スイスの金融大手クレディ・スイスの経営不安に世界のマーケットが震撼
先々週はシリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻が世界のマーケットを揺るがしたが、先週は米国の金融ショックが波及する形でスイスの金融大手クレディ・スイスの経営不安が強まり同社の株価が急落。3月15日水曜日には24%安の1.697スイスフランで引けて過去最安値を更新した。
スイス国立銀行(中央銀行)は「クレディ・スイスは金融システム上重要な銀行における資本や流動性の要件を満たしている」との声明を発表。必要な場合はスイス中銀が流動性を供給すると明らかにし、クレディ・スイスは7.1兆円(500億スイスフラン)の調達が可能になった。3月17日のFT(フィナンシャル・タイムズ)には、スイスの金融大手UBSがクレディ・スイス・グループの買収交渉を進めていると報道。「スイス中銀とスイス金融市場監督機構(FINMA)が買収交渉を後押しし、米英の当局にも2行の統合がクレディの信用力の崩壊を防ぐための最善策であると伝えた」との内容だ。その後、3月19日にスイスの金融大手UBSがクレディ・スイス・グループ
中銀の素早い対応でパニック回避。リーマンショックの教訓が生かされる
さらに買収合意の直後、米連邦準備理事会(FRB)など日米欧の6中銀が協調してドル供給を
米国の中堅銀行と比較すると、大手のクレディ・スイスの経営不安はきわめて大きなリスクであるが、スイス中銀による素早い支援策、UBSによる買収決定、世界の中銀が協調してのドル供給策の実施などによってマーケットの混乱は抑えられている。リーマンショックの教訓が生かされていると言える。金融不安はまだ解消されたわけではないが、リーマンショックのような大きな金融危機が起こる可能性はないと私は考えている。
まだしばらくマーケットは荒れそうだが、金融不安はいずれ落ち着くとのシナリオを描いている。一方、景気減速がもたらす逆業績相場への移行は想定の範囲内である。今回の件でFRBの利上げが早々に打ち止めになって、利下げへと転じる可能性も強まってきている。もしそのような状況になれば、大きく相場展開が変わってくる可能性も考えられる。
急落に個人投資家はどう対応すべき?投資スタンス別にポイントを整理
私が投資助言をしているダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)の「勝者のポートフォリオ」では実は先々週の木曜日までは連日で過去最高値を更新し順調にパフォーマンスが積み上がっていた。しかしながら、翌日の金曜日から大きく崩れ、先週はマーケット並みに下がって苦戦を強いられている。会員の皆さまから「今回のショック安についてどう思われますか?」「嵐はだいたいどれくらいで収まりますか?」などの質問をいただいた。今回のような急落を初めて経験する…という方もいるので無理もない話だ。
ここで改めて、どういう投資スタンスを取るべきかを整理してみよう。
ポイント1 金融ショックに直接関係する銘柄を保有している場合
まずは金融ショックに直接関わっている銘柄を保有している場合。これはもちろん個別銘柄そのものの危機要因がマックスになっているので売却せざるを得ない。下手に希望を抱いてナンピン買いしたり、投機的な反発狙いの買いを入れたりする投資は危険すぎる行為なので絶対にオススメできない。
ポイント2 信用取引などレバレッジをかけて株式投資している場合
2つ目は、そのような直接的な銘柄は保有していないものの、信用取引などレバレッジをかけて投資しているケースだ。自己資金の何倍もの金額を投資していることになるので、ちょっとした下げでも痛手は大きい。レバレッジ投資は落ち着いた上昇局面では運用資産を増やすのに有利だが、今のような相場だと逆回転してしまう。レバレッジは清算すべきである。
ポイント3 ポイント1と2に当てはまらない現物株投資をしている
3つ目が、金融ショック銘柄を直接保有していないものの、現物株投資をしているケース。おそらく大多数の投資家がこれに該当すると思われる。もちろん含み損を減らすために投資ウェートを下げるのは問題ないが、無理してまで売却しなくても良いと思う。嵐が去れば、外部要因の解消によって株価は戻ってくる。
ポイント4 積立型投資をしている
最後に積立型投資をおこなっているケース。これは非常にチャンスだ。マーケットが大きく売られている局面で積み立てをおこなうのは将来の利益の源泉になる。なので、積立型投資をしている投資家は「これはしめしめ、ラッキー」という発想を持つべきだと思う。
大事なことはパニックにならない。ストレスフリーな投資を実践しよう!
「私が皆さんに申し上げたいのは、パニックにならないことです」「株式市場に参加している以上、このようなことは起こります。私は何度も経験してきました」などと「勝者のポートフォリオ」の会員に回答しているが、投資助言者である私は非常に冷静である。パフォーマンスが一時的に崩れる形になっても、気落ちする必要などない。
そもそも私の2023年のマーケットの見立ては「前半は厳しいが、後半はチャンス」である。金融システム不安はもちろん想定していなかったが、マーケットは今後確実に逆業績相場から金融相場に向けた流れになる。まだしばらくは大きなボラティリティと付き合う場面も多いと思われるが、日本の金融株や日本株は外部要因に振り回されているだけであり、本質的な割安感や株価上昇の潜在力は何ら変わっていない。なので、このような嵐の中でも常に前向きな姿勢で運用をおこなっていきたいと考えている。
皆さまにおいても無用なストレスを抱えないようにしていただきたい。心配するのは時間の無駄であり、人生を無為に過ごしていることになる。マーケットの混乱局面は延々に続くわけではない。長期的には経済成長は続くし、企業収益は拡大して株価も上昇する。皆さまには不安にかられることなく、ぜひとも安心していただきたいと思う。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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