再生可能エネルギー銘柄で出遅れのイーレックス(9517)は長期で買い
高圧および低圧電力の小売りや卸売りを主力事業とするイーレックス(9517)を長期で買い推奨としたい。理由は、脱炭素関連として注目される投資テーマの再生可能エネルギー関連銘柄の中にあって、同社は大きな成長を伴いながらも株価が出遅れているからだ。実際、11月12日、私が助言するメルマガ「勝者のポートフォリオ」において同社の買い増しを助言した。
再生可能エネルギーが注目される理由は言うまでもない。世界的に脱炭素社会に向けた取り組みが加速し、日本においても政府や日銀が政策面での支援を強めている。菅前政権において2050年までに温暖化ガスの排出量を実質ゼロにする計画が打ち出され、2030年度までにCO2排出量を2013年度比で46%削減する数値目標を掲げており、その達成に再生可能エネルギーの利用拡大が欠かせないからだ。
イーレックスの株価は関連銘柄のレノバ(9519)と比べて割安?
同社の事業進捗は順調だ。高圧では使用量の大きい大口顧客の開拓、低圧では新規パートナーやWeb直販チャネルによる拡販が進んでいる。バイオマス燃料は木材や枝葉などから作られる生物由来のエネルギー源であり、同社はバイオマス発電所を日本で初めて運転開始したことでも注目されている。現在5基のバイオマス発電所を所有。2019年10月にカンボジアにおける水力発電事業への出資参画を発表、初の水力発電事業が23年度中にスタートする予定だ。
業績も右肩上がりに推移している。2019年3月期は売上高658億円、営業利益47億円、2020年3月期は売上高886億円、営業利益92億円、2021年3月期は売上高1418億円、営業利益157億円となっている。一方、関連銘柄の太陽光発電事業を中心に再生可能エネルギーの開発運営に特化するレノバ(9519)の業績推移を見ると、2019年3月期は売上高141億円、営業利益50億円、2020年3月期は売上高194億円、営業利益71億円、2021年3月期は売上高205億円、営業利益46億円と減益だ。
両社の時価総額を比較するとイーレックスは1598億円(PER24.5倍)に対し、レノバは4375億円(PER85.1倍)と業績で上回っているイーレックスの方が過小評価されている(レノバが過大評価されていると言うべきか)。
今期(2022年3月)は減益予想も、上方修正の可能性が高い
2021年3月期は売上高1418億円(前年同期比+60.1%)、営業利益157億円(同+70.0%)と大幅な増収増益となった。期初計画の売上高958億円、営業利益83億円、そして修正計画の1367億円、営業利益152億円も上回って着地。小売りも卸売りも予想以上の販売量になったことに加えて、自社発電所の順調な稼働による電源調達コストの低減が寄与して収益率も改善した。
2022年3月期の期初計画は売上高1585億円(同+11.7%)、営業利益114億円(同-27.5%)である。引き続き販売電力量は伸びるものの、沖縄中城バイオマス発電所の立ち上げ、成長に向けた新規プロジェクトや積極的なM&Aの推進で減益を見込んでいる。2Q決算では売上高826億円(同+74.8%)、営業利益53億円(同+13.5%)となっており増収増益を維持。経常利益ベースでは進捗率が通期に対して58%と高いため、今期も上方修正の可能性が高い。
今後3年間の目標株価は4600円、バリエーション拡大で5700円も視野に
2014年12月に上場(初値433.7円:分割調整後)して以来、株価はほぼ右肩上がりで今年の8月5日には上場来高値3320円を付けた。8月10日に発表された1Q決算では営業利益11.7億円(同-7.4%)とほぼ計画通りの進捗であったものの典型的な「決算プレイ」が起こり、株価は8月30日には2177円まで34%急落した。その後は上下を繰り返しながらも回復基調にあり、2Qの好決算で投資家に安心感が出てきている。
現在進行中の2022年3月期を最終年度とする3か年の中期経営計画で掲げた目標「売上高1000億円、経常利益100億円(21/3期148億円)」をすでに大きくクリアした。来年度からの中期経営計画「2030ロードマップ」では2025年3月期に売上高2000億円以上、2030年3月期には売上高2500億円以上を掲げている。
2022年3月期終了後に再度中計の見直しがおこなわれるが、2025年3月期前後に営業利益200億円を達成できるかが通過点になるだろう。これをベースに現状のPER24倍を当てはめると、株価は現在の+74%の4600円となり、今後3年間の目標株価として考えている。もしバリュエーションの拡大でPERが30倍にまで膨らめば、5700円まで評価が高まることになる。
(DFR投資助言者 太田忠)
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