米国の住宅価格や中古住宅販売件数は、じわじわと回復
そこに投資できる関連銘柄とは?
米国の住宅市場はリーマンショックで冷え込みましたが、その後の景気回復、失業率の低下、連邦準備制度理事会(FRB)の低金利政策による住宅ローン金利の低下などの支援材料を背景に、じわじわと回復しています。
下はS&Pケース・シラー20都市住宅価格指数です。
米国の不動産取引の大半を占める中古住宅販売件数も、着実に伸びています。
このような住宅市場の回復に投資する方法としてまず考えられるのが、宅建業者の株を買うというやり方です。
また大工さんが建材を買い求める際に利用する、ホームデポ(ティッカーシンボル:HD)などの小売店株に投資するという方法もあるでしょう。
さらに、ウエルズファーゴ(ティッカーシンボル:WFC)のような、住宅ローンに強い銀行株を買うという手もあります。
それらに加えて今日は、不動産紹介サイト、ジロー(ティッカーシンボル:Z)を紹介したいと思います。
不動産紹介サイトのジローは、
「不動産のグーグル」とも言える注目のサービス
ジロー(Zillow)の検索画面。さまざまな項目を入力することで、条件に合った物件を見つけ出せる拡大画像表示
ジロー(Zillow)は、「不動産のグーグル」のような存在です。消費者が家を探すとき、ジローを見れば、自分の住みたい町で、いまどんな物件が売りに出ているかを閲覧することが出来ます。
同社のデータベースに含まれている物件数は、1.1億物件となっています。自分の求めている家を、予算や間取りでスクリーニングすることはもちろん、その家の外観や内部の各部屋の写真、広さや築年数、その他のあらゆるデータを調べることが出来ます。
また、その物件の周辺の犯罪件数や小中学校の評価、同様の物件が幾らで取引されているか、などについても知ることが出来ます。
さらに、それらの周辺物件の取引価格から、自分が検討している物件の「妥当価格」も教えてくれます。
ジローは、「Zillow」サイトの他に、「トゥルーリア(Trulia)」、「ストリートイージー(StreetEasy)」、「ホットパッズ(HotPads)」、「ネーキッド・アパートメンツ(N*kid Apartments)」という、全部で5つのサイトを運営しています。
これらのサイトを通じて、同社はネットを経由した不動産紹介の実に3分の2を寡占しています。ユーザーの多くは、スマートフォンを通じてこれらのサイトを頻繁にチェックしています。
同社の平均月次ユニーク・ユーザー数は、下のチャートのように推移しています。
収益源である不動産仲介業者からの広告へ
新たに入札方式を導入
同社の売上高の約7割は、プレミア・エージェントと呼ばれる、不動産仲介業者の広告から上がっています。
ひとつの物件につき4人の不動産仲介業者が「この物件に興味があるなら私にコンタクトしてください!」という広告を出せます。消費者は、ある物件に興味を抱いたら、その4人の不動産仲介業者の写真から1人を選び、問い合わせのメールを送るわけです。
これまでは、地域によって広告枠の価格設定をジローが予め決めていましたが、今期からは広告枠の価格が入札方式で動的に決められる方式が導入されました。
最初はこの変更で広告を出す不動産仲介業者も戸惑うかもしれませんが、いずれこの新方式が円滑に動き出せば、生産性の高い、やり手の不動産仲介業者はどんどん高い値段で広告枠を落札し、顧客をどんどん獲得することが予想されます。適者生存というわけです。
これは、ジローの側からすれば、売上機会が青天井になることを意味します。
さらに、ジローのサイトは住宅ローン・ブローカーとも直結しており、消費者が興味を持った物件を買う際のローンを組む手伝いもします。
このように、全てがジローのサイトを中心に動くわけです。
米国の不動産市場の拡大に連動し
ジローの売上げ高も成長
ジローの売上高は「不動産仲介業者がどれだけ広告費を使う意欲を持っているか?」によって決まります。すると、そもそも不動産仲介業者が商売繁盛していないといけません。
不動産仲介業者は、不動産取引が成立すると、売り手の不動産売却代金から6%の仲介手数料を差し引きます。売り手を代表する不動産仲介業者(=この業者をリスティング・エージェントといいます)は、買い手を代表する不動産仲介業者との間で手数料を50:50で折半することが多いです。
このように不動産仲介業者の収入は、1)売買の成立、2)価格、によって変動します。
冒頭の二つのチャートで見たように、不動産価格が上昇し、中古住宅の販売が増加するということは、不動産仲介業者の売上高も増えていることを示唆します。
このように増加した手数料収入の一部を、不動産仲介業者はジローのサイト上での広告展開に再投入するわけです。
同社の売上高は、下のチャートのように推移しています。
なお、チャートには、2015年第1四半期からは、買収したトゥルーリアの数字が含まれています。
ジローは、トゥルーリアを買収した後、一部の重複している部門を整理しました。そのリストラにまつわる費用が2016年第2四半期の修正EBITDA(利払税金償却前利益)を押し下げています。
【今週のまとめ】
不動産仲介業者にとって欠かせないツールとなった
ジローの値上がりに期待
米国の住宅市場は回復してきています。不動産仲介業者が日々の業務を進める上で、ジローは欠かせないツールになっています。
ジローは広告枠をこれまでの固定料率から入札方式に改めました。一定の試行期間を経て、広告出稿者がこの方式に慣れれば、不動産取引が活発になるにつれて売上も青天井になると予想されます。
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