「誰もが勝てる投資家になれる」と語る
『儲けの鉄則』著者小泉さんが導き出した、
株式投資に必要な2つの合理性とは？『儲けの鉄則』著者 小泉秀希さんインタビュー（最終回）

小泉 はい、誰でもある程度のレベルには上達するはずです。それは仕事やスポーツと同じです。株式投資だって正しく基本を身につけ経験を積むことである程度のレベルには必ず上達します。もちろん、もともと才能やセンスを持っている人はいますし、短期的には運に左右されることもあるでしょう。それでも中長期的な投資成果は必ずといっていいくらい努力に比例します。

 ただ、投資の世界ではそういうことがあまり広く認識されていなくて、基本を身につけないままいい加減にやって失敗している人がとても多い。そうした人たちは、株式市場が上昇トレンドの時にはベテラン投資家に負けないくらい利益が取れたりしますが、下げトレンドになった時に致命的な損失を追って、それまでの利益をすべて吐き出してしまうんです。

 逆に言えば、きちんと基本を身につけ、波に飲み込まれないようにさえすれば結果は出ます。それには、あらゆる時代を生き抜き、成功を収めた名投資家たちから学ぶのが一番だと思うんです。

編集部 今回の本では12人の名投資家が取り上げられています。それぞれに哲学があり、十二人十二様ではありましたが、小泉さんからご覧になって共通項はありましたか？

小泉 ありました。それは「合理的な考え方をしている」という点ですね。名投資家たちの「合理的な考え方」というのは、

（1）テールリスクを避ける
（2）その上で確率的に有利な投資を重ねる

ということです。「テールリスク」というのは、確率は小さいけど、一度それに陥ると致命的になるというリスクです。

 例えば、自動車の運転では事故を起こさないように、スピードが出過ぎないようにしますね。事故が起こる確率はごくわずかですが、ひとたび事故を起こした時のことを考えれば、慎重な運転を続けるべきという結論になります。株式投資の場合にも、不慮の大災害や事故など、最悪の事態を想定して常にリスク管理を心がける必要があります。

 「確率的に有利」というのは、高い勝率が見込めること、「損失リスクより期待リターンが大きい」ということです。例えば「勝つ見込みは7割くらい。10万円の投資で失敗した場合の損失の見込みは1万円、うまく行った場合の利益は5万円」というようなチャンスです。

 それでもリスクはあるのですが、ごく限られた損失に対して成功した場合の利益は大きい。運悪く1回の投資で損することはあっても、こうした有利な選択を続けていけばトータルでは利益を重ねることができる。あとは、こうした有利な選択肢をいかに多く見つけるか。これが投資で成功するための最大のコツです。名投資家はそこに長けており、そうしたチャンスを逃しません。

編集部 これを読んだらすぐに結果が出る、というわけでもありませんよね？

小泉 ええ、もちろん。ゴルフでもすごくいいコーチについて、正しい理論とフォームを教えてもらうのは上達の近道です。しかし、実際にそのフォームが身について、実戦で使えるようになるにはそれなりの時間がかかるでしょう。また、かかってしかるべきだと思うんです。

 でも、株は死ぬまでできますし、チャンスは必ず来ます。ダメなときも来ます。何年かに1回は、バカみたいに儲かる相場もきます。リーマンショックのときに潤沢な現金があれば、そしてそれを投資に使える知恵があれば、どれだけ儲かったか。ダメなときはダメで「そういうときもあるのだ」と思って勉強しながら待つ。それは大事なことです。

 バフェットは「投資は頭の良さじゃない、合理性だ」と言っています。もちろんバフェットはとんでもなく頭がいいと思いますけど、その言葉はその通りだと思うんです。どこで満足するかは人それぞれでしょうけど、合理的な考え方さえ身につけることができれば、資金にして数千万円から数億円に達するくらいまで、平均して年2－3割ずつ増やしていくことは全然不可能ではないと私は思っています。

編集部 それが失敗して1割だって恩の字です。

小泉 ですよね。あとは自己資金を超えて買わないとか、1銘柄に投入する金額は資金の2割以内にするとか、損切のルールを徹底して厳守するとかのリスク管理をする。銘柄の選び方やタイミングはこの本にある中から自分の腹に落ちるものを選んでもらい継続してもらえればいい。上達するためにはどうしても試行錯誤の期間は必要で私は7年くらいかかってしまいました。しかし、この本を読んでいただいた皆さんは、その試行錯誤期間を大幅に短縮して効率よく上達することができると思います。

 すでに投資経験のある方は、この本で考えを整理していただけば即効薬的に効いて投資の腕がグンと上がるではないかと思います。本をまとめた私自身がそうでした。自分の投資にとってこの本がとても役立ちました。

 とにもかくにも、名投資家たちの考え方の骨格は紹介できたと思います。できるだけ細かいノウハウも、使えそうなものはこの本に入れました。自分の経験から「これはこういうことじゃないか」「こう使ったらいいんじゃないか」という部分も、詳しい方からのツッコミを覚悟の上でかなり噛み砕いて入れました。

 この本で紹介した名投資家には、一人として簡単な一生を過ごした人はいません。時代に、相場に、もがき苦しみ、試行錯誤をする中で何かを見つけ、磨き上げ貫いて、道を究めた人たちです。ですから、読んでいただければ、何かしら得るものはあるはずです。ぜひ手に取っていただいて、ご自身の投資に生かしていただけたらと思います。（了）

『伝説の名投資家12人に学ぶ儲けの鉄則』
日本株で勝つためにすべきこと、してはいけないこと

一代で5兆円もの資産を築いた現役最強の投資家の「質の高い成長株」の探し方とは？ 全米ナンバーワンのファンドマネージャーがやっていた「2分間の訓練」とは？成長株の神がたどり着いた「CAN‐SLIM法」とは？ 割安株、長期成長株、急成長大化け株、10倍株、歴史的な株価爆発…。一冊で、あらゆる株・局面に使える戦略が一気にわかる！ ピーター・リンチ、ウォーレン・バフェット、ベンジャミン・グレアム、フィリップ・フィッシャー、ジョージ・ソロス、ジム・ロジャーズ、是川銀蔵、ジョン・メイナード・ケインズ、ジョン・テンプルトン、マーティン・ツバイク、ジョン・ネフが登場。12人の名投資家に学ぶ日本株で勝つ方法。実践で使える手法は巨匠に学べ！電子版（kindle、kobo）も発売中。

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