長期投資に大切なのは、株価より、人生のグランドデザインだ
ダイヤモンド社の100%出資子会社、ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(以下、DFRと略)が提供する『山本潤 10年で10倍を目指す! 超成長株投資の真髄』は、外資系投資顧問などで日本株のファンドマネージャーを約20年間務めた山本潤氏が個人の資産を10年で10倍にすることを目指し、年率20%以上のパフォーマンスを目指す銘柄の組み合わせ(ポートフォリオ)をメルマガや掲示板で助言するサービスだ。
日本の株式相場は11月以降大きく上昇し、日経平均株価は2万6000円台を推移している。DFRポートフォリオのパフォーマンスも過去最高を更新した。
山本氏は、長期投資に臨む上で大事なのは、短期的な株価動向に一喜一憂せず、10年~20年という長期のグランドデザインを描くことだという。そのための理論や哲学などをDFR会員に向け、メルマガやセミナーなどを通じて伝授している。今回は2021年の長期投資戦略を考える上で大事なポイントなどを山本潤氏と、翻訳家として活躍する関美和氏に聞いた。
新興国など中間層の拡大で恩恵を受ける銘柄に投資せよ
――2021年以降、注目する投資テーマはありますか?
関 私が投資で重視しているのは、経済成長する国に投資することです。経済成長には、かつての日本の高度経済成長期がそうだったように中間層の拡大が欠かせません。その意味で、アジアや南米諸国など、これから中間層の拡大が期待できる新興国に投資すべきでしょう。日本株に投資するせよ、新興国の中間層の拡大で恩恵を受けられる銘柄を選ぶ必要があると思います。
山本 新興国の中間層拡大の恩恵を受けるという意味では、DFRポートフォリオの組み入れ銘柄では、マンションのドアなどの内装品を手がけて中国で業績拡大中の日本フラッシュ(7820)が該当します。また、最近までDFRポートフォリオに組み入れていた美顔器などを手がけ、2020年の中国の「独身の日」の電子美容機器部門で販売実績1位を獲得し、業績を上方修正したヤーマン(6630)などもそうですね。
ヤーマンの株価は、コロナの底値から約6倍の高値をつけました。インバウンド需要は当面厳しくとも、中国や新興国などで評価が高い製品やサービスを手がける日本企業は、コロナ後の世界的な景気回復の局面で恩恵を受けられると思います。
関 新興国の中間層の拡大の恩恵を受ける金融商品の一例としてクラウドクレジットなどもあります。デフォルトリスクはあるものの、小口でバンドルされているので相対的に低いと言えます。為替変動リスクが嫌な人には、利率は少し下がるものの円建てヘッジ商品もあります。表面平均利回りは5~6%以上あるものが多いです。
――ところで話は変わりますが、山本さんはDFRのファンドマネージャーとして多忙な合間を縫って大学院に通っていらっしゃいます。また、関さんは杏林大学で教鞭をとられていらっしゃいます。なぜ、学びや教えることに熱心なのでしょうか?
株価を見ている暇があったら、自己投資すべき
山本 私事で恐縮ですが、数学科の博士課程に通って位相幾何学を学んでいます。限られた時間を有効に使うため、歩くなど移動時間中に教科書を読んで勉強しています。10秒あれば、教科書を1行を読んで考えることができます。こうした10秒間の積み上げが大事です。私は通常の学生の倍の時間をかけて修士になりましたが、楽しさが辛さに勝ります。人生で大切なのは二つ。今の10秒を疎かにしないことと、20年という長期のグランドデザインを描くことです。
投資も同じだと思います。「投資はこうやるものだ」と巷にあふれる手法でやっているうちは、投資の範疇に入りません。投資とはアルゴリズムではありません。人生と同じく膨大な努力の積み重ねです。そこにノウハウはありません。短期の株価動向に一喜一憂している暇はなく、日々の人生に向き合ってもらいたいと切に願います。
関 コロナによる暴落を契機に株式投資を始めた若者は多いと思いますが、私からのアドバイスとして、まずは自分でやりがいを持って続けられる自己投資に励んでもらいたいですね。勉強やキャリアアップ、起業など何だっていいと思います。
株式投資は、他人に投資するので、自分でコントロールできない面が多々あります。一方、自己投資であれば、自分次第で続けることができます。主体性を持って取り組む必要があるので簡単ではありませんが、その分、リターンを得られる確率も高いです。私は翻訳家に加えて、杏林大学で教鞭を取るという新たなキャリアに挑戦していますが、教えることは本当に楽しくやりがいがありますね。
――DFR会員は、男性が多く、女性は少数派です。あらゆる分野で女性活躍が進む中、多くの女性に株式投資を始めてもらうにはどうすればいいのでしょうか?
