成長する米国&世界に投資する最強のFIRE計画(プロジェクト)

トランプ政権による関税政策の影響は? 関税をかければ必ず国内産業が発展するとは限らない。第二次世界大戦への道を開いたスムート・ホーリー関税法とは?

2025年3月19日公開
ポール・サイ
facebook-share
twitter-icon
このエントリーをはてなブックマークに追加
RSS最新記事

トランプ政権による関税政策で、中国からの輸入コストが大幅に上昇

 最近、シアトルにある電動自転車の会社の社長と話す機会がありました。彼の会社は中国の工場と契約し、アメリカでオンライン販売を行っています。

 しかし、最近のトランプ政権による関税政策の影響で、中国からの輸入品には45%もの関税が課されることになり、輸入コストが大幅に上昇しました。これは企業にとって非常に大きな負担です。

ホワイトハウス公式サイトトランプ大統領がカナダ、メキシコ、中国からの輸入品に関税を課すことを伝えるファクトシート 出所:ホワイトハウス公式サイト

関税は何を目的としてかけられるのか?

 関税(tariff)とは、政府が輸入品に対して課す税金のことであり、主に以下の目的で利用されます。

(1)国内産業の保護:輸入品の価格を上げることで、国内産業の競争力を高める。

(2)税収の確保:政府の収入源となる。

(3)貿易交渉の手段:他国に対する圧力として利用される。

関税をかければ、必ず国内産業が発展するとは限らない

 しかし、関税が必ずしも国内産業の発展につながるわけではありません。

 たとえば、冒頭で紹介した電動自転車の会社の場合、関税が上がることで生産工場をアメリカ国内に戻すのではなく、むしろマレーシアへの移転を検討しています。

 なぜなら、中国にはすでに電動自転車のエコシステム(部品供給網や技術インフラ)が整っており、それを簡単に別の国へ移すことは困難だからです。マレーシアでの生産といっても、実際には中国製の部品をマレーシアで組み立てるだけであり、結局のところ、中国企業が利益を得る構造は変わりません。

関税が第二次世界大戦を引き起こした? スムート・ホーリー関税法の影響とは?

 関税の負の影響は歴史的にも証明されています。その代表例がスムート・ホーリー関税法(1930年関税法)です。

 この法律は大恐慌のまっただ中にあった1930年のアメリカで成立し、国内産業を守る目的で幅広い輸入品に高関税を課しました。具体的には、約900品目に平均40%以上の関税が適用され、輸入品の価格が大幅に上昇したのです。

 しかし、以下のとおり、この関税政策は逆効果となりました。

●貿易戦争の勃発:他国も報復関税を課し、世界貿易が急激に縮小。

●経済の悪化:アメリカの輸出が激減して、アメリカ国内の農業・製造業も打撃を受け、失業率が上昇。

●国際緊張の高まり:経済的困窮はドイツや日本などの国々の軍備拡張を促進し、第二次世界大戦への道を開いた。

 特にドイツでは、世界恐慌の影響で失業率が急激に上がり、ナチス政権の台頭を招きました。ヒトラーは経済の自立を掲げ、軍需産業の拡大に注力しました。

 一方、日本も原材料の輸入が制限される中で、中国や東南アジアへの進出を強め、結果的に戦争への道を歩むことになりました。

現代への教訓──関税政策は意図せぬ経済的混乱を招き、国際的な緊張を高める可能性がある

 このような歴史から学べることは、関税政策が意図せぬ経済的混乱を招き、国際的な緊張を高める可能性があるということです。

 現在の米中関係も同様のリスクを抱えています。

 関税で貿易が制限されても、経済のグローバル化自体が止まることはないでしょう。関税が上がることによって、企業は別の国への移転を模索し、その中で関税が新たな経済ブロックの形成や、地政学的な対立を加速させる可能性があります。

 したがって、関税は単なる経済政策ではなく、国際関係や安全保障にも深く関わる問題であり、慎重に運用すべき手段だと言えるでしょう。

 

☆ポール・サイ氏は、「米国株&世界の株に投資しよう!」というメルマガを毎週配信しています。米国株を中心としたFIREのためのポートフォリオ(2年半で2倍以上のパフォーマンス!)の提案や米国株の分析、シアトル在住の強みを生かした現地のニュースなどのレポートなどを配信しています。登録後10日以内の解約は料金が無料となりますのでぜひご登録をお願いします

