オランダ選挙はサプライズもなく無事通過し
反EUへ流れるリスクは減退
先週、オランダ第二院の選挙が実施され、穏健なマルク・ルッテ党首が率いる自由民主国民党(VVD)が最多議席を確保しました。第二院は米国の下院に相当します。
反イスラム、反EUを掲げたヘルト・ウィルダース率いる自由党(PVV)の獲得議席数は、20(定数は150)にとどまりました。
つまり、オランダの政治がポピュリズムやアンチEUへ流れるリスクは大きく後退したのです。
次の注目イベントは
来月に控えたフランス大統領選挙
オランダで反EU勢力が敗退したことは、4月23日に控えたフランス大統領選挙第1回投票にも間接的に影響を及ぼすと思われます。
フランスの選挙では、反EUを掲げる極右政党、国民戦線(FN)のマリーヌ・ル・ペンの動きが注目されます。ル・ペンは「私が大統領になったらフランスのEU脱退の是非を問う国民投票を実施する」と公約しています。
去年、英国で同様の国民投票が実施された際は、予想に反し、EU脱退派が勝利し、市場参加者を驚かせました。フランスで同様の事が起きれば、EUは崩壊の危機に瀕します。
ただしフランスの有権者は、英国の有権者よりEU離脱に乗り気ではありません。従って、仮にフランスでEU離脱を巡る国民投票が実施されたとしても、離脱派が勝利する可能性は低いと思います。
フランスの有権者は、
第1回投票と第2回投票で傾向が異なる
フランスの大統領選挙は第1回投票と第2回投票の二段構えになっています。もし第1回投票である候補者が過半数の票を獲得した場合、その人が大統領に選ばれます。しかし過半数を獲得する候補者が居なかった場合、上位2名による決選投票に持ち込まれます。決選投票の日取りは5月7日です。
フランスの有権者は、第1回投票では政治の現状への不満を表明する、いわゆるプロテスト・ボートを投じる傾向があります。つまり、わざと泡沫候補や下位政党を支持することで、支配政党に対し不満のメッセージを送るわけです。
しかし第2回投票では、とたんに保守的になり、無難な候補者に票を入れることが多いです。
もし、今回もこのパターンが踏襲されるのであれば、第1回投票ではマリーヌ・ル・ペンが善戦し、第2回投票では本命の保守的候補が勝つことになるでしょう。
今回の選挙で本命と目されているのは、無所属のエマニュエル・マクロンです。マクロンはパリ政治学院、国立行政学院を卒業後、会計監査官、投資銀行ロスチャイルド勤務、経済産業デジタル大臣を歴任しています。
アメリカの影に隠れ
欧州経済も着実に改善へ向かう
ところで、アメリカ経済の好調の陰に隠れて余り注目されていないのですが、欧州の経済も、このところ着実に改善しつつあります。下はユーロ圏の失業率です。
最近のユーロ安で、欧州大陸のメーカーはずいぶん助かっています。そのことは、製造業購買担当者指数にも表れています。
このように、欧州経済はじわじわと回復に向かっているのですが、フランス大統領選挙に代表されるイベント・リスクがあるので、投資家は動きにくかったというわけです。
フランス大統領選では
第1回投票直後の急落時が狙い目
そこで投資のアイデアですが、もし第1回投票でマリーヌ・ル・ペンが善戦すれば欧州株は急落する可能性があります。しかし第2回投票ではル・ペンは勝てないと思います。すると、第1回投票の結果に驚いた投資家が投げ売りしたところが絶好の買い場になる可能性があります。
具体的な投資対象ですが、ウィズダムツリー欧州株米ドルヘッジ付ファンド(ティッカーシンボル:HEDJ)というETF(上場型株式投信)を紹介したいと思います。このETFは、82ある欧州へ投資するETFの中で、2番目に純資産が大きいです。
純資産では、バンガードFTSEヨーロッパETF(ティッカーシンボル:VGK)のほうが大きいのですが、そちらのETFは英国(30%)とスイス(14%)という、ユーロゾーンではない国が占める割合が大きいので、ユーロ圏の回復に投資するという文脈では適切ではないと思います。
その点、ウィズダムツリー欧州株米ドルヘッジ付ファンドなら、ユーロ圏だけですので余計なものが混じっていません。
【今週のまとめ】
政治リスク低下で、欧州株が再評価される可能性あり
オランダ下院選挙では与党が勝ちました。オランダで反EU勢力が敗退したことにより、4月23日に控えたフランス大統領選挙第1回投票にも影響を及ぼすでしょう。
フランス大統領選挙第1回投票では反EUを掲げるマリーヌ・ル・ペンが勝利する可能性があります。しかし、決選投票で彼女は負けると思うので、第1回投票の結果に驚き、投資家が投げ売りしたところが欧州株の買い場になります。
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