不動産物件の概要について記された書類は、「物件概要書」と呼ばれます。この「物件概要書」の記載情報は、わりといい加減な場合が多く、すべての情報が正確に記載されているとは限りません。
今回は、不動産投資で信じてはいけないこと・チェックすべきことという話をしていきます。これから不動産投資を始めたい人は、ぜひ参考にしてくださいね。
きちんと物件を見極めるためには、「物件概要書」とともに「レントロール」(賃貸条件一覧表)を確認することが大切です。
「レントロール」には、部屋ごとの「契約者・契約期間・敷金・賃料・共益費・駐車場料」などが記載されています。「物件概要書」に決まった形式はないのですが、記載されているのは「物件名・所在地・最寄り駅・土地面積・建物面積・構造・築年数・部屋数・間取り・利回り・用途地域」といった基本情報です。
「違法建築ではないか?」「記載情報は正しいか?」をしっかり確認
「物件概要書」は「違法建築ではないか?」「記載情報は正しいか?」の2点を、特に注意してチェックします。
違法建築というのは、建築基準法で制限が設けられている「建ぺい率」(敷地面積に対する建築面積の割合)と「容積率」(敷地面積に対する延べ床面積の割合)をオーバーして建てられた物件や、未登記の増改築がある物件などです。建ぺい率と容積率は、「用途地域」ごとに細かく制限されており、その制限をオーバーする建物は違法建築となります。違法建築の物件は金融機関から融資が受けられず、売却するにも買い手がつきません。
【容積率とは?:敷地面積に対する床面積の割合(住居系用途地域の場合)】
容積率(%)=延べ床面積/敷地面積×100
例:
敷地面積:100㎡
1階床面積:50㎡
2階床面積:25㎡
(50㎡+25㎡)÷100㎡×100=75%
前面道路の幅員による容積率と用途地域による容積率とで小さい方が適用される
例:
前面道路幅:4.5m
敷地指定容積率:200%
4.5m×0.4×100=180%
容積率50・60・80・100・150・200%の用途地域とは?
第一種低層住居専用地域:低層住宅専用
第二種低層住居専用地域:小規模な店舗の立地を認める低層住宅専用
容積率100・150・200・300・400・500%の用途地域とは?
第一種中高層住居専用地域:中高層住宅専用
第二種中高層住居専用地域:必要な利便施設の立地を認める中高層住宅専用
第一種住居地域:大規模な店舗・事務所の立地を制限する住宅地
第二種住居地域:大規模な店舗・事務所の立地を一部制限する住宅地
準住居地域:自動車関連施設など沿道サービス業と住宅が調和して立地
【建ぺい率とは?:敷地面積に対する建築面積の割合】
建ぺい率(%)=建築面積/敷地面積×100
例:
建ぺい率50%
建物:50㎡
土地:100㎡
建ぺい率80%
建物:80㎡
土地:100㎡
建ぺい率30・40・50・60%の用途地域とは?
第一種住居地域:大規模な店舗・事務所の立地を制限する住宅地
第二種住居地域:大規模な店舗・事務所の立地を一部制限する住宅地
準住居地域:自動車関連施設など沿道サービス業と住宅が調和して立地
建ぺい率50・60・80%の用途地域とは?
