バランスが悪い家計は、どこかで無理が生じてお金を貯めにくい
ところが、収入に対して明らかに住居費が高すぎたり、通信費がかさみすぎていたり、やみくもに教育費を使いすぎていたりする、アンバランスな家計の例は多いもの。中には、使いすぎている実感さえもなく、「うち、収入が少ないので貯められないんですよね」と収入のせいにしていたりする人もいたりします。
このような家計を再生させていくときに、私が活用しているのが、世帯の変化に即した「家計の支出の割合」です。
家計の支出の割合は、この連載の第5回でもご紹介しました。復習しておくと、家計の支出の割合とは、"自分の収入を、食費や住居費など、生活に必要な支出に配分する際、目安にすべきバランス"のことです。
大切なお金ですから、もっと有効に使い、そして貯めていかなければなりません。有効に使うということは、"自分の家計にとって最適な支出の割合を把握する"ということです。そこで私は、普段から家計におけるすべての支出の具体的な割合(収入を100%として、それに対し、食費は全体の中の14%、住居費は25%が理想……といった具合)を、参考として提案しています。
それと照らし合わせてみれば、いま自分が何にムダなお金を使っているかがわかり、逆に「ここにはもっと使っていいんだ」ということもよくわかります。
「支出の割合」を使えば、収入が増えなくてもずっと貯蓄できる
以前、この連載で支出の割合をご紹介したときは、単身者、DINKSなど5パターンにざっくりわけてご紹介しました。お忘れの方のために、そのうちの一部を以下に再掲しましょう。これを自分の手取りにあてはめて計算すると、各費目の使っていい理想的な予算が簡単に割り出せます。
この割合は、これまで私が約7000件の家計相談をこなしてきた中で、収入があまり多くなくても上手にやりくりして貯蓄もしっかり出来ている家計のデータを集計し、独自に算出したものです。
実際の家計データに基づいているので実行可能な数値でありますが、もちろん、みなさんがご自身で支出の割合を考えてもOKです。
そのときに注意したいのは、(1)食費を削りすぎないこと(節約というと、真っ先に食費を削る人が多いんです)、(2)小遣いや嗜好品代も必ず確保すること(夫婦ともに小遣いを削る家庭もよく見られますが、貯金生活には多少の潤いが必要)、(3)少しでも毎月必ず貯蓄をすること……などです。
お金をかけるところにはきちんとかけたほうがいい。でも、そうでないところはとことん節約すべきです。この兼ね合いが難しいため、家計再生コンサルティングで支出の割合をお話しすると、相談者の方には非常に好評です。
とはいえ、人によって置かれた環境は異なり、それに応じてお金の使い方は大きく異なるはず。ですから、本当はもっと細かくパターンをわけたほうが、より使いやすいでしょう。そこで、私の最新刊『約7000世帯の家計診断でわかった! ずっと手取り20万円台でも毎月貯金していける一家の家計の「支出の割合」』では、単身者、夫婦二人のDINKS世帯をはじめ、子どもがいる世帯は「小学生未満」「小学生2人と中学生1人」「中学生1人と高校生1人」「高校生1人と大学生1人」といった具合にさらに細かく家族構成を分け、住んでいる地域(都市部か地方か)によっても分類し、全24パターンの支出の割合をご紹介しています。よろしかったら参考にしてみてください。
家族が成長したら、支出の割合もいっしょにステージを変化させていくといいでしょう。例えば、今、自分に該当するのが「子どもが小学生未満の家庭の支出の割合」であっても、子どもが成長して小学生、中学生になれば当然、教育費や食費が増えていくわけですが、そうしたときには、「子どもが小学生の家庭の支出の割合」「子どもが中学生の家庭の支出の割合」といった具合に、参考にする割合をシフトし、支出バランスを調整することで、ずっと黒字の家計を守れるわけです。
書籍のタイトルにもあるように、いまの時代、20代、30代はもちろん、40代、あるいは50代になってもずっと手取りが20万円台のままで増えない家庭も少なくありません。このところよく、企業の賃上げのニュースを耳にしますが、そんな景気のいいことを長期的にいっていられる企業は、ごく一握りに過ぎないでしょう。給料が”劇的に”増える可能性は高いとはいえません。もうしばらく、今の収入を基準にして、家計を考える必要がありそうです。
次回からは、実際に支出の割合を使うとどんな効果が得られるか、ケース別にお話ししていきたいと思います。
(構成/元山夏香)
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