割安で、今後伸びたらすごそうな中国ハイテク企業はどこ?
元フィデリティ投信トップアナリストで、米国・シアトルからメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしているポール・サイさんが、東京MX2で毎週月曜~金曜22時から放送されている、「WORLD MARKETZ」に電話でゲスト出演した。
前回の放送では、前々回から引き続きカリブ海のグレナダに滞在していたポールさんが、ヨットの中から映像付きで生出演。エバーグランデ(中国恒大集団)がアメリカで破産法適用を申請したことを受けて、10年間言われ続けているチャイナバブル崩壊は本当に来るのか、崩壊する場合に考えられるシナリオを解説してもらった。
【※関連記事はこちら!】
⇒チャイナバブル崩壊で考えられる、最悪のシナリオは台湾戦争。普通のシナリオは金融緩和。ベストシナリオは中国が正しく成長して、先進国に入ること
そして、今回の放送では、欧州各国にグレナダと世界を飛び回ったポールさんが、久しぶりにシアトルの自宅から電話出演した。中国の景気減速に対処するため、中国政府は個人ではなく企業、特にハイテク企業に注力しているとポールさん。割安で、今後伸びたらすごそうな中国ハイテク企業を教えてもらったので、さっそくチェックしていこう。
ポールさんはフィデリティ投信を辞めてFIREになってから、1年に2、3カ月旅行している
欧州旅行に続き、グレナダへの旅行を終えて、久しぶりにシアトルの自宅からの電話出演となったポールさん。
アシスタントの木村カレンさんに「久しぶりの自宅はどうですか?」と聞かれ、シアトルはグレナダと比べて涼しく、秋に入って葉っぱの色が少しずつ変わるようになったと答えていた。また、グレナダよりもモノや道がよく、先進国らしさをポールさんは感じているようだ。
ポールさんがこの番組に出始めたのは昨年11月からなのだが、今回の放送までにカリブ海に2回、欧州に長期で1回旅行に行っていて、番組MCの渡部一実さんは、ポールさんが普段から旅行によく出かけるのかと質問した。
ポールさんはフィデリティ投信を辞めて独立し、FIREになってから、特に旅行をするようになったとのこと。コロナの間はキャンピングカーを買って、西海岸の温泉やナショナルパークを子供たちと1カ月ずつ回り、だいたい年に2、3カ月は旅行をしているそうだ。
注目の中国ハイテク企業はバイドゥ、BYD、アリババ、テンセント。景気減速の影響で下がり過ぎたらチャンス。下がっている今、勉強したほうがいい!
ここからは経済番組らしく、中国やアメリカの景気の話に。
中国が景気減速していると盛んに報じられていることを、どう見ているかと渡部さんに聞かれたポールさんは、中国政府がどのように景気を立て直そうとしているかについて話始めた。
【※関連記事はこちら!】
⇒チャイナバブル崩壊で考えられる、最悪のシナリオは台湾戦争。普通のシナリオは金融緩和。ベストシナリオは中国が正しく成長して、先進国に入ること
まず、中国の景気は今回、不動産や固定資産への過剰投資によって減速してきているけれど、中国政府は日本とかアメリカと同じようなバズーカ(金融緩和)で、お金をばらまいて、景気減速に対処しようとしているようだ。
バラマキといっても、中国政府は個人ではなく企業へバラマキをしていて、特にEV(電気自動車)やAI、半導体といった分野に注力することで、雇用を安定させ、それが中国政府の力を高めることにもつながるそう。
そのため、中国市場はずっと低迷したままではあるけれど、中国のハイテクセクターは政府が注力するから比較的堅調な状態を保つことができそうで、チャンスもありそうとポールさんは見ているのだ。
ポールさんが注目している中国ハイテク企業の例として挙げたのは、バイドゥ(百度)、BYD、アリババ、テンセントだ。
バイドゥは中国のグーグルみたいな会社で、マーケットにも注目されており、バリュエーション(企業価値評価)は14倍と、アメリカのテクノロジー株の30倍超えと比べて、だいぶ安いとのこと。
バイドゥは広告の分野などでグーグルと似たようなことをするため、短期的に中国の景気減速の被害を受けやすいものの、いつか安くなり過ぎたらチャンスとポールさんは考えているようだ。
また、電気自動車だと中国にはBYDがあり、アリババとテンセントもいい会社で、バリュエーションは大体10~20倍の間とのこと。
アリババとテンセントは、バイドゥと比べて消費者向けの会社で、景気減速に影響されやすいものの、eコマースや決済、金融も持ち合わせており、中身は強い会社だそう。
そして、中国景気はいつまでも悪いわけでもないため、こういった企業が反転するタイミングを見極めて、投資すべきだとポールさん。
反転するタイミングになって会社のことを勉強すると手遅れで、下がっている今、勉強し始めて注目した方がいいと結論付けた。
アメリカのテクノロジー会社は成長株。AIが人類社会にもたらす夢を、今の利益で判断するのは妥当ではない
続いては、アメリカのテクノロジー企業のバリュエーションの話題に。
