ダイヤモンド・ザイでは、ザイ読者10人の保有する投資信託が「いい投資信託」なのか「悪い投資信託」なのか、プロに診断してもらう『投資信託診断室』を掲載している。診断してくれたのは、長年投資信託に携わってきた経験を活かし、投資信託を評価するデータベース「ファンド・ラボ」を開発した「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さん。今回は第3弾として、「安定分配狙いなのに、値動きの大きい投資信託を選択してしまった」という読者の保有銘柄とその診断結果を紹介しよう。
菅野太郎さん(仮名・神奈川県在住・53歳)
分配金による安定収入の獲得を目指して、分配金の多い商品を中心にチョイス。蓄えた資金は5~10年後には使いたい。
★菅野さんが保有する投資信託
◎ゼウス[新光US-REITオープン]
◎トリプルストラテジー
◎ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月)
菅野さんの保有銘柄の診断結果(1)
⇒「ゼウス[新光US-REITオープン]」(保有額の19%)
「ゼウス[新光US-REITオープン]」は、超人気の米国リート型の毎月分配型投資信託です。成績は平均以上ですが、この投資信託が投資先から受け取る利子・配当収入の利回りを大きく上回る分配金を出している点に問題ありです。
1年の分配金を足元の基準価額で割った利回りが28.3%であるのに対し、基準価額の下落分を差し引いて、1年前の基準価額で割った利回りは、マイナス9.4%。この投資信託の利子・配当収入の利回りはわずか2.7%で、実力以上の分配を出して基準価額の下落が続いています。
高分配利回りに惹かれたのでしょうが、今の分配水準を維持すると基準価額の下落は止まらず、いずれ減配となる可能性が大きいでしょう。
拡大画像表示
2016年10月には「損保ジャパン・グローバルREITファンド」が分配金を150円から60円に大幅減配。これを機に、減配に踏み切るリート型が増えることも考えられます。基準価額の下落を抑えるには減配はもはや不可欠。安定分配を狙うなら分配利回りが適正のリート型投資信託に乗り換えの検討を。
菅野さんの保有銘柄の診断結果(2)
⇒トリプルストラテジー(保有額の74%)
正式名は「好配当グローバルREITプレミアム・ファンド通貨セレクトコース」。愛称の「トリプルストラテジー」は、リート投資に資源国通貨などの高金利の通貨を組み合わせる通貨選択型で、値上がり益の一部を放棄する代わりに利息を確保するカバードコールも組み合わせていることに由来しています。
菅野さんが買った2014年9月に200円だった分配金は、4度の減配を経て現在は50円。減配により分配金は払い過ぎではありませんが、値上がり益の一部を放棄するカバードコールを組み合わせているため、基準価額の急回復は期待薄です。安定分配と基準価額の回復を望むなら、カバードコールなしの投資信託に乗り換えるべきでしょう。
拡大画像表示
菅野さんの保有銘柄の診断結果(3)
⇒ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月)(保有額の7%)
拡大画像表示
「ピクテ新興国インカム株式ファンド(毎月)」は、新興国の高配当株に投資する毎月分配型投資信託。新興国株全般型の中での成績は平均以下で、新興国株の高配当株に投資する分類の中でも、過去3年の成績で10本中8位、1年の成績で15本中7位と低調です。
75円だった分配金は購入後2度の減配により、現在は半分以下の30円に。減配したとはいえ、現在の分配水準でも基準価額に対して19.9%もの分配となっています。一方、投資信託が得ている配当収入の利回りは3.5%に過ぎず、依然として払い過ぎの状態が続いています。
そもそも、新興国株は値動きが大きく、相場悪化時には大きく下落するため、安定した分配を期待すること自体に無理があります。
さらに新興国株は通貨の値動きも激しく、先進国の経済状況にも影響を受けるため、右肩上がりというよりは循環的な動きに。つまり、売買タイミングが重要なのです。人気で過熱している時に買うのではなく、不人気の時に買うべきで、その特性を知った上で投資するならいいのですが、単に高分配だからと投資するのはいかがなものでしょうか…。分配水準だけに注目するのではなく、投資対象のリスクも理解した上での投資が重要なのです。
ポートフォリオの診断結果は…
安定分配を狙うにもかかわらず
リスク過多の資産構成は危険!
