FP花輪陽子のシンガポール移住日記
【第35回】 2018年7月12日 花輪陽子

シンガポールは、日本より少子高齢化が深刻なのに、
なぜ経済成長率が高いのか? 外国人労働者に家事を
任せて生産性を上げるなど、日本が見習うべき点も!

シンガポールの少子高齢化問題は
実は日本よりもずっと深刻化している!

 ファイナンシャル・プランナーの花輪陽子です。

 いま私が住んでいるシンガポールでは、日本と同じように「少子高齢化」が社会問題となっています。国連が発表している「World Populaton prospects: The 2015 Revision」によると、国の総人口に占める「60歳以上の人」の割合は、2015年時点で日本が33.1%、シンガポールが17.9%ですが、なんと2050年には、日本が42.5%、シンガポール40.4%になると予想されています。これを見ると、シンガポールは日本よりも急速に高齢化が進む見通しだということがわかります。

 なお、シンガポールの合計特殊出生率は1.24(2015年時点)。日本は1.45(2015年時点)なので、少子化問題もシンガポールのほうが深刻なのです。

 しかし、シンガポールはそれでも順調に経済成長を続けています。2017年の経済成長率(実質成長率)は、日本が1.6%だったのに対し、シンガポールは2倍以上の3.6%でした。

 シンガポールが経済成長を続けられる一因として、外国人労働者が多いことが挙げられます。人口が少ないシンガポールは、かなり前から外国人労働者を積極的に受け入れ、労働力をがっちり確保してきたのです。

 2017年6月時点で、シンガポールの人口は約561万人ですが、そのうちシンガポール人・永住者は397万人。ということは、残りの約160万人が外国人です。また、永住者の中にも日本人などの外国人が多数含まれているので、いかに多くの外国人がシンガポールにいるかがわかります。

シンガポールでは、外国人の家事労働者に
家事や子守、介護などを任せるのが一般的

 シンガポール政府は、建築業、製造業、サービス業(外国人家事労働者など)に従事する一般の労働者から、中間管理職、専門技術者、研究者、弁護士、医師、会計士、IT系人材などの高技術労働者、富裕層に至るまで、国の経済成長に貢献する人材を戦略的に確保する政策を採っています。

シンガポールでは、このようにベビーシッターが子守をする姿をよく見かけます。シンガポールでは、ベビーシッターが子守をする姿をよく見かけます。
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 特に「外国人家事労働者」が多いのが特徴であり、これが日本とは異なる部分です。外国人家事労働者には、家事のみならず、子守や介護などを任せることもできるので、働き盛りの世代が育児や介護で働けなくなる、といった問題を避けることができます。

 また、デリバリーサービス、清掃などのスタッフも多数揃っているので、中流以上の家庭となると、買い物、掃除などは徹底してアウトソーシングし、移動は安いタクシーを活用して時短に努め、時間を有効活用しながら生産活動に注力する傾向が強いです。

 一方の日本は、2018年4月時点で有効求人倍率が1.59倍となり、慢性的に人手不足の状態が続いています。今後、少子高齢化がさらに進めば、すでに人手が不足している介護や医療の現場などを筆頭に、さまざまな分野で人手不足が深刻化することは間違いありません。

日本でも「留学生30万人計画」などの政策により、
在留外国人の人数は加速度的に増加している

 ですが、もちろん日本もただ手をこまねいているだけではありません。シンガポールと同様に、外国人の労働力の確保を徐々に進めてきています。

 最近、私は久しぶりに日本に一時帰国をしていました。そのときに印象的だったのは、外国人の姿が増えていたことです。しかも、明らかに観光客ではない外国人が増えています。身近なところだと、たとえばコンビニのスタッフなど、外国人の方が増えたという印象を持っている人も多いのではないでしょうか。

 内閣府は、「毎年20万人の移民を受け入れつつ、合計特殊出生率が人口を維持できる水準に回復すれば、今後100年間は人口の大幅減を避けられる」という試算を出しています(2014年)。この展望の下に規制緩和などを実施することで、少しずつ在留外国人数は増えてきています。

 2017年末の在留外国人数は256万1848人で、前年末に比べ17万9026人(7.5%)増加し、過去最高になりました。256万1848人の内訳は、永住者29.2%、特別永住者12.9%、留学12.2%、技能実習10.7%、技術・人文知識・国際業務7.4%、高度専門職0.3%などです。

 政府は「留学生30万人計画」を推進していますが、「留学生」の伸び率は前期比12.3%増、日本人の労働力不足が著しい分野を外国人労働者で解消する目的で設けた「技能実習」は、前期比で20%増と、ともに大幅に伸びました。

 政府は、留学生たちが卒業後に日本で定職に就き、労働力となってくれることを期待しています。また、最長5年間の技能実習を終了した外国人には、さらに最長で5年間就労できる在留資格ができる、というルールも設けられました。政府はこのようにあの手この手を使って、外国人労働者の数をさらに増やしていこうと計画しています。

 こうした計画は、日本の未来を占ううえで、非常に大きな意味を持ちます。町に高齢者ばかりがあふれて、どの業界も人手不足という恐ろしい状況を打破するには、どうしても外国人労働者に頼っていくことが必要です。そのため、前述の「留学生30万人計画」がうまくいくか否かがカギになるのです。

移民が増加してもシンガポールの治安がいい背景には、
外国人労働者への厳しい規制が存在している

 外国人労働者の増加というと、治安の面を心配する方も多いかもしれません。シンガポールは凶悪事件の発生件数が少ない、治安がいい国ですが、あれだけ移民が多いのに良好な治安を維持できている背景には、さまざまな厳しい法律や規制があります。

 例えば、殺人や銃器の発砲、多量の麻薬所持といった禁を犯すと死刑になります。また、不法入国・不法滞在もむち打ちの厳罰に処されます。さらに、外国人労働者を対象とした規制には、驚くようなものも多くあります。たとえば女性の外国人ヘルパーは、なんと妊娠したら国に強制送還されます。工事現場のスタッフも怪我をして働けなくなったら、国に帰るしかありません。このような、日本では考えられない徹底した数多くの規制が、治安維持に貢献しているのです。

 しかし、シンガポールは外国人労働者に厳しい法律や規制を用意する一方で、不慣れな外国人労働者に対しては「ブロークンイングリッシュでOK」という大らかな風潮があります。そのため、言語やマナーが完璧ではない外国人労働者でも働きやすい環境が整っているのです。

 同じく少子高齢化という壁に直面しているものの、国の規模や地理、歴史的な背景などが大きく異なるので、日本がシンガポールを完全にマネするというのは難しいでしょう。ですが、法律などの面で外国人労働者を受け入れる準備をしつつ、日本の企業や国民は外国人労働者に対して、もう少し寛容さを持って接するなど、同じく少子高齢化の進む日本がシンガポールに学べることはたくさんあるのではないでしょうか。