アメリカのテクノロジー企業はPERでいうと30倍、40倍で、バリュエーションが高いけれど、アメリカのビッグテックになると、バリュエーションの高さは関係なくなってくるのか、渡部さんは気になるようだ。
これに対し、ポールさんは、アメリカのテック会社は成長株であり、成長株の場合だとバリュエーションはそこまで関係ないとコメント。
また、成長株は売上の成長がかなり重要で、売上の成長が止まったり、決算が予想に届かず失望感が出れば、株価は暴落してしまうそう。
それでも成長株に賭ける理由―――それは、市場が本当の成長より成長を織り込んでおらず、織り込みが足りないというところにあるようだ。
AIが人類社会に与える影響は、工業革命に近いところがあり、将来の利益も相当大きいだろうと思われるため、今の利益でバリュエーションを見るというのは、妥当ではないという考えが支配的だそう。
ポールさん曰く、テック会社が地道に夢に一歩一歩進んでいれば、夢はいずれ叶い、株価もどんどん夢に近づいてくるとマーケットは思っているそうだ。
同じテック会社なのに、アメリカ株なのか、中国株なのかで評価の矛盾が拡大しているところを利用すれば、儲けられる
アメリカのテック会社が成長株だと思われている一方、中国のテック会社はアメリカのテック会社と中身が同じなのに、バリュー株だと思われていて、もう終わっているという見方が多いそう。
確かに、中国景気は減速していて、地政学リスクの問題もあるけれど、中国のテック会社がバリュー株ではなく、実は成長株なんだという見方に変わったとき、その変化は大きいもので、株価も大きく上昇するとポールさんは見ている。
中国のテック会社に対する、マーケットの見方が矛盾していることを端的に表すのが、実はアップルなのだそう。
アップルの売上は5分の1が中国で、中国がいなければiPhoneも成り立たず、地政学の問題なども考慮するなら、アップルは本当は投資できない銘柄になってしまうけれど、アップルのPERは30何倍で、アップルが実質中国株だから投資できないという人はいないという。
同じテック会社なのに、アメリカ株なのか、中国株なのかで評価の矛盾が拡大しているところを利用すれば、儲けられるというのがポールさんの主張だ。
ただ、マーケットが中国株を悲観している間は動かないため、タイミングの問題もあるとの注意点も忘れてはならないそうだ。
アメリカのマクロ環境は良くなっていて、大きなリセッションになる可能性は低下している
最後は、アメリカの雇用統計で失業率が少し上昇したことに関連して、アメリカのマクロ環境の話題に。
ポールさんは、アメリカのマクロ環境は良くなっていて、大きなリセッションになる可能性は低下していると見ている。
アパート投資に投機的なものがあり、金利が上がってアパート経営が苦しくなっているといった話はあるものの、アメリカは基本的に住宅を借りないため、一軒家の着工などはそこまで弱くなっていないようだ。
雇用が少し弱くなってきたことについては、FRBにすればインフレの低下に向けて地道に歩いている証拠になるため、結構歓迎すべきことなのだそう。
最近のAIについては、普通の景気サイクルとは別のテンポで動いているもので、たまたま今回、金利引き上げで景気減速させようとしているところに、AIの話が盛り上がり、株式市場から見ると大きな話題だったそう。
テクノロジー関係の雇用が多い街であれば、AIの盛り上がりが雇用や不動産などいろんな面での景気をよくしてくれるようだ。
それは、ポールさんが景気を判断する基準としている「HOPE(※)」で見てもわかることだという。
(※HOPEの「H」はHOUSINGで住宅、「O」はORDERで受注、「P」はPROFITで利益、「E」はEMPROIMENTで雇用)
住宅がそれなりによく、雇用が少し減速したということは、不景気のサイクルの最後まできていそうというのがポールさんの見立てで、他の切り口から見てても、アメリカが大きなリセッションになる心配はないと締めくくった。
ここまで、9月5日(火)放送の「WORLD MARKETZ」に電話出演した、ポールさんのマーケット解説を中心にお届けした。
冒頭でも紹介したとおり、ポールさんはメルマガ&オンラインサロン「米国株&世界の株に投資しよう!」で情報配信をしている。登録後10日間は無料だ。米国株投資をしてみたい、すでにしているけどもっと現地からの情報が欲しい、ポールさんが推奨する個別銘柄やポートフォリオを見てみたいという人は、こちらをぜひ登録してみてほしい。
(ザイ投資戦略メルマガ)
●ポール・サイ ストラテジスト。外資系資産運用会社・フィデリティ投信にて株式アナリストとして活躍。上海オフィスの立ち上げ、中国株調査部長、日本株調査部長として株式調査を12年以上携わった後、2017年に独立。40代でFIREし、現在は、不動産投資と米国株式を中心に運用。UCLA機械工学部卒、カーネギーメロン大学MBA修了。台湾系アメリカ人、中国語、英語、日本語堪能。米国株などでの資産運用を助言するメルマガ「米国株&世界の株に投資しよう!」を配信中