「確実な1点」を選ぶか、「当たれば2点、外れれば0点」を選ぶか。娘の友人が試験中に直面したジレンマ
先日、娘とランチをしていた時のことです。娘の友人が試験中に直面したというジレンマの話を娘はしてくれました。
その友人は、試験の最中にこういう状況に気づいたそうです。
イラスト:いらすとや
2つの問題のうち、どちらか一方の答えが「A」であることはわかっている。両方の答えが「A」ということはあり得ない。ただし、どちらの問題の答えが「A」なのかはわからない。
さて、解答欄にどう書くか。
両方に「A」と書けば、確実に1点が取れます。片方に「A」、もう片方に「B」と書けば、順番が当たっていれば2点、外れていれば0点です。
みなさんなら、どちらにしますか。
私はこの話を聞いて、思わず身を乗り出しました。これは投資の話そのものだからです。
どちらの作戦でも期待値は同じだが、結果の振れ幅が異なる。「リスク」という言葉の本当の意味とは?
期待値を計算してみます。
正解の組み合わせは「A・B」か「B・A」の半々です。両方「A」と書けば、どちらの場合でも1点。「A」と「B」に分ければ、半々の確率で2点か0点、平均すれば1点です。
つまり、期待値はどちらの作戦でもぴったり1点で、まったく同じ。数学は「どちらでも同じ」と答えます。
しかし、ここからが本題です。
あなたの答案用紙は、1枚しかありません。期待値というのは、同じ試験を何百回も受けられる時の平均値の話です。実際に「A」と「B」に分けて書いた人が受ける点数は、1点ではありません。2点か、0点です。1点という結果は、その人には決して訪れない。ここに、リスクの正体があります。
リスクとは「損をすること」ではありません。結果がどれだけ大きく振れるか、その振れ幅のことです。2つのやり方があって、それら2つの期待値が同じだとしても、片方は結果が1つに固定され、もう片方は天国と地獄に分かれる。この違いこそがリスクです。
投資の世界で「確実な1点」を選ぶか、「当たれば2点、外れれば0点」を選ぶかは数学では決まらない
このことを投資に翻訳すると、こうなります。
米国債を10年持てば、年5%が確実に入ります。これが「確実な1点」です。
その一方、ある株は、読みが当たれば年10%、外れればリターンはゼロだとします。どちらになるかが半々ならば、期待値は年5%で、国債と同じです。
では、どちらを選ぶべきでしょうか。
それは数学では決まりません。決め手は2つの問いです。
第一に、確実な1点──年5%──は、あなたの人生の目的に足りるか。足りるなら、2点を狙う必要はそもそもありません。
第二に、結果が0点になったとしても、あなたの生活は壊れないか。どうしても2点が必要な人は、0点の覚悟とセットでしか賭けられないのです。
投資の場合、企業のことなどを十分に調べれば、当たる確率は五分五分ではなく、上げていくことができる
ただし、投資には試験と決定的に違う点が1つあります。
コインの重さを、自分で変えられることです。企業を調べ、産業を理解し、決算書を読み込む。そうやって「当たる確率」を五分五分から55対45へ、60対40へと動かすことができます。
確率が動けば、期待値が上がると同時に、外れる確率──リスクの一部──も下がる。これがエッジ(優位性)と呼ばれるもので、プロが調査に時間とお金をかける理由のすべてです。
逆に言えば、何も調べずに株を買うことは、重さのわからないコインを1回だけ投げる行為と同じだと思います。
エッジに存在する2つのワナとは?
正直につけ加えると、エッジにはワナが2つあります。
1つは、誰もが自分にはエッジがあると思いがちなことです。そして、エッジの有無は「当たったか」ではなく、「判断の過程が正しかったか」で検証するしかありません。
もう1つは、エッジがあっても0点になってしまう可能性はある、ということです。60対40とは、10回に4回は外れるという意味です。
だから最後の守りは賭けの大きさになります。外れても市場から退場しない大きさで賭けること。期待値はコインを投げ続けた人にしか支払われないのですから、投げ続けられる態勢を守ることこそが、期待値を受け取る条件なのです。
人生の答案用紙は1枚しかない
結論はシンプルです。
リスクとは損のことではなく、結果の振れ幅のことです。そして、人生の答案用紙は1枚しかありません。
まず、「確実な1点で足りるか」を問う。2点を狙うなら、コインの重さを自分で調べて確率を動かし、それでも0点になってしまう可能性があることを忘れず、致命傷にならない大きさで賭ける。
期待値の計算は数学ですが、どの程度の振れ幅を引き受けるかを決めるのは、あなたの生き方です。
娘の友人は試験のことを投資と結びつけて考えたわけではありません。彼はただ、自分が直面した問題を筋道立てて説明しただけです。
それでも私は「確実に1点を取るか、それとも2点を取るのに賭けるか」という選択の間で手が止まるその感覚が彼にあるということは、投資家に向いていると思いました。
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査に12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語に堪能。米国株などの資産運用について助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中。著書『台湾系アメリカ人が教える 米国株で一生安心のお金をつくる方法!』発売中。
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