最高値更新に沸く株式マーケットだが、金融緩和の減速懸念が台頭?
6月FOMC(米連邦公開市場委員会)のドットチャートに驚きが走る。まさかの利上げ?
前回のコラムでは『FRBの年内利上げ観測が突如として出現、株式市場はいよいよ下落モードに突入か?』を題材に取り上げた。米国市場ではNYダウ、S&P500、ナスダックの主要3指数に加えてSOX指数、すなわち「主要3指数+1」が5月以降ほぼ連日で最高値を更新していたが、6月5日(金)に久々の急落。最大の牽引役であったAI・半導体関連が大きく崩れてSOX指数は10.3%安、ナスダックは4.2%安、S&P500は2.7%安、NYダウは1.4%安となり、その下落率の大きさと序列がマーケット逆回転の凄まじさを物語った。
相場急落は3つの複合要因だと解説したが、米連邦準備理事会(FRB)の金融政策に注目が集まった。5月の雇用統計が+17.2万人と予想の+8万人を上回り3月と4月も上方修正。これによりフェドウオッチによるFRBの年内利上げ確率が80%に上昇した。2024年9月にFRBは4年半ぶりに利下げを実施。「金融相場では景気減速が株式市場に大きな追い風になる」と私はいつも言っているが、その逆バージョンとなった。金融相場ではそもそも景気や企業業績が冴えない故に利下げして株式市場を刺激する。「景気減速や企業業績悪化のニュースは株価下落を引き起こす」というのが世間一般の解釈だが、それは間違いだ。雇用統計が想定以上に良かったことで金融緩和にブレーキがかかり「金融引き締め」の必要論すら現実味を帯びてきた。「好景気⇒金融引き締め⇒株価下落」との方程式が働いている。
日米欧の中銀が金融政策を発表。日本と欧州は利上げ、米国は据え置き
こうした中、日・米・欧の中央銀行の6月の金融政策が発表された。先陣を切って発表したのが欧州中央銀行(ECB)で0.25%の利上げを決定し、政策金利を2.25%に引き上げた。利上げは2023年9月以来、約3年ぶりだ。ラガルド総裁はコロナ禍とロシアによるウクライナ侵攻による急激なインフレに対し、金融引き締めが遅れた苦い教訓から今年3月の時点で利上げの可能性に言及していた。さすがラガルド女史、事前にマーケットへの地ならしをした上で、自らの信念を迅速に実行した。
次が日銀。植田和男総裁は以前から「政策金利を引き上げる」との発言を繰り返しており、6月16日(火)の公表前にメディアは「6月の金融会合で日銀は利上げへ」とのニュースを流していた。日銀の場合、実質金利はいまだ大きなマイナスのため利上げと言っても純粋な利上げと言えず、「金融正常化を一段と推し進める」と表現するのが正しい。結果は0.25%引き上げて政策金利を1.0%とした。1995年以来31年ぶりの水準だ。要するに30年もの失われた日本経済を取り戻す水準にまで持っていったのである。もちろん、物価上昇のリスクに備えるとの現実的な意味も込められている。今回の会合と記者会見の席では肝嚢胞感染症治療のためしばらく入院が必要となった総裁に代わって内田眞一副総裁が取り仕切ったが、マーケットへの悪影響はほぼ皆無だった。私の予想では年内にもう一度利上げされて1.25%の水準になると見ている。
FRBが年内に利上げに転換すれば、好調な金融相場はどうなるのか?
そして、しんがりを務めたFRB。予想通り現在の政策金利3.50~3.75%が据え置かれた。だが、3カ月ごとに更新されるドットチャート(FOMC参加者による経済・金融見通し)では、前回3月に示されていた「年内に1度の利下げ」を「年内に1度の利上げ」に変更、今年10月~12月期の個人消費支出(PCE)物価指数を2.7%から3.6%に引き上げたのだ。要するにインフレが想定以上になってきているので利上げで対応すべきだとの判断である。今回からFOMC議長は任期満了のパウエル氏からウォーシュ氏にバトンタッチされたが、声明文の分量は従来の半分となり、今後の金融政策運営に関する文言(フォワードガイダンス)がすべて削られた。市場関係者が最も知りたい内容が省かれたことに驚きが広がったが、これはウォーシュ流の対応だ。「予想めいたことを発表すると、柔軟な議論を阻害しかねない」との考えに基づく。ともあれ、フェドウオッチ予想をなぞる内容となった。
もしFRBが年内に利上げに転換すれば、好調な金融相場はどうなるのだろうか?
この質問は前回のコラムの最後に皆さんに問いかけたが、6月17日(水)20時より開催した毎月恒例の株式投資Webセミナーでも同じ質問を会員にぶつけてみた。「金利上昇で逆金融相場になる」「金融相場から業績相場へ移行する」との回答が大半だったが、明らかに間違いである。正解は「金融相場が継続する」である。FRBが利上げしても、一時的な対応に過ぎない。コロナ禍のピークだった政策金利5.25~5.50%から現状の3.50~3.75%まで利下げしたわけだが、目指すは景気にとって最も居心地の良い中立金利である。米国の中立金利は2.75~3.00%のレベルにある。要するにあと3回利下げする必要がある。現在の金利水準でも中立金利を上回っており、十分に金融引き締め的な状態にある。ここから調整的利上げを行なえば、再び中立金利を目指して利下げが再開される。
年内にFRBが利上げしても金融相場から業績相場へ移行することはない
ワーストシナリオでは3回の利上げで4.25~4.50%に達することを私は覚悟しているが、この水準だと中立金利まで6回もの利下げをしなければならない。一方、現政策金利からそのまま利下げをすれば3回の利下げだ。3回の利下げ余地と6回の利下げ余地を比べるとどちらの方がマーケットにプラスになるだろうか? そもそも利上げシナリオはマーケットも想定済み。利上げの度に短期的下落は起こるが、そうした中でも常にマーケットは利下げを期待している。すると「利下げ余地拡大→株価は一段上昇→金融相場は長続き」の流れになる。だから、このまま利下げを続けるよりも調整的利上げを行う方が一層の株高を誘発することになる。
マーケットサイクルにおいては金融相場から逆金融相場に一足飛びとなることはないし、利上げで金融相場から業績相場に移行することはない。業績相場が出現するのは利下げが完全に終了し、「これ以上金利は下がらない」状態においてだ。金融相場は2024年9月から始まったが、FRBが利上げをすればさらに長続きすることになる。
勝者のポートフォリオの6月19日の設定来推移は+191.9%と最高値更新
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行う「勝者のポートフォリオ」は、日本株を中心とした個人投資家向けの投資助言サービスである。推奨ポートフォリオの累計パフォーマンスは6月19日時点で+191.9%と過去最高値を更新した。
「勝者のポートフォリオ」の設定来パフォーマンスの推移と主要指数との比較
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次回のセミナーは7月15日開催。金融政策と金融相場への影響を徹底解説
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供による「勝者のポートフォリオ」メルマガ配信などで活躍。
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