先週金曜日、日銀の金融政策現状維持も銀行株指数が5.4%安と急落
三菱UFJ6.1%安、三井住友5.3%安、みずほ4.9%安…銀行株指数5.4%安と急落―。
先週の日経平均は木曜日までは5日続伸で1100円もの上昇を演じていたが、3月10日の金曜日に前日の米国市場の急落を受ける形で大きく売られて479円安と2022年12月20日の669円安以来の大幅な下げとなった。特に下落が目立ったのが、冒頭で述べた銀行株である。米国市場の不振を尻目に上昇基調を演じてきたムードがガラリと変わった。黒田東彦総裁にとって最後となる日銀の金融政策決定会合では「金融政策は現状維持」という大規模金融緩和の継続が示されたため、本来ならば日本市場にとって追い風が吹くはずであった。しかし、取引時間中に米国の先物市場が下落したため日本株売りに拍車がかかった。
2022年12月20日に何があったのか? もう皆さんはおわかりだろう。そう、日銀金融政策決定会合で日銀が突然、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)を「0%から±0.25%」から「0%から±0.50%」へと変更し、従来の大規模金融緩和を修正した日である。事実上の利上げ宣言だ。黒田総裁の任期中である2023年4月までは大規模金融緩和を継続するというのが市場のコンセンサスだったため、大きなサプライズをもって受け止められ株式市場は急落した。私はこれを黒サンタショック(ドイツでは黒いサンタクロースが悪い子を懲らしめにやって来るという伝統的風習があり、黒田総裁がクリスマスシーズンに個人投資家を懲らしめたことを黒サンタに喩えている)と呼んでいるが、実はこの日を境に日本の銀行株の急騰が始まった。「金融正常化でやっと銀行は収益を上げることができる」という収益面での期待に加えて、「PBR(株価純資産倍率)がどれもこれも1倍以下で安すぎる」という割安株是正の両輪での力強い上昇である。
銀行株急落を追い打ちしたシリコンバレーバンク(SYB)破綻の影響は?
3月10日に開かれた日銀金融政策決定会合では「さらにYCCの是正があるかも…」という声も一部あったが、結局は「金融緩和の維持」という結論が出された。したがって、このタイミングで利益確定売りが大量に出て午前中の取引において銀行株は2~3%の下落となっていた。さらに、午後に入ると米先物市場の下落が顕著となったため、銀行株はもう一段の下落を演じた。これに絡んでいるのがシリコンバレーバンク(SVB)の株価急落である。
SVBは社名の通りシリコンバレーに拠点を置く銀行である。ハイテク企業へのスタートアップ融資に強みをもつ銀行だが、金利上昇による預金残高急減で保有債券の売却や増資による資金調達を発表したため、経営不安から3月9日の株価は1日で6割も下落。流動性不足に陥り、債務超過状態にあることが認定されて3月10日に経営破綻した。このため米国の大手銀行株やドイツ銀行など世界主要銀行にも売りが波及し、日本の銀行株も影響を受けた形である。
SVBの総資産は2090億ドル(約28兆円)で、資産規模は全米で16位。米銀の破綻では、2008年9月の金融危機で破綻した貯蓄金融機関最大手のワシントン・ミューチュアル以来、2番目の規模となっている。コロナ禍における金融緩和下において、ベンチャー企業からの預金を多く集めており、それらを米国債や住宅ローン関連証券への投資に振り向けていた。しかしながら、米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めで米国債や住宅ローン証券の価格が下がり、資産価値が大きく減る事態に直面して経営に行き詰った。金利上昇への耐性が非常に弱い構造だったと言える。
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