 

●ポール・サイ  ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。

※メルマガ「ポール・サイの米国株&世界の株に投資しよう!」募集中! 米国株&世界の株分析毎週届き、珠玉のポートフォリオの提示も! 登録から10日以内の解約無料。


太田忠の勝者のポートフォリオはこちら!
【クレジットカード・オブ・ザ・イヤー 2023年版】2人の専門家がおすすめの「最優秀カード」が決定!2021年の最強クレジットカード(全8部門)を公開! 最短翌日!口座開設が早い証券会社は? おすすめ!ネット証券を徹底比較!おすすめネット証券のポイント付き
ZAiオンライン アクセスランキング
1カ月
1週間
24時間
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
楽天カードは年会費永年無料で、どこで使っても1%還元で超人気! 【マイルの貯まりやすさで選ぶ!高還元でマイルが貯まるおすすめクレジットカード!
ダイヤモンド・ザイ最新号のご案内
ダイヤモンド・ザイ最新号好評発売中!

大企業で1億円
NISA投信グランプリ
チャート入門

6月号4月21日発売
定価950円(税込)
◆購入はコチラ!

楽天で「ダイヤモンド・ザイ」最新号をご購入の場合はコチラ!Amazonで購入される方はこちら!

[大企業で10倍株!]
◎第1特集
ソニーやサンリオ、JALなど92銘柄
大企業で10倍株!

●日本が誇る大爆騰株!最強10倍株
●夢を買う!次世代テーマ10倍株
●現実的に狙う!手堅い実力10倍株

●若手アナリスト&編集部員が発掘!
株価10倍になるZ世代株
●株価がすべて200円未満!激安10倍株
●オリエンタルランドや東京エレクトロンは?低迷大型株を売り買い診断

◎第2特集
第3回ダイヤモンド・ザイNISA投信2025
グランプリ宣言!
ザイは毎年、個人投資家目線でNISAで買いの投信を表彰します!

●日本株総合部門
●日本中小型株部門
●米国株部門
●世界株部門
●新興国株部門
●リート部門
●フレッシャー賞
●ダメなモンはダメと言います!期待ハズレな残念投信3本を今年も発表!

◎第3特集
値上げに勝つ!インフレ時代の最強節約術77
●コメの値上がりが家計を直撃!食費のワザ
●省エネで家計を守る!光熱費のワザ

●惰性で払っている固定費を点検!生活費のワザ
●もらえる制度はフル活用!医療&教育費のワザ
●資産40億円の億り人マサニーさんの節約術

【別冊付録】
3回集中講座の第1回!
買い時・売り時がQ&Aでわかる!チャート入門
「チャートのつくりとトレンドの読み方」

◎連載リニューアル!
●プロがこの先1カ月の日本株のポイントを解説&ガチ予測!
●3カ月先を読む「日本株」と「為替」の透視図

◎いつもの連載も充実
●ZAiのザイゼンがチャレンジ!目指せ!お金名人Vol.09
●17億円トレーダー・ジュンのFX成り上がり戦略Vol.04
●10倍株を探せ!IPO株研究所2025年3月編
●おカネの本音!VOL.34 オモロー山下さん
●株入門マンガ恋する株式相場!VOL.102
●マンガどこから来てどこへ行くのか日本国
●人気毎月分配型100本の「分配金」速報データ


>>「最新号蔵出し記事」はこちら!


「ダイヤモンド・ザイ」の定期購読をされる方はコチラ!


>>【お詫びと訂正】ダイヤモンド・ザイはコチラ

【法人カード・オブ・ザ・イヤー2023】 クレジットカードの専門家が選んだ 2023年おすすめ「法人カード」を発表! 「キャッシュレス決済」おすすめ比較 太田忠の日本株「中・小型株」アナリスト&ファンドマネジャーとして活躍。「勝つ」ための日本株ポートフォリオの作り方を提案する株式メルマガ&サロン

ダイヤモンド不動産研究所のお役立ち情報

ザイFX!のお役立ち情報

ダイヤモンドZAiオンラインαのお役立ち情報