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欧州中央銀行の量的緩和政策に注目

【第349回】 2015年1月12日公開(2025年6月4日更新)
広瀬 隆雄
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【今回のまとめ】
1.欧州のデフレ・リスクが高まっている
2.欧州中央銀行の量的緩和政策に注目が集まっている
3.ギリシャの議会選挙も要注意
4.成長戦略と移民の問題は同根

欧州のデフレ・リスクが焦点に

 新年になってから、世界の投資家の注目が再びヨーロッパへ向いています。

 欧州は、ボンヤリしているとデフレに陥るリスクを抱えています。先週発表されたユーロ圏(EU)の消費者物価指数の速報値は-0.2%(下のグラフの水色)でした。

 この背景には、このところの原油安があります。ユーロ圏の消費者物価指数を構成する要素のうち、11%を占めるエネルギー価格は、12月は-6.3%も急落しました。

欧州中央銀行の量的緩和政策はどうなる?

 欧州中央銀行(ECB)内部ではデフレを避けるため量的緩和政策(QE)をすぐに実施すべきだという意見がある一方で、下がっているのはエネルギー価格だけであり、サービス価格など他の要素の価格は下がっていないとする慎重論もあります。

 このため市場関係者の間では、ECBがQEの発表に際して、市場の期待を裏切るのではないか? という懸念が出ています。

 欧州の国債市場は米国の財務省証券や日本国債に比べてスケールが小さいですし、色々な国の国債が流通しているので、どの国の国債を、どれだけ購入するか? という問題があります。流通残高と国の大きさは、必ずしも一致していません。するとECBが、買いやすい国債から順番に購入するというやり方では「不公平だ」という批判が出る可能性があるのです。

 関係各方面の調整作業が、1月22日に迫った次のECB政策金利会合に間に合わない可能性もあります。先週金曜日に欧米のマーケットが下がったのは、このためです。

ギリシャ議会選挙に注目

 これに加えて1月25日にギリシャで議会選挙があることも事情を複雑にしています。今回の選挙ではツィプラス党首が率いる急進左派連合が第一党になると予想されています。

 なお急進左派連合は欧州連合(EU)脱退を提唱しているのではありません。むしろEU残留を希望すると明言しています。

 急進左派連合はギリシャ救済の際に合意された財政緊縮措置を緩和して欲しいと要求しています。

 実はこの面ではギリシャはかなり努力しています。下は構造的財政収支のグラフです。

 ギリシャの財政は既に黒字化しているわけです。

 つまり急進左派連合の主張は「切詰めるべきところは切詰めたのだから、そろそろ成長に軸足を移した経済運営を許してほしい」ということに他ならないのです。

 もうひとつ彼らが要求している点は、「ECBがQEを発表した場合、ちゃんとギリシャ国債も買ってほしい」ということです。

 ECB内部には「QEで購入する国債はトリプルエー(AAA)格のものに限ろう」というような議論があります。すると量的緩和政策の効果が公平に行き渡らないリスクがあるわけです。

 さて、急進左派連合が第一党になった場合でも、組閣に際しては他政党と連合政権を形成することは避けられないと思います。すると現時点でもかなりマイルドになっている急進左派連合の要求は、選挙後、一層薄められる可能性が強いのです。

 このことからギリシャ議会選挙がそのままギリシャのユーロ脱退につながるようなシナリオは考えにくいと思います。

 私の考えでは急進左派連合の主張は全体的にリーズナブルであり、欧州連合側はその要求を真摯に検討する義務があると思います。

欧州の争点は財政健全化から成長へ

 既に欧州各国の債券利回りは危機的な水準から脱しており、最近ではむしろ「利回りが低すぎる」と考えられています。

 つまり今の水準は各国政府の借金返済能力は申し分ないけれど、逆にデフレ・リスクがあることを示唆する水準なのです。それはもっと踏み込んだ言い方をすれば成長戦略の欠如です。

 欧州は日本同様、少子高齢化の人口動態に晒されています。つまり放置すれば構造的にマイナス成長に陥ってしまうリスクが高いのです。

成長戦略の一環としてのヒトの移動の自由化

 これに対するひとつの回答が、コモン・マーケットと呼ばれるEU経済圏の促進でした。そこでは「ヒト、モノ、カネ」の動きを妨げる障壁を取っ払うことで、スケール・メリットと効率性を出そうという狙いがありました。

 その結果、労働力はEU内を自由に移動できるようになり、一例としてドイツには年間差し引き+40万人もの労働力が流入しています。

 ドイツ政府は戦火を逃れるためにやってきたイスラム系の難民も温かく迎え入れています。自動車産業の城下町であるシュツットガルトやミュンヘンのような工業都市では移民政策は必要不可欠だと考えられているほか、実業界、カトリック教会、プロテスタント教会などはいずれも移民政策支持派です。

 しかしこれに対して伝統的にダイバーシティ(多様化)の欠けている旧東ドイツでは低所得者層を中心に移民が自分の職を奪うのではないかという懸念が強く、イスラム系移民の流入に反対するデモ行進が毎週のように実施されています。

 また先週はフランスのパリでイスラム系過激派がイスラムに対して批判的なメディアを襲撃するという事件も起こりました。

 つまり今、欧州全体を巻き込んでいるヘイト(人種的偏見)の問題と、人口動態に端を発する成長の欠如の問題とは、根っこのところでつながっているのです。

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