★★★★☆ (5段階中4 5が最高評価)
その人が投資が上手いか下手かは、いとも簡単にわかります。下手くそな人は、相場がよいとき、過度に楽観的になります。そして相場が悪い時に必要以上に悲観的になります。つまり、儲かっている時、調子に乗ってもっと買ってしまうのです。逆に市況が悪い時に、とても心配になり、ビビって投資を控えてしまうのです。ひどい時は投資そのものから撤退してしまいます。
それでは儲かるものも儲かりません。投資というものは、淡々とやるものです。過剰な強気もだめ。過剰な弱気もだめです。
本日紹介する三菱商事(8058)は、投資が非常に上手い会社です。どうしてわかるかは、過去、同社を取り巻く環境が天国(2008年の原油140ドル)から地獄(2016年の30ドル割れ)へと転落した時の対応でわかります。その時の同社の投資のやり方から、同社はアタマのよい会社であること、そして投資の本質がわかっている人々だとわかるのです。
企業の投資活動を見る場合、キャッシュフロー計算書を見ます。投資キャッシュフローの状況を時系列に用意をします。投資が多い年はキャッシュフローがマイナスになります。同社の場合は、過去15年ぐらい見て、マイナス幅の大きな年(投資の多い年)をピックアップすればよいのです。
同社はいうまでもなく、日本のエネルギー調達を担っている社会インフラ企業です。良質で安価な石炭やLNGなどの燃料は、同社の権益から輸入されます。
直接投資からの利益と手数料ビジネスの2本立て
同社のビジネスモデルは、主に2つです。一つは、事業や油田や鉱山などへの直投資からの利益。こちらは投資先の利益の変動の影響を受けます。つまり、鉱山へ投資をすれば、コモディティ市況がよければ鉱山が儲かり、同社も保有持分に応じて利益を得ることができます。
もう一つは、商材の輸入販売による手数料などです。これは同社の権益からの調達も含みます。仕入れ販売で、伝統的な商社ビジネスです。
さて、同社のビジネスのキモは、投資先の選定ばかりではなく、投資のタイミングや投資金額にもあります。コモディティ価格が暴騰していたリーマンショックの前の時点では、同社の投資キャッシュフローは低位でした。同社は非常に儲かっていたのですが、過剰な楽観に陥りません。同社は調子がよい時に調子に乗りませんでした。権益をどんどん拡大しなかったのです。投資が上手い人はこんな感じです。投資がとても上手い人たちだなあと思います。
2008年9月。リーマンショックがありました。即座に2009年、同社は投資を急拡大します。
投資キャッシュフローは3700億円と前年から4倍にしました。
2012年。超円高です。権益などの海外投資は、円高では有利になります。同社の投資キャッシュフローは3500億円を突破。前年から3倍にしました。コモディティ市況が活況であった2000年代前半のお金をここで投資をしたのです。続く2013年も2012年並の投資を敢行しました。
そして、2016年。原油価格が30ドルを割れます。2008年高値140ドルから1/4以下です。コモディティ市況が最悪のタイミングで、同社は、過去最大の5000億円を超える投資キャッシュフローを計上しました。前年の5倍規模でした。やるねー。上手いよねー。
2009年(恐慌)、2012年と2103年(超円高)、2016年(原油最安値)は投資キャッシュフローが非常に大きな年です。逆に、少ない年は、それ以外の全ての年です。上手いですよ。上手い。投資家の鑑です。
為替や市況が順調なとき、同社は大きな投資をしていません。相場がわかっている人、投資が上手い人は、ほとんどがこうなのです。コツは、暴落したとき、すぐに買う必要はなく、そろそろ準備しようかなぐらい、ゆっくりと構えることです。
暴落。即買う。これは投資が下手くそな人の買い方です。暴落。やれやれと動き出して、慌てない。
暴落してから数ヶ月の間に買う。このぐらいのゆったりさが上手い人の感覚です。投資と車の運転は急ぐ必要は全くありません。投資も車の運転も急げば危ないだけです。
多くの投資家は会社訪問しても最初の訪問で買うことは普通はしません。じっくりと2年間調べて5年後に買うぐらいの感覚です。多くの方には何を言っているのかわからないでしょうね。残念ですけど。
三菱商事だからできる権益や実績が数多くある
さて、皆様は商社と聞くと、モノを動かすだけだと思う人がいるかもしれませんが、そうではありません。油田や鉱山などの権益には、海外メジャーとの人脈がなければなりません。外国政府との繋がりもなければなりません。有利な投資案件は、よい人脈からの紹介によるものです。新興企業が権益に投資などできません。同社のような過去の大きな実績がなければ相手にもされないでしょう。
皆様は、エリートと聞くと、高給取りで苦労なし、と思うかもしれませんが、エリートほど頭脳をフル回転し集中して働く人は他にいません。エリートならモーレツは当たり前のことです。国民の期待を背負っているんですからね。そうしないと気が済まないからエリートなんですよ。
昨今、エリートをバッシングする風潮があり、百害あって一利なしです。三菱商事の社員はエリート中のエリートです。日本を支えてくれています。彼らをぜひ、ご尊敬ください。
投資なんて本で勉強するものではないです。周りが総悲観で、大恐慌で超円高で業績がガタガタの時に投資をすれば誰だって儲かります。それ以外の要素は普段のちょっとした差です。例えば、銘柄選びが上手い下手の差は大きいです。でも、これは年間で10%程度の差にしかなりません。
逆に、投資に向かない時期はこうです。アパレルショップの店員さんやレストランのボーイが株の話をするようになったら、投資は控えてください。ピークです。後、株主のオフ会が申し込みから3分で100人以上が埋まれば、もちろん、そんな時期は投資環境ではないです。彼らが話している銘柄には手を出してはいけません。
三菱商事のリスクはコモディティ市況の悪化
さて、三菱商事のリスクは、コモディティ市況の悪化などです。昨今は、事業投資も手がけていますが、将来のためです。超短期の売買に明け暮れる機関投資家よりも同社はずっと長い将来を考えて投資をしていると私は思います。例えば、カーシェア事業であるとか、スマートシティであるとか、成長分野への投資は腰が入っていますね。
配当利回りが高いですね。そして、100年後もきっとあるでしょう。あまり株価を気にしないで配当狙いで長期で保有するにはもってこいの株でしょう。
お金は賢い人に預けた方がよいのです。相場が下がってオタオタしているような人は、最初から、株投資をしてはいけません。暴落を恐れるビビリのお子ちゃま投資家は一生、株などやってはいけません。しっかりと年率0.01%の預金で確実に1円ずつ増やしてください(もはや投資家になろうなどとは思わず、利殖は諦めてください)。
相場が悪い時に買う一人前の投資家の方々は、一度同社を買ったら、最低30年間は株価を見ないようにしてください。30年後は、投じたキャッシュの何十倍になっているでしょう。だって、同社は機関投資家よりも何十倍も投資が上手いのですから。
DFR投資助言者 山本潤
この連載は、10年で10倍を目指す個人のための資産運用メルマガ『山本潤の超成長株投資の真髄』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、週2回のメルマガの他、無料期間終了後には会員専用ページで今回ピックアップした具体的な長期投資向けの高配当銘柄や資産10倍を目指すポートフォリオの提案や売買アドバイス、成長株投資の分析法などもご覧いただけます。