セミナーで以前から話していた中国人の団体旅行解禁のシナリオが現実に
中国政府が日本への団体旅行を8月10日より解禁―。
先々週の米国債格下げに続いて、先週は米銀の格下げというネガティブな報道で不意打ちを食らう形となったマーケットだが、全体を揺るがすような悪影響は出ておらず、今後の影響も限定的と私は考えている。そうした中、いよいよ中国政府が日本への団体旅行を認めるとの発表を先週金曜日におこなった。株式市場では早速、インバウンド銘柄が活況となっており非常に明るい話題である。
「中国人の日本への団体旅行解禁」は3年半ぶりであるが、実はこのシナリオは「勝者のポートフォリオ」のWebセミナーで随分前から話していたことである。たくさんの会員の方々から「やりました!」「ありがとうございます!」の反響をいただいており、私としても嬉しい限りである。「勝者のポートフォリオ」では比較的出遅れ感の強いインバウンド関連5銘柄を組み入れており、今後の株価上昇に大いに期待が持てる。
ピーク時、中国人は訪日客の3割を占め消費額は1.77兆円の「お得意様」
今回、中国人の団体旅行が解禁となったのは日本だけではなく、欧米や韓国を含む世界78カ国・地域が対象である。コロナ禍前の2019年には延べ1億5千万人超もの中国の海外旅行者がいたが、2020年と2021年は出国制限で2千万人台に落ち込んでいた。これでようやく本格的な回復に弾みがつく。海外への団体旅行解禁は今年2月にまず20カ国を対象におこなわれ、3月に40カ国を追加、そして今回の解禁で計138カ国・地域が対象となる。
まずは中国からの訪日客の影響を考えよう。コロナ前までの訪日客と言えば、何と言っても中国人であり、「爆買い」という言葉がブームとなった。2007年の中国人観光客は94万人だったが、ピークだったコロナ禍前の2019年には959万人と12年で何と10倍に拡大。2019年の訪日客全体3188万人の30%を占め、この年の消費額は1.77兆円と全体の37%を占めるまさに「お得意様」であった。
ところが、足元ではかなり様子が異なる。2023年1月から6月までの上半期の累計による訪日外国人は1071万人と2019年比で64%の水準まで回復しているが、中国人はわずか59万人で全体の6%しか占めていない。コロナ禍前の2割にも満たない水準である。
訪日中国人はピーク比で今年は5割、来年は8割超の水準まで回復と試算
今回の団体旅行の解禁でどうなるのか? その試算が民間調査機関から出ているが、2023年の訪日中国人は198万人分上振れするとのことだ。2023年通年では450万人となり、2019年比では一気に5割近い水準にまで回復することになる。このペースでいけば、2024年の訪日中国人は少なくとも2019年の8割を超える水準にまで回復すると見られる。
中国人の旅行支出は欧米諸国に匹敵する。観光庁によると、2023年4~6月の訪日客1人あたりの旅行支出は中国人が33万8000円で、1位の英国(36万円)に次ぐ2位。韓国や台湾などほかのアジア諸国・地域と比べても多い。もちろん4~6月は個人旅行客が中心のため単価が上がっている面もあるが、そもそも中国人の消費パワーはコロナ禍前において最大だった。団体ツアー客による消費押し上げ効果も十分に期待できる。中国人団体旅行の解禁で訪日客全体の消費額は2023年に2000億円上振れして4兆1000億円になるとの民間試算がある。日本政府は2025年に訪日客数を3200万人にする目標を掲げているが、その達成にはコロナ禍前に全体の3割を占めていた中国人訪日客が欠かせない。
中国人の「爆買い」が復活するかは疑問。国内の受け入れ態勢も課題
個人的な興味としては、コロナ禍前の中国人による「爆買い」がポストコロナの時代でも起きるかどうかという点だ。今は中国にいながらにして、日本の商品をいくらでも購入できる状況になっているため、かつてと同じような形での「爆買い」は起きないのではないか、という疑問が湧いてくる。今のインバウンド消費全体の傾向として言えることだが、かつての外国人のお金の使い方が「モノ消費」から「コト消費」へ移行しているように思う。
ところで、大きな問題がある。それはいくら外国人が日本に行きたいといって押し寄せても、受け入れ側の態勢ができていなければ受け入れられない点だ。コロナ禍で真っ先に人減らしをされたのがインバウンド関連業種であり、急激な需要回復によって日本各地の観光の現場では人手不足が深刻化している。東京都心のシティホテルでは、従業員がピーク時よりも15%程度減っているとの報道もあり、訪日外国人に押しかけられても十分に稼働できない現状がある。また、訪日客が増えれば騒音など住民の生活に悪影響を与える「オーバーツーリズム」が一段と深刻になりかねない。現実的な対処がワークしなければ、長期的な訪日客4000万人、6000万人を達成していくことは到底難しくなる。課題をクリアしていかねばならない。
訪日客の国内消費はサービスの輸出に相当。円安が訪日消費拡大を下支え
以前も指摘したことであるが、経済学においてインバウンドはどのように捉えられているのか見てみよう。マクロ経済の視点で見れば、訪日客の日本での消費はサービスの「輸出」であり、一方で日本人の海外での消費はサービスの「輸入」に該当するのをご存知だろうか? 外国人はドルなどを円に換えて日本でモノを買ったりサービスにお金を払ったりする…ということは外国で日本製品が売れるのと同じことになり、日本人の外国での消費は海外製品を買うのと同じことだからだ。
日本を旅行するにあたって円安は外国人にとってはお得感、反対に日本人が海外旅行をするのは割高感となるため、旅行収支(輸出から輸入を引いた値)は今春時点で2000億円の黒字になっている。しばらくはこの状況が続くと思われる。さらに外国人がドルなどを円に換えるのは「円買い・ドル売り」、日本人が円をドルに換えるのは「円売り・ドル買い」に相当し、為替にも影響を与えていることも知っていただきたい。
夏枯れ相場でも「勝者のポートフォリオ」は週間ベースで最高値を更新
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。先週は週間ベースで過去最高値を更新し、年初来高値は3銘柄となった。今回のテーマであるインバウンド関連銘柄も活躍している。おかげさまで会員数も大きく増加している。「テンバガー(10倍株)」についてのスペシャル講義動画もスタート。資産運用で大きな飛躍がしたいと真剣にお考えの方はぜひどうぞ。ひとりで悩まず、素晴らしい仲間たちと一緒に資産運用に取り組んでいきましょう。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもメルマガ配信などで活躍。
※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一水曜夜は、生配信セミナーを開催。
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