「勝者のゲーム」と資産運用入門

FRBの年内利上げ観測が突如として出現。
株式市場はいよいよ下落モードに突入か?太田忠の勝者のポートフォリオ 第245回

2026年6月16日公開
太田 忠
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6月第1週は複合要因でAI・半導体が下落。SOX指数10.3%安は記録的

 SOX指数10.3%安、ナスダック4.2%安、S&P500は2.7%安、NYダウは1.4%安―。

 6月5日(金)の米国市場は久々の急落。NYダウ、S&P500、ナスダックの主要3指数に加えてSOX指数、すなわち「主要3指数+1」は5月以降ほぼ連日で最高値を更新。だが、最大の牽引役であるAI・半導体関連がこの日は大きく崩れた。「主要3指数+1」の下落率の大きさとその序列が相場の巻き戻しの凄まじさを明確に物語っている。

 マーケットが下げたのは3つの複合要因だ。米アンソロピックが「AIの暴走リスクを抑えるためには開発の一時停止や減速が有効」、米オープンAIも「米国政府がAI規制の国際基準づくりを主導すべきだ」と提言したことでイケイケマーケットに水を差したこと。5月の米雇用統計が+17.2万人と予想+8万人を上回り3月と4月も上方修正し、フェドウオッチによる米連邦準備理事会(FRB)の年内利上げ確率が80%に上昇した。そして、6月12日(金)に12兆円もの資金を吸い上げて史上最大のIPOとなるスペースXの株購入のための換金売り。こうした要因で株式市場は大きく下げたが、特にSOX指数の10.3%安は2020年3月のコロナショック以来6年3か月ぶりとなる暴落だった。

最も考慮すべきFRBの金融政策。好調な雇用統計で金融緩和にブレーキ?

 投資家として最も考慮すべきポイントはもちろんFRBの金融政策である。2024年9月に4年半ぶりの利下げを実施。「金融相場では景気減速が株式市場に大きな追い風になる」と私はいつも言っているが、今回はその逆バージョンだ。金融相場ではそもそも景気や企業業績が冴えない故に利下げして株式市場を刺激する。「景気減速や企業業績悪化のニュースは株価下落を引き起こす」というのが世間一般の見方だが、それは間違いだ。今回の雇用統計が想定以上に良かったことで金融緩和にブレーキがかかり、いきなり金融引き締め必要論すらちらつくようになっている。「好景気=金融引き締め=株式市場下落」という方程式が働いている。

 東京市場では6月3日(水)に日経平均株価が6万8402円、TOPIXが3996ポイントの最高値を付けた後はズルズル下落する展開となっている。AI・半導体の値嵩株主導でSOX指数化している日経平均の推移を見ると4日(木)が931円安、5日(金)が882円安、そしてメジャーSQ週に入った8日(月)が2536円安、9日(火)1392円高、10日(水)1237円安、11日(木)38円高となった。11日はザラバ中に1844円安と急落し、6万2335円の安値を付ける場面があり最高値6万8402円から6167円安、下落率は8.9%に達した。短期間にしてはかなりの調整である。

先物主導で投機的な動きを繰り返す日経平均。SQバトルが激しく展開

 読者の皆さんはご存じだと思うが、日々の日経平均は投機的売買で動いている。ファンダメンタルズなど全くのお構いなしだ。海外短期筋のヘッジファンドたちが先物市場で大量に売買を行って、それが現物株の動きに多大な影響を与えている。これが「先物主導の買い」「先物主導の売り」と呼ばれるものである。流動性や価格形成の面で制約の非常に大きい現物市場を使わずに先物市場を利用している。売買代金を見ても先物が現物を2倍以上上回る日もある。日経平均先物は大阪証券取引所だけではなく、シンガポール取引所、シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)でも取引されており24時間売買できる。流動性も極めて高く、何かネガティブイベントが起こった際には迅速なヘッジ機能としても活用されている。世界の投資家が参加する「日本が誇る日経平均先物」と言いたいところだが、「投機や思惑であまりにも現物市場が振り回されている」というのが私の正直な感想だ。はなはだ迷惑している、というスマート投資家も多いのではないだろうか。

 6月13日(金)に6月物の最終決済日がやってくるため、この日に向けて売り方・買い方の壮絶なバトルが繰り広げられる。SQを迎える第2週は特にボラティリティが大きくなる。大きなポジションを持ったままのヘッジファンドが多いためだ。先物・オプションに絡む売り買いは、実質的な最終売買日となる木曜日ではなく、その前日に執行することが多い。SQ週の水曜日は最もボラティリティが上がりやすくなり、「魔の水曜日」と言われる所以である。この日のバトルこそ投機家たちの戦いの場。ボラティリティを上げて利益を得ようと血みどろの戦闘が行われる。わずか10分間で日経平均が1000円上昇したり下落したりするのを不思議に思っている方々もいると思うが、SQバトルのせいである。

欧州中央銀行(ECB)が2023年9月以来となる0.25%の利上げを決定

 このところコラムで注目しているNT倍率。NT倍率とは、日経平均(N)を東証株価指数であるTOPIX(T)で割った数値である。4月21日(火)に15.74倍とこれまでの最高である2025年10月31日(金)の15.73倍を上回り、4月23日(木)には一時16.00倍とさらに拡大。「NT倍率は当面16倍を挟んだ動きになると思われるが、瞬間風速で17倍になる可能性も考えられる。すなわち、TOPIXが3938ポイントを回復すれば、日経平均は6万6900円というシナリオだ」と私はすでに4月時点で予測していたが、やはり実現した。6月3日(水)に17.11倍と過去最高を更新。11日(木)には16.68倍に低下した。

 こうした矢先、欧州中央銀行(ECB)が0.25%の利上げを決定し、政策金利を2.25%に引き上げるニュースが飛び込んできた。利上げは2023年9月以来、約3年ぶりだ。ラガルド総裁はコロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻による急激なインフレに対し、金融引き締めが遅れた苦い教訓からすでに今年3月の時点で利上げの可能性に言及していた。迅速に実行された。

米国の年内の利上げ確率が80%まで上昇。逆金融相場に突入するのか?

 話をFRBの金融政策に戻す。フェドウオッチでは年内の利上げ確率が80%に上昇した。これは一体何を意味するのか? 皆さんに考えていただきたい。金融相場に別れを告げて、株式市場が激しく値下がりする「逆金融相場」に突入するのか? その時あなたはどうするのか? 今からシナリオを立てて準備しておかねばならない段階にきていると私は思う。

 これが曖昧だといざ急落した時に「これからまだまだ下がるのか?」「もう売った方がいいのか?」という重要な投資判断ができなくなる。マーケットサイクルについては皆さんにすでに説明した。次回までの宿題にしておこう。

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」は日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスである。毎週のマーケット解説・投資戦略のメルマガ配信に加え、毎月恒例のWebセミナーの開催とスキルアップを目的とするスペシャル講義を提供している。

最重要のFRBの金融政策動向を解説する6月17日のWebセミナーは必見!

 直近のWebセミナーは5月20日(水)20時から開催。テーマは『日経平均6万円達成。日本株はバブルなのか? 現在と将来のバリュエーションを検証する』。すでに会員ページにセミナーの録画動画をアップしているので参考にして頂きたい。

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。

 

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