ダイヤモンド編集部は12月6日から全8回にわたって特集『みずほ 退場宣告』を展開した。それに合わせて、「週刊ダイヤモンド」が過去20年にわたって伝えてきたみずほの関連特集・レポートなどから100ページ超に及ぶ記事を厳選し、特集『みずほ「言われたことしかしない銀行」の真相』(全41回)に再編集した。みずほが、不祥事を何度繰り返しても生まれ変われず、金融庁に「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」と企業文化を酷評されるに至ったのはなぜか。その真因をえぐるために、今こそ読むべき、みずほの歴史的転換点を描いた記事をお届けする。

【プロローグ】
“前世”から旧行闘争は続いていた
呪縛に取りつかれた銀行

 みずほの前身3行のうちの第一勧業銀行が起こした総会屋への利益供与事件。実は、第一銀行と日本勧業銀行の対等合併で誕生した第一勧銀はこの時、後のみずほでも大問題を引き起こした「たすき掛け人事・縦割り組織化」で傷口を広げてしまった。

#1『みずほの「たすき掛け人事・縦割り組織」問題は、前身の第一勧銀から続く呪縛だった』

【第1章】
「旧行意識を引きずらない」はずが…
3行統合の不協和音

 旧富士銀行、旧第一勧業銀行、旧日本興業銀行による3行統合。みずほは世界に冠たる金融グループを標榜しつつも、船出前後から旧3行の不協和音が絶えなかった。「たすきがけ人事などはいっさいやらず」「3行の頭取同士で、過去はいっさい引きずらないと約束している――。当時の旧3行の頭取が誓った言葉は、みずほの現状を見ると、あまりに虚しく響く。

#2『みずほ瓦解の必然、3行合併前夜の誓い「たすき掛け人事、過去に執着は一切なし」の虚無』

#3『みずほ「世界4位・収益力1兆円」の夢が崩壊した理由、3行合併の急所は予見されていた』

#4『「私は絶対に旧行の利益代表にならない」みずほ旧3行頭取の合併前夜インタビュー【再録】』

#5『【みずほ合併交渉秘録】富士銀に踏み絵を迫り、興銀を待ち続けた一勧の深謀遠慮』

#6『【みずほ合併交渉秘録】一勧との2行合併を望んだ興銀と富士が、3行案に折れた全経緯』

#7『みずほ誕生直後から旧3行が主導権争いに明け暮れた理由、「1年半の空白」で生じた悲劇』

#8『「銀行都合の再編でそんな勝手が許されるのか」みずほ“2バンク体制”移行前夜の混乱劇』

【第2章】
みずほ誕生直後のシステム障害
旧3行の内部抗争で起きた必然の不祥事

 みずほが2行体制に移行したまさに初日、大規模なシステム障害を引き起こす。テストや準備の不足もさることながら、根幹には旧3行の足の引っ張り合いがあった。事後対応の不手際が利用者の怒りを増幅し、みずほブランドが大きく傷つくことになる。

#9『みずほ最初のシステム障害後の混迷…お詫び行脚に人海戦術、決済処理で「顧客差別」疑惑も』

#10『同じ“みずほ”になったのに年下の部下より給料が低い!合併直後に旧3行「収入格差」が発覚』

#11『みずほ最初のシステム障害後に損害賠償請求の嵐、金利引き下げ・手数料減免要求も』

#12『「実害はない?ふざけるな!」みずほ最初のシステム障害で中小企業経営者が憤怒の抗議』

#13『みずほは“合併の2本柱”を両方しくじった、最初のシステム障害を招いた「3頭体制」の末路』

#14『みずほのシステム障害で巨大銀行「3大地獄」浮き彫りに、旧3行間で責任転嫁の泥仕合』

#15『銀行界のシステム障害事件簿、邦銀が「100億円の巨額損失」を食らった例も』

#16『みずほ最初のシステム障害で、金融庁が監督責任を問われて講じた批判回避策とは』

【第3章】
システム障害で取締役9人が総退陣しても
消え去らない「人事抗争のDNA」

 行内融和を誓って発足したはずが、人事抗争がやむことはなかった。知恵の帰結で3行の均衡を図っても、2対1に重心を移すたびに、争いは激しさを増した。もはやDNAとして刷り込まれ、外ではなく内に向かって闘争を続けたみずほは活力を失っていく。

#17『みずほが「キングギドラ」と呼ばれた理由、旧行意識でポストが“3の倍数”だらけ』

#18『みずほが最初のシステム障害で「取締役9人総退陣」したのに呪縛を断ち切れなかった理由』

#19『みずほ銀行、システム障害の反省を2年で忘却…唐突すぎる頭取交代で旧3行の権力闘争再燃』

#20『みずほ旧3行の内紛によるリークを疑われた、「金融庁の検査内容流出」事件の闇』

#21『みずほ2度目のシステム障害に至る人事史、頭取候補の続々放逐に旧3行「超絶バランス人事」』

#22『みずほFG社長「旧行意識はもはやない」の空虚、2度目のシステム障害のはるか前に宣言』

#23『みずほが金融危機後に3トップを一斉刷新、新社長・頭取3人が語った勝機と弱点とは?』

【第4章】
「万年3位」定着どころか
3メガバンク脱落の危機

 メガバンクを幾度となく襲った国有化危機。みずほは力業で顧客などから1兆円をかき集めて何とか乗り切ったが、財務の脆弱さは変わらぬまま。旧UFJ銀行の再編で3メガバンク体制になると、みずほが次の脱落候補と目されるようになる。

