AI・半導体関連が相場を牽引し、日米の主要株価指数が揃って最高値更新
株式市場はAIスーパーサイクル入り。マーケットの主役が変わる―。
前回のコラムでは『日経平均はいくらまで上昇するのか? 企業収益で見たバリュエーションから推測する』とのテーマで今後の株式市場を占った。日米の5つの主要株価指数(NYダウ、S&P500、ナスダック、日経平均、TOPIX)が揃って最高値を更新。株式市場はお祭り騒ぎの真っ只中にあり、AI・半導体関連が相場を牽引する傾向はさらに強まったことを指摘した。
マーケットは「FOMOからFEMOへ移行」との見方が広がっている。個別銘柄で見ても、半導体業界の動きを代表するSOX指数で見ても株価が大きく上昇しているにも関わらず、バリュエーションに割高感はない。米国の著名ストラテジスト、エドワード・ヤルデニ氏。現在の株式市場の姿をFEMO(Fabulous Earnings Momentum:素晴らしき収益モメンタム)と表現。ヤルデニ氏は「FOMO(Fear of Missing Out:買い遅れる恐怖)は投資家が株に殺到してPERを押し上げる現象であるのに対し、今回のラリーでは予想利益の増加が牽引してむしろPERは低下している」「FOMOとは異なる健全な相場上昇だ」と述べていることも前回コラムで紹介した。
ソフトバンクグループの時価総額がトヨタ自動車を抜きトップに躍り出る
国内市場でもマーケットはAIを中心とした「スーパーサイクル」入りとの声が出ており、それは時価総額にも如実に表れている。ソフトバンクグループ(SBG、9984)の株価が5月25日(月)に7カ月ぶりに上場来高値を更新し、翌日も急騰してわずか4日間で60%近くも上昇。オープンAIのIPO観測が伝わったのをきっかけに買いが止まらない。時価総額は一時45.0兆円とトップのトヨタ自動車(7203)の48.0兆円に迫った。SBGが運用するAIファンドのNAV(純資産総額)は60兆円を超えており株価は25%ディスカウントの状況だ。「6月中にも逆転劇が見られるかも知れない」と私は述べたが、その日は6月1日(月)にいきなりやって来た。
SBGはフランスで14兆円もの巨額資金を投じてAIデータセンターを建設すると発表。株価は14.0%も上昇して時価総額は48.7兆円。一方、不人気で4.5%安に沈んだトヨタの時価総額は45.8兆円。一気に抜き去って時価総額トップに躍り出た。トヨタは2003年12月にNTTドコモ(9437)を抜いて時価総額首位となったが22年半ぶりに陥落した。そして、三菱UFJ(8306)を抜いて時価総額3位に躍り出たキオクシア(285A)は6月3日(水)のザラバ中において、一時トヨタの時価総額を抜き2位になった。トヨタはわずか3日間のうちに首位から3位まで順位を落とすという事態に陥ったのだ。
3月最高値の三菱重工業の株価も低調。AI・半導体への乗り換えが顕著
トヨタの2027年3月期の純利益予想は前期比22%減の3兆円だが、期初予想は超保守的というのが例年の恒例行事になっている。マーケットコンセンサスの純利益は3.73兆円。上振れ額は7358億円と上場企業の中で最大だ。こうした状況にあるにもかかわらず、投資対象としては全く不人気であり年初来安値近辺でウロウロしている。「株価が上がらないから保有していても役立たない」「日経平均が連日最高値を更新しているのに自分は乗り遅れている」という理由で、「つまらない」銘柄は蚊帳の外に置かれている。もう一つの事例は三菱重工業(7011)だ。防衛関連の雄として今年の3月に5208円の最高値を付けたが、連日年初来安値を更新し続けており6月2日(火)には3415円まで下がった。実に34%もの下落率だ。売られている要因はトヨタと同じである。「つまらない銘柄は売り払って、AI・半導体関連に乗り換えよう」という動きである。
成長産業や投資テーマはその時代を反映して株価指数に影響を与えるが、NT倍率に大変な事態が起こっている。NT倍率とは、日経平均(N)を東証株価指数であるTOPIX(T)で割った数値である。4月21日(火)に15.74倍とこれまでの最高である2025年10月31日(金)の15.73倍を上回り、4月23日(木)には一時16.00倍とさらに拡大した。日経平均の算出は単純株価がベースなのに対し、TOPIXは時価総額を基準としている。日経平均の組み入れトップ10銘柄はアドバンテスト(6857)の10.0%を筆頭に7銘柄がAI・半導体関連で構成比率は全体の37.9%も占めている。それに対してTOPIXは実力ベース、平等ベースでの指数のため、従来トップだったトヨタの構成比率はせいぜい3.5%程度に過ぎず、トップ10の中のAI・半導体関連はわずか2銘柄で構成比率は3.7%。あまりにも違う。
NT倍率は6月3日に17.11倍と過去最高を更新。日経平均の上昇が目立つ
「NT倍率は当面16倍を挟んだ動きになると思われるが、瞬間風速で17倍になる可能性も考えられる。すなわち、TOPIXが3938ポイントを回復すれば、日経平均は6万6900円というシナリオだ」と私はすでに4月時点で予測していたが、やはり実現した。6月3日(水)に17.11倍と過去最高を更新。TOPIXは3996ポイントと最高値を更新、日経平均も最高値を更新して6万8402円となった。6月3日時点の年初来パフォーマンスはTOPXが+17.2%に対して日経平均は+35.9%。要するに日経平均の上昇率は市場平均に対してダブルスコアとなっている。2025年末のNT倍率は14.7倍だった。
前回のコラムでは「日経平均は今後いくらまで上昇するのか?」という問いに対して5月開催の「勝者のポートフォリオ」Webセミナーでの私の解説を紹介した。基準は 5月18日(月)時点の日経平均6万815円、EPS3495円、PER17.4倍である。
「利益水準が10%アップしてPERが19倍になれば日経平均は7万3000円、PERが20倍になれば7万7000円はすでに既定路線」「利益成長をさらに先読みし、現在の金融相場でPERが22倍まで拡大して市場参加者たちが許容すれば8万5000円になる可能性」というシナリオだ。皆さんにおいては日経平均7万3000円、7万7000円、8万5000円になった時のNT倍率を予測してもらいたい。マーケットの全体像がさらにはっきり掴めると思う。
6月17日開催のWebセミナーは必聴。2026年後半の投資戦略を占う
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」は日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスである。毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加え、毎月恒例のWebセミナーの開催とスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。
直近のWebセミナーは5月20日(水)20時から開催。テーマは『日経平均6万円達成。日本株はバブルなのか? 現在と将来のバリュエーションを検証する』。すでに会員ページにセミナーの録画動画をアップしているので参考にしていただきたい。
次回のWebセミナーは6月17日(水)20時より開催する。テーマは『FRBがもし利上げに動いたら? 現状の金融相場への影響を見極める』を予定している。投資戦略だけでなく、個別銘柄の話やすべての質問にお答えするQ&Aコーナーもあり盛りだくさん。投資のヒントが満載である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能である。毎回参加者は300名近くのビッグイベントとなっており、奮ってご参加願いたい。
また、スペシャル講義は投資スキルを身につける場として62本もの講義動画をリリースしている。個人投資家にとって必須のリスク管理、運用力を上げるためのマーケットサイクル投資法、恐怖指数の活用、システマティックリスクの対処法、ヘッジファンドの実態などを詳しく解説。ぜひとも参考にしていただきたい。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
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