えているけれど、トランプがそれに気づくには時間がかかるかもしれないとのことだった。
ここまで、4月8日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはザイ投資戦略メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオ(直近2年半で140%上昇)を見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。また、動画配信も予定しているので、こちらも注目だ。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。