第一種低層住居専用地域:低層住宅専用
第二種低層住居専用地域:小規模な店舗の立地を認める低層住宅専用
第一種中高層住居専用地域:中高層住宅専用
第二種中高層住居専用地域:必要な利便施設の立地を認める中高層住宅専用
現地を訪ねて土地の境界線をはみ出していないか、また、再建築不可物件なども物件概要書に記載していないケースが少なくありません。引っ越しのトラックが通れるか(入れるか)くらいは、自分自身の目できちんとチェックしておきましょう。
容積率は自治体(市町村)の都市計画を反映して決められています。建築物の前面にある道路幅によっても左右され、どちらか小さい数値のほうが採用されます。
計算式は次の通りです。
容積率(%)=前面道路幅(m)×0.4×100(住居用地域の場合)
前面道路幅が4.5mだとすると、4.5×0.4×100=180%となります。都市計画で容積率200%とされていても、前面道路を加味した数値のほうが小さいので、この場合の容積率は180%になるわけです。また、角地など複数の道路に面している場合は、広いほうの道路幅をベースに計算します。物件概要書の「備考」欄などに記載がなくても気になるようなら、その土地の容積率をクリアしているかを自分で計算してみるといいでしょう。多少面倒なことでも、あとで大きな損失を出さないためには、最初の確認で手を抜かないことが大切です。
【ポイント:「違法建築ではないか?」「記載情報は正しいか?」をチェック】
最近入居した人が多くないか? 家賃は適正か?
入居率や家賃、入居者の情報が記載された「レントロール」(賃貸条件一覧表)は、「空室をごまかして入居偽装していないか?」「実際の家賃と募集家賃に開きがないか?」という点を入念に確認します。
例えば、ごく最近住みはじめた人が多い物件のなかには、オーナーが知り合いを一時的に住まわせて入居偽装しているケースもあり得ます。悪質な業者になると、空室にわざわざカーテンをつけて入居者がいるように見せかけていることだってあるのです。「よくそんなことを考えつくなぁ」とあきれるような偽装工作をする不動産オーナーや業者が実際にいるので、何事も疑ってかかるくらいで丁度いいと思います。
対策としては、入居者の「賃貸借契約書」で入居時期・家賃・保証人の名前をチェックして、疑わしいことがあれば不動産会社の担当者に質問することです。
また、「長期修繕履歴」がしっかり提示され、実行されてきているかも確認します。修繕履歴を見て、長らく修繕がされていなければ、そのぶんの費用を安くしてもらう「指値」を入れることもできます。
さらに現地で物件を確認することも大事です。物件を現地で確認する場合、各住居の「電気メーターが回っているか」「入居者がいるはずの部屋のポストにチラシが溜まっていないか」をチェックします。実際に現地へ行ってみると、建物の様子や周りの環境がよくわかります。放置自転車はないか、ごみ置き場やエントランスはきれいか、そもそも住みたいと思えるような物件かを入居者の気持ちになって想像してみてください。駅からの道のりも、実際に歩いてみないとわかりません。そのついでに駅前の不動産仲介業者に立ち寄って、検討している物件のことやエリアの人気度を聞き出すと、地元の業者しか知らないような情報が得られます。
【ポイント:レントロールと現地での物件確認はワンセット】
<契約者情報等一覧(レントロール)例>
※敷金については管理会社にて保管
※管理料は、賃料、共益費、駐車料金等の実収入に対して5%+消費税
※共用部の電気料・水道料、建物定期清掃費、消防点検等月額平均87,000円(概算)
※駐車場区画数:計16台・専用駐輪場スペース有
今回は不動産投資で信じてはいけないこと・チェックすべきことお話しました。これから不動産投資を始めたい人は、物件概要書を信じてはいけないこと・レントロールをチェックすることを、ぜひ頭に入れておいてくださいね!
●八木エミリー 投資家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)
●八木エミリー 投資家。野村證券に入社後、新人で東海地区の営業成績ナンバーワンとなり、最年少講師に。26歳で辞めた後は、不動産投資を開始し、7棟の不動産を所有(購入額7.5億円)。不動産投資の自己資金は徹底した節約で貯めたもの。現在はIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)として中立の立場で金融商品のアドバイスなども手掛けている。20代30代を中心に経済的自立を目指すお金ビギナーを救う活動を「マネ活」としてメルマガ配信などを行なっている。著書に『今からはじめれば、よゆうで1億ためられます!』『元証券ウーマンが不動産投資で7億円』(ダイヤモンド社)。最新刊は、『放置しておくだけでふつうにお金が増える投資術』(ビジネス社)