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不動産投資では法人を設立したほうがいいの?物件購入時のキャッシャフローの目安とは?

2022年5月31日公開(2022年5月31日更新)
八木 エミリー
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 私は2015年に不動産投資をはじめたときは「個人」として不動産を所有していました。

 翌年に3棟目を買ってからは、「法人」として不動産を所有。いまでは法人として5棟の物件を所有して、黒字決算を続けています。法人化した理由は明確で、法人名義で不動産収入を確定申告すると、個人でもその信用を元に物件を買い増すことが可能だからです。今回は、不動産投資における法人化についてお話をしていきます。

Photo :artswai / PIXTA(ピクスタ)

個人・法人両方で不動産を所有するのがよい

 不動産投資においては、個人・法人と両方の柱を持っていたほうが資金繰りでのメリットが大きいです。出産や子育てなどで、仕事を一時中断しなければならなくなっても、問題がないように備えることができます(2021年2月、私は第1子を出産しました)。

 女性の場合、結婚・出産・育児などでライフスタイルが大きく変わる可能性があるので、不動産投資はやりにくいと考えている人がいるかもしれません。実際、2棟目の新築木造アパートを購入したときに金融機関の融資担当者から、「結婚しても仕事を続けるんですか?」「子どもが生まれても仕事を続けるんですか?」「どんな資格を持っていますか?」と質問されました。

 「結婚や出産で仕事を辞めてしまったら、不動産賃貸業がうまく回らなかったときに返済できなくなるかもしれない」という懸念が金融機関にあったのでしょう。そういったリスクを払拭するには、法人化して、法人の属性で不動産投資を継続できるように資産形成をすればいいのです。

 個人と法人の不動産投資の違いで、もう1つ忘れてはならないのが、利用できる融資の違い。

 融資を受けて物件を買う場合、「アパート・マンション(アパマン)ローン」か「プロパー融資(自前融資)」を利用することになります。比較的審査が通りやすく個人でも借りやすいのは、アパマンローンのほうです。その名の通り、アパートやマンションなどの賃貸用物件のオーナーを対象とした金融商品ですが、金利が割高に設定されているケースがほとんど。

 一方の「プロパー融資」は信用保証協会をはさまず、金融機関が貸付先の信用度を独自に見極めて、自らリスクをとって直接実行する融資です。アパマンローンに比べて審査が厳しく審査期間が長いものの、条件が見合えばそのぶん有利な金利で、融資枠も大きくなるというメリットがあります。それだけに、金融機関から見て“上顧客”として扱われるような取引ができる事業者や法人でないと、基本的にプロパー融資は受けられません。

 私が2017年に6棟目に買った2億円の物件と、2019年に7棟目に買った1億3,000万円の物件は、プロパー融資を受けることができました。しかし、プロパー融資はオーナーの属性が高い場合や事業者や法人として3期分黒字決算しているなどの条件がよくないと、融資を受けるのは難しいと思います。

 40歳までに資産100億円を目指している私にとっては、プロパー融資のほうが圧倒的に有利です。今後もプロパー融資を利用できるように堅実に黒字決算を継続していきたいと思っています。

法人化するなら「株式会社」? それとも「合同会社」?

 私のように不動産賃貸業を拡大させていきたいなら、法人化したほうがメリットは大きいでしょう。会社を設立するときには、「株式会社」「合同会社」「合資会社」「合名会社」から選択することになりますが、株式会社でなくてもいいです。
合同会社は比較的新しく設けられた形態で、出資額は1円からはじめることができます。株式会社を設立するには、「収入印紙代」「定款認証の手数料」「登録免許税」などの費用が、最低でも20万円程度が必要です。

 けれども、合同会社なら行政書士など専門家の報酬を除けば「登録免許税」の6万円程度で済みます。「合同会社」も立派な法人ですし、節税効果も株式会社と同じように認められています。私はクラウド会計サービス「freee」を使って、合同会社を設立しました。必要な書類作成も無料でできますし、オプションで法務局への書類提出も代行をしてもらえます。とても簡単に会社を設立できるので、法人化したい人には合同会社がおすすめです。

