このたび、ダイヤモンド社より発売された『株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書』の著者、足立武志さんは自身でも投資をする公認会計士。以前にも『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書』を発売しており、今回はその姉妹版にあたります。足立さんは常々「個人投資家がプロと同じ土俵で戦うためには株価チャートを用いた分析が必要」と説いています。そこで今回は、個人投資家がアベノミクス相場で満足のいく投資成果をあげるためにはどうすればよいのか、そのヒントを4回にわたってお伝えします。
多くの個人投資家が儲かったのははじめの半年間だけ
2012年11月中旬のスタートから2年8カ月が過ぎようとしているアベノミクス相場。この間、9000円割れだった日経平均株価は2万円を突破、個別銘柄に目を向ければ安値から5倍、10倍に上昇したものもたくさんあります。
こうした状況から、さぞ個人投資家もアベノミクス相場の恩恵を受けているのかといえば、決してそうではないのが現実です。
確かに、アベノミクス相場が始まってからの半年間は全面高の相場となり、株さえ持っていれば誰でも大きく利益を得ることができました。しかし、その後はいわゆる二極化相場となり、銘柄によって株価の動きが大きく異なっています。
ファンダメンタルが株価に素直に反映される相場
今の日本株は、企業のファンダメンタルが株価に素直に反映される相場になっています。その中でも特に、増収増益が毎年続いているようないわゆる「成長株」が高い人気を集めていて、株価も大きく上昇しています。
そのため、しっかりとファンダメンタル分析を行って銘柄選びをしている「プロ投資家」はよい運用成績を残すことができています。
一方、個人投資家に人気の中低位株や新興市場銘柄の株価は冴えない動きが続いています。そのため、日経平均株価の2万円超えをよそに、個人投資家の投資成績は伸び悩んでいるのです。
現に、個人投資家の信用取引の含み損益を示す信用評価損益率は、今年に入ってからマイナス6%~マイナス10%で推移しています。2013年5月にはプラス4%近くまで上昇した(プラスになることはめったにありません)ことを考えると、今は個人投資家にとってあまり儲からない相場であるといえます。
信用評価損益率は個人投資家の好不調の実態を表します。日経平均株価が年初から20%も上昇しているのに個人投資家の損益はパッとしない、これが現在の実態なのです。
利益を伸ばすことが苦手な個人投資家
個人投資家がアベノミクス相場にうまく乗れていない大きな理由がもう1つあります。それは、利益が出ている保有株を持ち続けることができないという点です。
多くの個人投資家は、持っている株が買値より10%~20%ほど上昇すると、売って利益を確定してしまう傾向にあるようです。特に損切りができない個人投資家にこの傾向が強いように感じます。そのまま持ち続けた結果、買値さえも下回って塩漬け株になってしまうという恐怖心から、利益のあるうちに早目に売っておこうという心理状態になるのでしょう。
確かに、アベノミクス相場が始まる前の長期下落相場であれば、株価が少し上がってもすぐにもとに戻ってしまうことが多かったため、こうした手法も有効ではありました。
しかし、アベノミクス相場が始まり、相場の質がそれまでとは一変していることに個人投資家は早く気づかなければなりません。そうでなければ、せっかく安く買えた株を、10%~20%の利益で満足して売ってしまうことになります。そして、売った後に株価が5倍、10倍に上昇するのを唇をかんで眺めるだけになってしまいかねません。
アベノミクス相場で利益を得るための2つのポイント
このように、アベノミクス相場で満足のいく利益を得るためには「増収増益が続いているような、ファンダメンタルが良好な銘柄を選ぶ」「株価の上昇トレンドが続いている限り売らずに保有を続けて利益を伸ばす」という2つが必要となります。
簡単に説明すると、前者は例えば会社四季報をみて過去3年間毎年10%以上増収増益を続けていて、来期予想も同様である銘柄を投資候補として選ぶなどです。後者は、日足チャートで25日移動平均線が上向きかつ株価が25日移動平均線より上にある間は持ち株の保有を続けるというものです。そして、この2つを組み合わせることで、より利益を大きく伸ばすことができます。
前者について詳しくは拙著『株を買うなら最低限知っておきたい ファンダメンタル投資の教科書』を、後者について詳しくは『株を買うなら最低限知っておきたい 株価チャートの教科書』をご覧ください。それぞれ具体的な銘柄をあげて解説しています。また、上にあげたのは基本的な方法ですが、書籍ではさらに応用的な戦略も紹介しています。
次回は、個人投資家が行うファンダメンタル分析の実態とその問題点について、プロ投資家と比較する形でお話したいと思います。
>>>コラムの第2回はこちらから
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