安定した分配金を狙っているにもかかわらず、分配金を払い過ぎる高分配投資信託ばかりを買ってしまっています。結果、3本中2本が購入時から3~4度の減配を実施し、半分以下の分配に。「ゼウス」も、現状、分配金を払い過ぎの状態で減配の可能性があります。
また、「トリプルストラテジー」はカバードコールを組み合わせており、基準価額の回復が難しいでしょう。今のような歴史的な低金利下では、10%以上の分配金を目指すと、思った以上のリスクを取ることに注意すべきです。分配を払い過ぎていない投資信託選びをしましょう。
(※関連記事はこちら!⇒「いい投資信託」「悪い投資信託」をプロがメッタ斬り!悩める読者が保有する投資信託それぞれの評価と投資目的と全体のポートフォリオを徹底診断!)
投資信託に悩んでいる人が駆け込む「投資信託診断室」特集は
ダイヤモンド・ザイ1月号に掲載
ダイヤモンド・ザイでは、「行列ができる投信診断室」特集の中で、今回登場した菅野さんを含めた、10人の悩める投資信託保有者の診断を紹介している。菅野さんのような安定分配を求める人、ハイリスク・ハイリターンを求める人など、投資信託保有者の運用方針はバラバラで、お悩みの種類も多様。今現在手持ちの投資信託をどうするか決めかねている人は、解決の糸口を見つけられる可能性も高いだろう。
また、現在今回診断をしてくださった「投信の窓口」ファンド・リサーチセンター長の植村佳延さんが解説する『めちゃくちゃ売れてるマネー誌ザイと投資信託の窓口が作った投資信託のワナ50&真実50』も発売中!全国の書店やアマゾン、楽天ブックスなどで、ぜひチェックを!
※証券や銀行の口座開設、クレジットカードの入会などを申し込む際には必ず各社のサイトをご確認ください。なお、当サイトはアフィリエイト広告を採用しており、掲載各社のサービスに申し込むとアフィリエイトプログラムによる収益を得る場合があります。 |
【2024年12月8日時点】 |
||||
順位 | 投資信託本数 ※1 | 最低積立金額 | ||
全体 | ノーロード (手数料無料) |
積立対応 | ||
1位 | ◆楽天証券 ⇒詳細情報ページへ | |||
2581本 | 2581本 | 2422本 | 100円 | |
【特徴・メリット】 投資信託の販売手数料はすべて無料! 投資信託の保有残高が一定の金額を超えるごとに「楽天ポイント」が貯まるサービスもお得。また「投信残高ポイントプログラム」の対象となる6ファンド(「楽天・オールカントリー株式インデックス・ファンド」など」)については、保有しているだけで一定のポイントが還元されるのでお得。さらに投信積立の際に楽天カードを使うと0.2〜1%分、楽天キャッシュを使うと0.5%分の楽天ポイントが付与される。ポイントは投資信託の買付や投信積立の代金にも利用できる。投資信託の最新事情がわかる「楽天証券レポート&コラム」や、最大5銘柄の基準価額の推移を比較できる「投信スーパーサーチ」など、投資信託選びのサポートもバッチリ。ロボ・アドバイザーが銘柄選択や売買タイミングまで判断してくれる「楽ラップ」や、スマホ専用のロボ・アドバイザー「ロボのぶくん」を利用可能。さらに、専用バランスファンドで手軽に積立投資ができるロボ・アドバイザー「らくらく投資」も登場。 |
||||
2位 | ◆SBI証券 ⇒詳細情報ページへ | |||
2547本 | 2547本 | 2362本 | 100円 | |