【ポイント:クラウド会計サービスで合同会社を設立してみては?】

 金融機関から融資を受けるときは、「返済期間」と「返済比率」のバランスをよく考える必要があります。返済比率とは、収入に占める返済額の割合のこと。

 借入金額が同じなら、返済期間が長ければ長いほど毎月の返済額は少なくなり、逆に短くなればなるほど毎月の返済額が多くなるのです。返済比率は低いほど健全度は高いですが、目指すべき返済比率は40~50%程度が目安とされています。私自身は、借入金返済以外にかかる運営経費や空室が出た場合の収益減少のリスクに備えるため、返済比率は30~50%を目安にしました。

 仮に満室時の家賃収入が月100万円(年1,200万円)の1棟アパートがあるとして、返済比率が30%と倍の60%で違いを比べてみましょう。前提条件を空室率10%・諸経費率20%として返済比率30%の場合は、最終的なキャッシュフローは月40万円、返済比率60%の場合は月10万円です。「月10万円入るだけでも十分」という人でも、変動金利で契約した場合、途中で金利が上がる可能性もあります。
さらに空室が10%を超えてしまったり、諸経費が突発的に増えたりするなど、さまざまなリスクに対処できなくなることも考えられるでしょう。

返済比率を計算しておく

例:家賃収入が月100万円で返済額が月40万円の場合

毎月の返済額/毎月の家賃収入(満室時)×100=返済比率(%)

40万円/100万円=40% ←これが返済比率

キャッシュフローはできれば3%以上ほしい

 なかには、年収数千万円クラスと属性が高い人で、「節税対策で不動産を買うのだから赤字になっても問題ない」という人がいるかもしれません。それはそれで個人の考え方なので自由です。けれども、平均的な会社員が節税目的で安易に返済期間を短くして不動産を購入すると、節税どころか自分の貯蓄からの持ち出しのほうが増えてしまう可能性があります。そのため、返済比率を高く設定する場合は、よほど条件のよい優良物件でない限り厳しい事態を招きやすくなるでしょう。

 そういったリスクを避けるためには、物件を購入する際の「返済シミュレーション」で、キャッシュフローを最優先に考えることが大事です。私はキャッシュフローが3%以上になることを目標に、返済期間と返済比率を設定しています。キャッシュフローは、最低でも2%はないと厳しいです。

 この比率を守るため、固定資産税や諸経費を差し引いて、入居率も75%以下とかなり厳しめに設定して返済シミュレーションを組んでいます。そこまで厳しい設定で計算しても、キャッシュフローが3%以上になるように「返済シミュレーション」で融資額と返済比率のバランスを考えてから、物件購入の手続きへと進むようにしているのです。着実な資産形成に向けて、不動産でしっかり利益を出していくならば、キャッシュフローを第一優先に考えるのは不可欠でしょう。そのうえで、返済期間や返済比率などの条件を入れた返済シミュレーションをするのです。

【ポイント:返済期間と返済比率はキャッシュフロー3%以上で設定する】

購入前に厳しめのシミュレーションをしておこう

収益不動産収支シミュレーション例

前提:稼働率70%

物価価格:  2億1500万円
土地価格:    9612万円
建物価格:  1億1888万円
表面利回り:     8.0%
年間家賃: 1717万4000円
月家賃:   143万1166円
諸経費(概算):約1290万円
耐用年数:34年

融資額:2億万円
期間:30年
利率:0.6%
年返済額:728万6316円
月返済額:60万7193円

自己資金(概算):約2790万円
実質利回り(概算):0.6%
実質利回り:4.4%
投資回収率:7.9%

稼働率70%時の年度毎の収支

 

 今回は、不動産投資における法人化についてお話をしました。これから不動産投資を始めたい人は、「法人化するなら合同会社がおすすめ」「返済シミュレーションはキャッシュフロー優先」ということを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!

 

●八木エミリー  投資家&事業家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)

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