市場は地政学的なニュースに毎回驚くが、その多くは大きなトレンドを変えるシグナルではなく、ノイズにすぎない
台湾海峡の緊張、中東の紛争、ロシアとウクライナの戦争、米中の貿易摩擦──投資メディアは日々、地政学リスクを伝え続けます。そして、株式市場はこれらのニュースに短期的には敏感に反応します。
しかし、長期チャートを見ると、こうした出来事の多くは「大きなトレンドを変えるシグナル」ではなく、「長期投資家には関係のないノイズ」だったことがわかるのです。
S&P500指数の長期チャート(3ヵ月足) 出所:TradingView
私がこれまでずっと、当コラムで伝えてきたのは、「地政学リスクを怖がらない」のではなく、「正しく怖がる」方法です。
すべてのリスクを等しく恐れるのは非合理的であり、逆にすべてのリスクを無視するのも危ういことです。重要なのは、投資家が「株式を保有している企業の長期的な収益力をこのリスクは変えるか否か」という問いを立てることなのです。
[参考記事]
●関税や地政学リスクと関係ないのが、AIやテクノロジーの進化! アメリカの政治不安で株安のときが、長期のトレンドに乗るチャンス!
●アメリカがイランのウラン濃縮施設を爆撃。しかし、戦争は拡大せず、外交交渉に向かう可能性が高い。一時的に売られた優良銘柄があるなら買いの好機だ
「中国経済の減速」は構造的なもの。それが米国企業に与える影響をどう判断していく?
ここで中国経済の減速について、考えてみましょう。
中国経済の減速は、単なる景気循環ではなく、構造的な問題を含んでいます。
人口動態の悪化(少子高齢化)、不動産バブルの後遺症、そして民間企業への規制強化による起業家精神の萎縮──これらは短期間で解決する問題ではありません。
この構造的減速が意味するのは、「中国依存度の高い企業のビジネスモデルが変わる可能性がある」ということです。アップルのサプライチェーン、ラグジュアリーブランドの中国での売上げ、半導体製造装置の中国向け輸出──これらは「中国リスク」として継続的に監視が必要なシグナルです。
一方、中国との関連が薄い米国内需型企業に対する中国経済減速の影響は限定的です。
以上、中国経済の減速という事象をどのように投資判断につなげていくかということについて、簡単に説明しましたが、このような考え方は、地政学リスクの分析でも役立ちます。
[参考記事]
●アップルが実質中国株だから投資できないという人はいない! 同じテック会社でも、中国株というだけで評価の矛盾が拡大しているところが、実は儲けどころ!
私が地政学リスクを分析するときに使う3段階のフレームワーク
私が地政学リスクを分析するときに使うフレームワークは次の通りです。
まず、「この出来事は米国企業の決算に直接影響するか」を問います。
影響しないと判断できたなら、株式市場が短期的にネガティブな反応を見せた時、それは「買いのチャンス」になり得ます。
影響がある場合、次に「この影響は一時的か構造的か」を問います。一時的な影響(戦争による物流停滞など)は数四半期で解消されることが多いです。
一方、構造的な影響(半導体輸出規制による売上げ喪失など)は長期に及ぶ可能性があります。
台湾有事については、「もし起きれば世界経済への影響は甚大だが、実際に起きる確率とタイミングは誰にも読めない」というのが正直な評価でしょう。
[参考記事]
●チャイナバブル崩壊で考えられる、最悪のシナリオは台湾戦争。普通のシナリオは金融緩和。ベストシナリオは中国が正しく成長して、先進国に入ること
この種の「テールリスク」(確率は低いが影響が大きいリスク)に対する答えは、過剰に怖がって株を売ることではなく、分散投資によってリスクを管理しながら長期保有を続けることです。
地政学リスクは「ノイズ」か「シグナル」か。その判断基準は「保有企業の長期的な収益力を変えるか否か」にあります。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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