多くのエコノミストがアメリカは2026年に景気後退に陥ると予想
多くのエコノミストがアメリカは来年(2026年)、リセッション(景気後退)に陥ると予想しています。
世界経済には懸念材料が多いです。
4月22日に発表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済成長見通しでも、2025年のアメリカの成長率見通しはさらに下方修正されました。ミシガン大学の消費者信頼感指数は4月後半にやや回復したものの、依然低迷しており、その主因は貿易政策の不透明感にあります。
エコノミストたちは、消費支出、企業の設備投資、建設許可件数、輸出、労働市場といったアメリカ経済の主要分野すべてで成長率予測を引き下げました。一方、インフレ期待は高まっており、2025年のインフレ率見通しは再び上方修正されています。
アメリカはスタグフレーションになる可能性がある程度高い
米政策金利について、エコノミストは年内2回の利下げを予想する一方、市場では3~4回の利下げが織り込まれており、見通しにズレが生じています。
市場はエコノミストよりも深刻な景気後退を織り込んでおり、私はスタグフレーション(インフレと景気停滞が併存し、失業率が高い状態)になる可能性がある程度高いと見ています。
金融市場では、米国債のイールドカーブがさらに平坦化し、ゴールドマン・サックスの企業景況感指標も急落するなど、経済活動の鈍化を示す兆候が広がっています。
また、米中の貿易摩擦悪化を受けて、中国からアメリカへのコンテナ輸送量が大幅に減少し、アメリカ側でも一部輸入契約がキャンセルされるなど、貿易環境の悪化が確認されています。
アメリカ国内でも、歳入減少と財政赤字拡大への懸念が強まっており、連邦政府の利払い費用は今後さらに増加すると見込まれています。経済成長の減速と財政負担増加のダブルリスクが意識されている状況です。
米国株は世界の他地域の株に比べて劣後し、為替市場では米ドル安が進行している
このような中、最近の株式市場ではS&P500指数が6営業日連続で上昇するような場面もあるものの、年初来で見ると、米国株は世界の他地域に比べて相対的に劣後しています。
特に決算発表シーズンに入ってから、企業が好決算を発表しても株価が反応しづらい傾向が目立ち、投資家心理の慎重さがうかがえます。
為替市場では米ドル安が進行しており、特にユーロや英ポンドに対して米ドルが弱含んでいますが、新興国通貨や資源国通貨に対しては動きが限定的です。
「アメリカに悲観し、アメリカに投資しない」という結論になりがちだが、投資は往々にして衝動的な感情とは逆に動く方が成果を上げやすいもの
総じて、アメリカ経済は需要鈍化、貿易摩擦、財政制約という三重苦に直面しており、2025年にかけて不安定な局面が続く可能性が高まっています。
こうした状況下では、「アメリカに悲観し、アメリカに投資しない」という結論に陥りがちですが、投資は往々にして衝動的な感情とは逆に動く方が成果を上げやすいものです。不安を感じている個人投資家は、むしろ何もしない方が得策ですが、もし行動するのであれば、下落している市場を拾う方が良いと考えます。
年初来で上昇しているおもなアセット、下落しているおもなアセットをご紹介すると、以下のとおりです。
年初来で最も上昇しているのは、アメリカ・カナダを除く先進国株式(ETFのティッカーはEFA)、アメリカ以外の投資適格債券(投信のティッカーはRPIBX)、アメリカ以外の不動産株(ETFのティッカーはVNQI)などです。以下はこれらの日足です。



その一方、下落しているのはアメリカのテクノロジー株(ETFのティッカーはXLK)、アメリカの小型株(ETFのティッカーはIJR)、S&P500指数(ETFのティッカーはSPY)、原子力関連株(ETFのティッカーはURA)などです。以下はこれらの日足です。




先ほど述べたとおり、私はここでもし行動するのであれば、下落している市場を拾う方が良いと考えます。資産配分は逆張りの視点を持って検討するのが良いでしょう。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガを配信中。
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