#24『みずほ「悪名高き1兆円増資」の舞台裏、将来に禍根を残したのが当然の理由』

#25『みずほが「次の国有化銀行」危機にあった日、深刻財務を5つのキーワードで読み解く』

#26『「みずほがつぶれる時は日本がつぶれる時」みずほ1兆円増資に応じた取引先の本音と打算』

#27『みずほの市場評価が、かつての復活時代に「三菱を上回っていた」理由』

#28『みずほ、過去の復活時代に2人の頭取が語った「リテールのプロを育成」「投資銀行業務を磨く」』

#29『みずほが金融危機後に3メガ中で劣後、不振深刻化を不安視された2つの理由』

#30『「みずほ銀ショック」の内幕、問題企業の倒産を加速したみずほの“融資姿勢一変”の理由』

#31『みずほ「奉加帳方式1兆円増資」の呪縛で、6000億円の追加増資を迫られた皮肉な事情』

#32『「りそなに抜かれた!」みずほの“3メガバンク脱落危機”が極まった泥沼の舞台裏』

【第5章】
東日本大震災直後に2度目のシステム障害
旧行の“巣窟”2バンク体制の解体

 個人や法人、企業規模によって2バンク体制を取ってきたみずほ。持ち株会社も併せて三つの母体が旧行の“巣窟”となってきた。2度目のシステム障害を契機についに1行体制への移行を余儀なくされる。はたして、長年の悪弊をどう打ち破るのか、みずほに注がれる視線はまだ厳しい。

#33『みずほが8000億円増資しても会長3人が退任しても、袋小路にはまり込んだ苦しい事情』

#34『みずほの3.11直後2度目の大規模システム障害は必然、前回の教訓を生かせなかった末路』

#35『みずほが「2バンク」の看板を下ろした日、3行合併後の“失われた10年”の罪深さ』

#36『みずほ凋落「3つのアキレス腱」の根深さ、1バンク化でも届かない“最強みずほ”の理想像』

#37『みずほ「旧行意識払拭」を狙った人事が、3.11直後のシステム障害で傷口を広げた皮肉』

【第6章】
暴力団融資問題でも顔を見せた
「言われたことしかしない銀行」

 再編間もないみずほを襲った暴力団融資問題。対応が後手に回り、隠蔽疑惑も浮上した。みずほは本当に変われるのか、最後の試金石になる。

#38『みずほ暴力団融資問題も根底に「旧行意識」、隠蔽疑惑と現場の怒りを招いた会見の闇深さ』

#39『みずほの暴力団融資が炎上した遠因は「地銀」にある?さらなる問題融資の疑念も浮上』

#40『みずほの「人事暗黒史」、3行対等合併の悪平等と想定外のトップ人事が生んだ呪縛』

#41 Coming Soon

【エピローグ】
「言われたことしかしない銀行」の烙印
みずほ退場宣告の危機

「言うべきことを言わない、言われたことだけしかしない」。システム障害を繰り返したみずほフィナンシャルグループのガバナンス上の問題の「真因」として、金融庁が放った言葉には最大級の皮肉が込められていた。だがみずほは、これまで2度の大規模システム障害や反社会的勢力との取引問題を度重ねて引き起こした反省から、むしろ他のメガバンクより改革を先駆けてきた。だからこそ、再び「ガバナンス不全」と糾弾されるに至った事態は深刻だ。みずほの歯車は、どこで狂いが生じたのか。今、変わらなければ、みずほはいよいよ顧客からの信頼を失い、銀行業界からの「退場」を宣告されてしまう。特集『みずほ 退場宣告』で、全8回にわたり、その問題点を追求した。

INDEX『みずほが銀行業界「退場宣告」の危機、改革先進のはずが“ガバナンス不全“の烙印の深刻』

#1『みずほ10年改革に“2つの大誤算”、「言われたことしかしない」と金融庁に皮肉られた真の理由』

#2『みずほFG次期トップ候補5人を大胆予想!3条件クリアの「本命2人・若返り案2人・大穴1人」』

#3『みずほに広がる「悔恨の念」、なぜシステム部門の人員削減を拒めなかったのか』

#4『みずほ内部闘争「無限ループ」の壮絶、1バンク制移行直後から旧行でポスト争いの不毛』

#5『みずほ「佐藤1頭時代」の経営改革が生んだ、3度目のシステム障害の温床とは?』

#6『みずほ「経営トップ総退陣」は2001年にも、繰り返す戦略なき人事すげ替えの末路』

#7『みずほが銀・信・証の大企業営業を同時解体した理由、企業の「みずほ離れ」阻止へ正念場』

#8『みずほ社外取がトップ解任を最後まで迷った理由、社長が営業店に残した「劇薬」の正体』

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