7年後に株価7000円台を狙えるバルカー(7995)
配管などから気体や液体が漏れるのを防ぐシール材大手のバルカー(7995)は、2019年に過去最高の売上512億円、営業利益56億円を計上しました。そのけん引役が半導体産業向けです。微細化でトランジスタの構造が立体的になり、NANDメモリーが100層を超える多層になったため、需要が爆発しました。ただ、その後はコロナショックによる需要低迷で業績悪化。今期の減配懸念もあり、株価は1926円(10月7日終値)です。
同社は、配当を含めて総還元率50%にしています。2021年3月期の純利益予想は15~20億円で、予想EPSは90~120円程度です。これに50%を適用すれば予想配当は45~60円で、現在の株価水準から求めた配当利回りは約2~3%となり、今期の減配懸念は株価に織り込まれていると判断します。
同社の7年後の営業利益は80~90億円と想定。半導体とディスプレイなどが成長を牽引し、さらにタンクコンテナなどの医薬品や化学品向けも貢献するでしょう。配当は170円を想定し、目標株価は7000円の大台を想定します。
交換やメンテ需要が中心のストック型のビジネスモデルが強み
株価低迷の一因には、同社のビジネスモデルが正しく理解されず、市場から過小評価されていることもあるでしょう。同社の強みは、頻繁に交換やメンテ需要が中心のストック型モデルであることです。
例えば、半導体向けでは、スループットを高めるためにプラズマのエッチングが激しくなり、よりパーティクル汚染に敏感になったことで重要が急増。シール材の痛みが激しいため、頻繁に交換することが求められるのです。この分野は新規参入も度々あるものの、同社に加えて米国のデュポン社とGreen Tweed社の3社でかなりの占有率になります。
もう1つの牽引役である配管やタンク内部で使われるライニング材もストック型です。半導体装置には多くの配管があります。配管は汚染が許されず、装置の点検も頻繁にあります。ライニングの鋼管やバルブなどが定期修繕で交換されます。こうしたメンテ需要が継続的な収益につながるのです。同社の売上の6~7割はメンテ需要が占めると想定しています。
半導体向けは今後も年率二桁の成長が期待。高い投資効率も魅力
現状、半導体向けの売上比率は3~4割程度と想定しています。半導体への取り組みは1970年代に遡り、早い段階から東京都町田市に研究センターを設けて手がけてきました。努力の甲斐もあり、日の丸半導体は凋落したものの、部材や装置メーカーは生き残っている日本企業は多く、同社もその一社です。
半導体向けは今後も年率二桁の成長率が期待できるでしょう。競合に勝つために開発費はそれなりに必要ですが、物性開発であり配合技術が要素である以上、投資効率は高いです。有形固定資産が140億円台で、売上500億円を創出できる能力があることが投資効率の高さを証明しています。
課題は構造不況業種である石油化学プラント向けです。日本は1990年代の超円高を皮切りに石化プラントの新設はなくなり、主戦場は海外になりました。ただ、石油化学プラント、タンクコンテナ、火力発電所などは、各国とも法定定期修繕を義務付けており、約2~4年間に一度はタンクの洗浄、タンクや配管やバルブのチェックをします。需要増加の見通しは低いもののストック型ビジネスであること、国内事業も残存者利益を期待できるとあって、収益に貢献するでしょう。
投資効率が高く、財務重視の経営で安定感
2018年と2019年と2年連続で営業利益率が二桁を超え、フリーキャッシュフローもプラスを維持。自己資本比率は約7割など、財務重視の経営で安定感があります。1961年に上場以来、営業赤字は一度もありません。理由は、半導体という成長市場で存在感ある製品を出し続けたこと。それ以外の分野でも定期修繕需要があること。顧客の多くがシクリカルな産業ではあるもののメンテ中心のストック型であることでしょう。もちろん、新規の設備投資の方が恩恵は大きいでしょうが、稼働が続く限り修繕や交換需要を定期的に取り込めます。
収益率は長期で上昇傾向にあります。売上成長は7%程度で可能であり、営業利益は10%成長を想定します。自動車や航空機などのエンジン向けのシール材もあるが、売上比率は6分の1程度と高くないと想定。今期はこの需要が消滅していますが、2021年は徐々に戻るでしょう。
PBR約1倍と市場は過小評価、中長期的に見れば買い
同社のPBRは約1倍と市場からは低成長株と見られているようですが、過小評価だと思います。なぜならば、ビジネスモデルが秀逸なストック型で、上場以来営業赤字もない。フリーキャッシュフローは恒常的に黒字で、配当成長率も二桁。その変動率の標準偏差は8%に過ぎません。資本コストは5%以下と想定すると、現在の株価は大幅な減配リスクを織り込んでいると推定します。
同社は2027年に向けて、ROE15%と売上800億円(現状のほぼ倍)という目標を掲げています。2018年の状況では売上600~700億円、営業利益80億円程度はすぐに手の届く範囲と思われました。株価も3700円ありました。現在の株価は約半値です。
今後は期待できるでしょう。上場延期したとはいえNAND大手のキオクシアの新規の半導体工場の建設が来年か再来年には始まります。米国も日本政府も安全保障上の理由で半導体投資に多額の補助金を用意しています。中国の半導体業界も独り立ちを模索しており、同社のような部材メーカーにとってもチャンスでしょう。プラント分野などでも世界で大きなチャンスがあると考えます。現在落ち込んでいる自動車向けなども戻るため、収益の改善が期待できます。中長期ではM&Aなども駆使して賢く着実な増収を目指していくでしょう。
(DFR投資助言者 山本潤)
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