香港で開催されたクリスティーズのオークションは
宋時代の水墨画が約68億円で落札されるなど、大盛況!
ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。今回は「番外編」として、シンガポールではなく、香港についてお話ししたいと思います。
私は今シンガポールに住んでいますが、仕事の関係で香港を訪れる機会がよくあります。シンガポールから香港までは飛行機で4時間前後。「近い」とは言えないまでも、時差がないので、それほど気負わずに足を運ぶことができます。
先日は、世界で最も有名なオークションハウス「クリスティーズ」のオークションが香港で開催されたのですが、これに縁あって参加してきました。
「クリスティーズ」が設立されたのは英国ですが、オークションは世界中で開催されています。2018年8月の報道によると、クリスティーズの2018年上半期の総売上高は、前年同期比で35%増の約40億ドル(約4480億円)となり、クリスティーズの半期の売上総額としては過去最高額を更新したそうです。地域別の売上は、45%が米国、24%がアジア、残りの31%が欧州・中東とのこと。
ただ、関係者に聞いた話によれば、オークションが世界一盛り上がるのは香港なのだそうです。実際、私が訪れた回では、宋の時代の詩人・書家である蘇軾(そしょく)が1000年近く前に描いたとされる水墨画が、東洋美術史上最高額となる約68億円で落札され、世界的に大きな話題になりました。
「クリスティーズ」のオークションの前日には、前夜祭としてカクテルパーティーが催され、パーティー会場にはオークションに出品されるすべての商品が展示されていました。
そこには、例の水墨画はもちろん、世界一大きなサファイアや、巨大なダイヤモンドのネックレス、超高級時計、見たことがないほど大量のエルメス・バーキンコレクション(その多くはクロコダイルなどのレア物や超高級品)のほか、ピカソやモネ、ゴッホなどの有名絵画も勢ぞろいし、圧巻の光景でした。
翌日のオークションでは、それらの商品もバンバン売れていったので、チャイナマネーの底力を肌身で感じることができました。
今、香港は世界で一番物価が高い都市!
4位のシンガポールと比べても大きな違いがあると実感
香港はシンガポールと共通点が多い都市ですが、物価が高い点も同様です。よくシンガポールは物価が高いと言われますが、シンガポールに住む私が香港に行くと、肌感覚ではシンガポールよりも香港のほうが1.5倍くらい物価が高いと感じます。
組織・人材コンサルティング会社のマーサー(MERCER)は、毎年「世界生計費調査(Cost of Living Survey)-都市ランキング」を発表しています。このランキングは、5大陸209都市において、住居費、交通費、食料、衣料、家庭用品、娯楽費用などを含む200品目以上の価格を調査し、それぞれを比較して作成されているものです。
この「世界生計費調査-都市ランキング」の2018年版では、世界一生計費が高い都市は香港だという結果になりました(2017年の同調査では香港2位でした)。ちなみに、2018年版の2位は東京、3位はスイスのチューリッヒ、4位がシンガポールです。
シンガポールのほうが東京よりも物価が高いイメージかもしれませんが、近年のシンガポールは物価上昇率が1%程度に落ち着いていますし、特に交通費などが東京と比べて圧倒的に安いです。また、食品や家庭用品、衣類などの生活必需品も、品質などにこだわりすぎなければ、安く調達することが可能です。
そのため、シンガポールから香港に行くと、何もかも高い印象を受けるのは当然と言えるでしょう。なお、香港の物価上昇率は2%程度となっており、シンガポールと比べれば、インフレ傾向もやや強くなっています。
香港の不動産はバブル的な高騰を続けてきたが、
投資家にとっては旨味が薄れ、値崩れの危険性もあり
香港を訪れたときには、不動産情報を集めたり、実際に物件を目にしたりする機会もあるのですが、物価が世界一の香港では、不動産価格も高額です。狭くて、あまりグレードが高くないような物件が、驚異的な価格で売られていることが珍しくありません。シンガポールの不動産も高額なものが多いですが、少なくとも価格と広さ・グレードは釣り合っているので、香港のほうが割高感は強いです。
アジア諸国の不動産の「表面賃貸利回り」(必要経費を考慮せず、家賃収入額だけで計算した利回り)の平均値を比較したランキングによると、最も利回りが高いのがインドネシア(8.61%)、2位がフィリピン(6.13%)、3位がカンボジア(5.33%)、4位がタイ(5.13%)、5位がマレーシア(3.72%)、6位が日本(2.66%)、7位が香港(2.62%)、8位がシンガポール(2.54%)、9位が中国(2.1%)、10位が台湾(1.57%)でした。
このデータで見ると、アジア先進国の中では、日本の不動産の表面賃貸利回りが比較的高くなっています。そのせいか、シンガポール人など一部の外国人投資家が、このところ積極的に日本の不動産を買っています。
東京都心にある新築のワンルームマンションは、2018年の年末時点で3000万円台程度から買えますが、その他の先進都市の同ランクの物件に比べると割安だということで、即決&キャッシュで買ったというシンガポール人の話も聞きました。
表面賃貸利回りにおいては、香港もそれほど差がないように見えますが、前述のように物件自体の価格は日本よりも高めです。ただし、高騰してきた物件価格が適正かどうかは微妙です。というのも、香港の不動産市場は2004年頃から値上がりし続け、バブル的な盛り上がりを見せてきましたが、直近では一部不動産が値崩れし、バブル崩壊の懸念が広がっているのです。現在の香港の不動産市場は、投資家としては手を出しづらい状況になっていると言えるでしょう。
グレーターベイエリア構想の始動で香港と中国本土が接近!
中国の富裕層が香港でどんどんお金を使う構造に
そんな香港に関する最近のビッグニュースは、「グレーターベイエリア構想」の本格化です。グレーターベイエリア構想とは、香港・マカオや中国南部の広州、深センなどの大都市を結ぶインフラを整備し、人口7000万人近い大都市圏を構築する計画のことです。
その一環として、2018年9月には香港と広州を結ぶ高速鉄道が開通し、出入国の手続きをする時間を含めても、1時間程度で行き来ができるようになりました。
さらにその1か月後には、珠海(広東省にある経済特区でマカオと隣接)と香港を結ぶ巨大な橋(港珠澳大橋)が完成。香港~珠海間の所要時間は、これまでは船で4時間かかっていましたが、橋の完成で30分にまで短縮されています。
これらのインフラ整備の影響なのか、私が11月に香港を訪れたとき、街中にはこれまで以上に北京語が溢れていました。すでに、あちこちの店でクリスマスセールが始まっており、本土からバスでやって来た買い物客が、大きなショッピングバッグを抱えている姿をあちこちで目にしました。中国本土の人口の多さを考えると、今や香港は世界でも有数のお金を落とす人が集う都市になったと言えるかもしれません。
香港までの移動時間が大幅に短くなった中国の大都市・広州は、今注目の自動運転技術やAI技術の開発を手掛ける企業などが拠点を置く先進都市です。香港と広州は、お互いに強い影響を与え合いながら、発展を続けている状況にあります。将来的に、ますます世界の注目を集めていきそうなこの2都市から、今後も目が離せません。
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