関 コロナの感染拡大でテレワークが増えて、多くの女性が痛感したのが、男性の「家庭進出」が進んでいないこと。ある調査によると、夫婦2人でテレワークしているにもかかわらず、夫と妻の家事分担が進むと思いきや、むしろ女性の家事が増えているという結果が出ているのです。まずは、パートナーである夫がこうした問題に真摯に向き合わないと、女性の社会進出は進まないと思います。男性に言いたいのは、株式投資で資産を築くことも大事ですが、まずはパートナーや子どもなど家族のケアをすることが大切です。
私は以前米国で働いていましたが、米国は確かに女性の社会進出は進んでいますが、制度面は結構厳しいです。社会保障が手薄で、産休や育休も取得しにくい。その意味で日本は制度的に遅れているとは思いません。世界的に女性活躍が進んでいると言われている北欧諸国と比べてもそん色ありません。あとは、家事や育児を女性と同等にしようという男性のマインドが変わることが大事なのではないでしょうか。
長期投資の銘柄を選ぶ際に欠かせないESG
山本 経営陣や管理職はもちろん、製造業などでは社員比率自体が低いなど、日本企業に女性が少ないのは課題だと思います。女性社員は、経営陣に対してフラットに意見できたり、待遇や福利厚生などの改善についても声を上げたりするなど、経営によい緊張感を与えていると思います。
また対外的には、ドイツのメルケル首相やニュージーランドのアーダーン首相などを見ていたら分かると思いますが、トップが女性だと好戦的な姿勢が弱まり、社会や企業とのコミュニケーションが円滑になり、協調的な関係構築が進みます。その結果、社会や企業経営の長期見通しがよくなり、資本コストが下がり、株価上昇が見込めるでしょう。
関 私が日本を見て危惧しているのが、職業間の収入格差です。例えば、多くの女性が働いている保育園や介護施設では、子どもや高齢者を守るという重責を担っている仕事にもかかわらず、報酬は低く抑えられたままです。一方、ITや金融など身の丈を大きく超えるような報酬をもらっている業界もあります。こうした職業間の収入格差が開くと、これから社会で活躍しようとする女性や若者の足かせになり、日本の経済成長は一段と低調になりかねません。
山本 私も同感です。株式投資は、一部の儲けている勝ち組を見つけ、そこにお金を投じてさらに勝たせる側面があり、格差を拡大する一因を担っていると言えるでしょう。今年がそうであったようにITや巣ごもり銘柄に短期マネーが集中して高騰する一方、コロナで大きな打撃を受けた銘柄は極端にまで売り込まれるなど、フェアとはいえない状況です。
もちろん、株式投資で利益を上げることは重要です。しかし、それ以上に大切なのは、投資を通じて社会的な弱者を底上げし、社会貢献の一助とすることです。その意味で、今後、長期投資をする際はESGに積極的に取り組んでいる企業を選ぶという観点が欠かせないと思います。
年末年始は、株価を見るのはやめて、己を見つめ直し、長期のグランドデザインを描いてみる。そして、否応なしに密接にかかわっているパートナーや家族、社会にどう貢献するかを考えてみてはいかがでしょうか。短期ではなく長期、自分ではなく他人や社会を思いやる。そうした心構えでのぞむことが、来年の投資にも生きてくるような気がしています。→前編の記事はこちら
■関美和氏のプロフィール
翻訳家。杏林大学准教授。慶應義塾大学文学部・法学部卒業。ハーバード・ビジネススクールでMBA取得。モルガン・スタンレー投資銀行を経てクレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長を務めた。翻訳書に『父が娘に語る 美しく 深く 壮大で とんでもなくわかりやすい経済の話』(ダイヤモンド社)や『ファクトフルネス』(日経BP社)などがある。
(構成/冨丸幸太 撮影/鈴木愛子)
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