いよいよGAFAMにも落日が
これまで米国の株式市場の牽引役かつ主役であったGAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)。ひと頃は、わずかこの5社の時価総額の合計が東証一部全体の時価総額を抜いたと話題になった。2021年暮れのピーク時には約10兆ドル(1300兆円)に達し、この世の春を謳歌。まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだった。「日本株などもうダメだ、やっぱり米国株しかない!」と言っていた人たちが、我も我もと競って飛びついたのがGAFAMだったが、今年の年初からは株価が急落。「いつ復活するか?」と注目していたら、足元の決算が一層悲惨なことになっている。
10月25日から10月27日にわたって発表された7-9月期決算内容が各社とも不振であり、アップルを除く4社が決算発表後に株価が急落した。
グーグルの親会社アルファベットは売上高と1株利益がともに市場予想を下回った。景気減速や競争激化で主力の広告事業が3%増と伸び悩み、動画投稿サイト「ユーチューブ」向けは2%減と減少に転じて株価は10%安と急落。マイクロソフトは10-12月期の売上高の伸び率が7-9月期に比べて急減速するとの見通しが嫌気されて株価は8%安。メタ(フェイスブック)は広告収入が減速して1株利益が半減し、株価は何と25%安と歴史的な暴落を演じた。
また、アマゾンは売上高が市場予想を下回り、営業利益が半減。年末商戦のある10~12月期の売上高見通しも市場予想を大きく下回り、個人消費が一段と悪化するガイダンスを示したことから、時間外取引で株価は一時20%も下落。アップルは「iPhone」と利益率の高いサービス事業の売上高が市場予想を下回ったものの、株価は1%高と下落は逃れた(いずれも日本時間10月28日午前5時45分現在)。
GAFAMの決算はほぼ全敗。金利上昇が米国経済をむしばんでいる
こうして見てみると、GAFAM決算はほぼ全敗である。今回のGAFAMの決算が意味することは大きい。高いブランド力と包括的サービスの提供力、そして強力なグローバルでのビジネス地盤があれば、景気減速の影響を受けずに独自の成長を維持できるとの見方もあったが、そのような淡い期待は一蹴された。
やはりこれは金利上昇によって、米国人の生活に大きな影響が出ている証拠だと思う。先週木曜日(10月27日)に米国の7-9月期のGDPが発表されたが、前期比の年率換算で2.6%増となり、事前予想の2.3%増を上回った。1~3月は1.6%減、4~6月は0.6%減だったので「米国経済、もう持ち直しているよね」と考えてしまうかもしれない。数字上こそ、3四半期ぶりのプラス転換であるが、マーケットの反応はむしろ景気の減速をかぎ取っている。
GDPの7割を占める個人消費は1.4%増と、4~6月の2.0%増から減速。CPI(消費者物価指数)の上昇率は6月に9.1%と40年半ぶりの水準を更新し、9月まで8%台で高止まり中だ。物価の伸びに賃上げが追いつかず、消費に影響が出ている形になっている。それから住宅も不振である。4~6月に急減した住宅投資は7~9月も26.4%減と落ち込んだ。30年固定の住宅ローン金利が急上昇し、10月中旬には7%を超えて21年ぶりの高水準になっている。9月の新築一戸建ての住宅販売件数は前年同月を18%下回る水準に落ち込んでいる。住宅を買うのも二の足を踏む。
では何が良かったのか? 輸出が伸びる一方で輸入が6.9%減となり、輸出から輸入を差し引いた「純輸出」による押し上げ効果が2.8ポイント。ほとんどこれで説明可能だ。コロナ禍からの急速な経済再開で輸入は前のめりでバンバン増えたが、消費減退とともにそれが減少。米国に拠点を置くCEO(最高経営責任者)の98%が今後12~18ヶ月間の景気後退を予想しており、景気減速感が強まるものと思われる。
GAFAMのような大型企業でも苦戦するほどに景気は確実に悪化方向にあることを軽視してはならないだろう。
GAFAMの株価急落でナスダックが弱い
さて、マーケットである。先週も米国株は大きく上昇したが、強いのはNYダウであり、ナスダックは反発力が弱い。従来の米国株投資において最も嘱望されていたGAFAMの決算がことごとく期待外れで、大きく売られる形となっているのが響いている。もはやこれまでのようなGAFAMに頼った指数の上昇は期待できなくなっており、より個別銘柄の見極めが必要になっていることを示している。
年初来の株価を見ると、アルファベットが34%安、メタが71%安、アマゾンが42%安、アップルが18%安、マイクロソフトが31%安だ(日本時間10月28日午前5時45分現在)。要するに指数の牽引役の中身において劇的な変化が起こっている。牽引役なしでの株式市場の魅力は、従来に比べると大きく減少してしまう。
11月のFOMCにおいては利上げ幅が4回連続となる0.75%が見込まれるが、12月は減速して0.50%になるとの期待感が相場上昇の牽引力となっている。金利の上昇は続くものの「金利引き上げはペースダウン」にフォーカスして前のめりになっている感が強く、これは8月に見られた「もうインフレ率は上がらない」を先取りした楽観相場の動きと類似している。政策金利の引き上げペースが続く以上、再び長短金利は上昇してマーケットの足枷になりかねない。何度も言うようにベアマーケットラリーには注意が必要である。
「来るべき金融相場」に備えて売られてきた小型グロースに注目
私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」は、先週はベンチマークに対してアンダーパフォームしたものの、保有銘柄2社において好決算で株価が急騰した。グロース銘柄に少し動きが出てきたことに注目している。「来たるべき金融相場」において、最も期待できるのがこれまで徹底的に売られてきた小型グロースである。
11月2日(水)20時から毎月恒例のWebセミナーを開催する。今回のテーマは『来たるべき金融相場で想定されること ― 今から準備しておこう』。マーケットは今、ベアマーケットラリーを伴いながら逆金融相場から逆業績相場への局面に入っている。すでに厳しい相場への備えについてはお話をし、「勝者のポートフォリオ」でも万全の態勢を取っている。今回は一歩先読みという形で、来たるべき金融相場で想定されることについて考察し、今後どのような準備をすれば良いのかについて解説したいと思う。
2021年10月にスタートした「勝者のポートフォリオ」は順調であるが、マーケットは大きく下げており、これまで全くいい所がなかった。金融相場では運用資産を大きく増やすことに全力を尽くしたいと考えている。セミナー前半では今回のテーマを中心に、現在のマーケットを取り巻く諸要素の分析、現状の具体的な投資戦略、期待している個別銘柄についても詳しく解説。後半では皆さまからのご質問にお答えする形で進めていく予定だ。
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(DFR投資助言者 太田 忠)
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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