【特徴・メリット】 投資信託の販売手数料はすべて無料で、投資信託本数の取扱本数はネット証券でトップクラス! スマホアプリ「かんたん積立 アプリ」を利用すれば、投資信託をスマホで管理可能だ。また、投資信託の月間平均保有額に応じてVポイントやPontaポイント、dポイント、PayPayポイント、JALマイルなどが貯まる「投信マイレージサービス」もお得。保有額が1000万円以上なら獲得ポイントが2倍になる(通常銘柄の場合)ので、投資信託が本格的に資産形成を考えている人には、かなりお得だ。買付&積立が100円以上1円単位に引き下げられ、初心者でも気軽に始めやすくなった。投信の買付には、VポイントやPontaポイントが利用できる。投信積立は三井住友カードによるクレジットカード決済「クレカ積立」がお得で、最大で決済額の0.5%ものポイントが貯まる。最近では、低コストなiDeCo(個人型確定拠出年金)にも力を入れており、無条件で運営管理手数料を無料にしている。 |
||||
3位 | ◆松井証券 ⇒詳細情報ページへ | |||
1885本 | 1885本 | 1862本 | 100円 | |
【特徴・メリット】 投資信託の取り扱い本数を着実に増やしており、現在はランキング3位まで上昇。他社に先駆けて投資信託の販売手数料無料を打ち出したのも高評価だ。さらに投資信託の残高の最大1%分のポイントが貯まるサービスもお得。他社の類似サービスと比較しても、ポイント還元率は高水準に設定されている。投資信託ページは、人気の投信や好成績の投信がすぐにわかる各種ランキング装備、スマホでの見やすさ、直接発注など機能が充実。さらに、投資信託の組み合わせに頭を悩ませる人のために「投信工房」「投信提案ロボ」「投信見直しロボ」という3つの高機能ロボアドバイザーを用意。無料のロボアドバイザーとしては、どれも非常に高い機能を備えている。 |
||||
順位 | 投資信託本数 ※1 | 最低積立金額 | ||
全体 | ノーロード | 積立対応 | ||
4位 | ◆auカブコム証券(旧:カブドットコム証券) ⇒詳細情報ページへ | |||
1844本 | 1844本 | 1764本 | 100円 | |
【特徴・メリット】 投資信託の販売手数料はすべて無料! 信託報酬控除前のトータルリターンが見られるので、実態に合った取引コストや運用パフォーマンスがわかるのも魅力だ。また「プレミアム積立」は100円から可能。au PAYカード決済による積立なら1%ポイント還元、投資について気軽に話し合えるSNS「ファンドスクエア」も魅力。積立の銘柄選びに役立つ「セレクション」は、ジャンルごとの代表的な銘柄が複数紹介されている。ファンド探しはランキングやファンド検索から。投資信託の月間保有金額に応じて0.005〜最大0.24%分のPontaポイントがもらえる「資産形成プログラム」も上手に活用したい。 |
||||
【株アプリに慣れていない「株初心者」には特におすすめ!】 | ||||
5位 | ◆マネックス証券 ⇒詳細情報ページへ | |||
1767本 | 1767本 | 1704本 | 100円 | |
【特徴・メリット】 投資信託の購入時手数料はすべて無料! もちろん、NISA口座での取引や「投信つみたて」による購入も手数料0円だ。クレカ積立のポイント還元率は業界トップクラスで、「dカード」や「マネックスカード」で投資信託を積立購入すると最大1.1%分のポイントがもらえる。さらに、投資信託の保有金額の最大0.26%分のポイントがもらえるのもお得。なお、貯まったポイントは投信信託の購入代金に利用できる。ファンド探しに迷ったら、自分のライフプランに合ったファンド選びを手助けする「投信ポートフォリオ診断」を参考にするといいだろう。ポートフォリオの分析やリターン予測、アドバイスなどの機能がある「MONEX VISION」も便利だ。ロボアドバイザーサービスは、1000円から始められる投資一任型の「ON COMPASS」と、最低投資金額が5万円で国内ETFで運用を行うアドバイス型の「Monex Advisor」が利用可能。 |
||||
※手数料などの情報は定期的に見直しを行っていますが、更新の関係で最新の情報と異なる場合があります。最新情報は各証券会社の公式サイトをご確認ください。※1 投資信託本数は、各証券会社の投資信託サーチ機能をもとに計測しており、実際の購入可能本数と異なる場合があります。 |