外国為替市場で円相場が下落し、32年ぶりに1ドル150円の節目を突破!
とうとうドル円の為替レートは32年ぶりに150円を突破 ―。
先週木曜日(10月20日)の外国為替市場で円相場が下落し、1ドル150円の節目を突破した。1990年8月以来となる32年ぶりのことである。私が第49回のコラム(9月14日付)で書いた「次のメドは150円」をクリアした形だ。一段と拡大する日米金利差を背景とした「ドル買い&円売り」に加えて、貿易赤字の拡大、輸入に関わるドル決済資金手当てのための実需のドル買いが円安トレンドを加速している。
ところで、9月22日の政府・日銀による為替介入。1998年6月以来、約24年ぶりに円買い介入に踏み切ったこの日は象徴的な動きだった。日銀が金融政策決定会合で大規模な金融緩和の維持を決め、利上げを進める米国との金融政策の違いからドル高・円安に拍車がかかって146円台に乗せる直前の出来事だった。午後5時頃の介入によって為替はわずか1時間程度で140円台へと5円も円高になった。介入規模は3兆円程度だった。
約24年ぶりの為替介入も格好の投資チャンスを与えて円安が一気に進行
「投機による過度な変動が繰り返されることは決して見過ごすことができない」というのが政府・日銀側の主張。もちろん他国と一緒におこなう協調介入ではなく日本の単独介入である。介入前に米国財務省に「介入をおこなう」と通知した上での行動のため、米国からも容認された形となった。
140円台になった為替は、そこで恰好のドル買い&円売りの投資チャンスを与えてしまい、すぐさま円安に動く形となった。140円台から150円台へと既に10円も円安が進んだ。「投機的な動きは見過ごせない」と主張する日本は自ら投機的な動きを演出し、結局は為替介入の効果が全くない形となった。
その後は作戦が変更され、ちょくちょく覆面介入をしていると噂されるようになった。円買い&ドル売り介入の実施の有無を明らかにしない介入方法で、あえて明言を避けることで為替介入への警戒感を作り出し、過度な円売りを止める狙いだ。日銀の当座預金残高の動きを巡って10月13日、そして10月19日に覆面介入を実施したとの観測が出ていた。
深夜の電撃的なサプライズ介入でわずか1時間で6円近くも円高が進行
先週金曜日(10月21日)の深夜、151円90銭台まで一気に円安が加速していたタイミングで大規模な追加介入をしたのである。わずか1時間ほどで6円近くも円高となり円は146円台まで急騰。神田真人財務官は記者団に対して「介入の有無についてはコメントしかねる」と話したが、明らかに政府・日銀による介入である。
米連邦準備理事会(FRB)は引き続き大幅な利上げ継続の意向、一方の日銀は引き続き金利を上げない意向で対照的。日米金利差拡大からドルが買われて円が売られる構造には変化がない。そもそも、どんどん円が売られるような金融政策を取りながら、日本単独で単発的に円を買うという行動自体、矛盾に満ちている。「投機的な動きは見過ごせない」との主張も説得性に欠ける。なぜなら、現在の円安トレンドはあくまでファンダメンタルズに基づく動きであって、これを公的介入で止めようとしても困難だからだ。効果はほんの一瞬だけ。しかも、それが逆に「介入があればドル買いの好機」というのが市場参加者の受け止め方だ。
以前に何度か指摘したが、通貨の実力は「実質実効為替レート」で測定される。円の実質実効レートは1995年をピークに低下し続け、足元では、変動相場制になった1973年以前の1ドル360円の時代の水準まで低下している。それだけ円の価値が下がっているのだ。日米の物価が対等になるレートは1ドル80円台である。
為替介入をこなしつつ再び150円突破を目指す。次のターゲットは160円
10月11日より水際対策が全面緩和され、ようやく外国人が自由に日本に訪れることができるようになった。すべての主要通貨は円に対して強くなっており、彼らにとって日本での消費は「お得感」が高まっている。日本にとっては外貨を獲得するチャンスだが、日本人にとって海外旅行は割高となった。「7月時点の宿泊費や飲食費など航空券以外の現地コストは、2019年に比べて米国で4割も上昇、台湾やベトナム、韓国などアジアでも2~3割増えている」と報じられている。また今後、国内の宿泊施設が金払いのよい外国人をターゲットにすることで宿泊料が高騰する懸念がある。全国旅行支援のスタートも手伝ってすでにその兆候が出ているが、日本人は「国内旅行も割高で気軽に行けない」という事態になりかねない。
政府・日銀の介入をこなしつつ、為替は再び150円を突破するだろう。次のターゲットは160円になる。160円といえば1990年の水準だ。1988年の120円から40円も円安が進んだ相場だったが、日本のバブル崩壊が本格的に始まった頃に当たる。
日本のCPIが+3.0%と31年ぶりの高さ。海外のインフレが日本にも波及
ところで、9月の日本の消費者物価指数(CPI)は+3.0%と31年ぶりの高さとなった。海外のインフレが日本にも波及していることを如実に示すものであり、10月に生活必需品が全面的に値上げされたことを考えると、今後さらに伸びが加速するものと思われる。日銀の黒田東彦総裁は「今のインフレは一時的、大規模金融緩和を継続する」と記者会見の席で語った。
「今のインフレは一時的」。どこかで耳にしていませんか、このセリフ? そう、FRBのパウエル議長が初期のインフレ局面で繰り返し使っていた言葉である。でもそれは間違いだった。その後は大きく軌道修正せざるを得ない事態に追い込まれた。日本も同じことが起きると思う。もし、ここで日銀が0.25%の利上げをおこなえばインフレ対策の先回り、およびビッグサプライズということで円安の暴走にも簡単に歯止めがかかると私は考えているのだが。皆さんはどう思われるだろうか?
さて、マーケットである。相変わらず大きなボラティリティが続いているが、私がDFR(ダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ)で投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」は先週も好調だった。ポートフォリオで保有する25銘柄のうち3銘柄が年初来高値を更新した。11月2日に毎月恒例のWebセミナーを開催する予定である。ここで来たるべき金融相場に備えての大事な話をしたい。多くの方々のご参加をお待ちしております。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。メルマガ読者向けに原則毎月第一水曜夜にWEB生配信セミナーを開催。
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