力士の給料、懸賞金など“相撲界のおカネ事情”公開！入門してわずか2年で年収1000万円超、関脇時代は給料だけで年収2000万円超を稼いだ豊ノ島さんを直撃！

力士の給料はどれくらい？ 懸賞金は1本いくら？ 元関脇の豊ノ島さんに聞いた、角界のおカネ事情を紹介！

ダイヤモンド・ザイでは、毎号異なるゲストに「お金との向き合い方」について聞くインタビュー記事「おカネの本音！」を掲載している。発売中のダイヤモンド・ザイ2024年1月号のゲストは、元関脇でタレントの豊ノ島さん。

2020年に惜しまれつつ相撲界から引退し、現在はタレントとして活躍する豊ノ島さん。今回は、意外と知られていない角界の”おカネ事情”について、セキララに語ってもらった！
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小学生のときに「貴花田を倒す！」と、力士になることを決意！
入門直後は不慣れな大部屋生活で、1年で20キロ痩せた時期も！

──小学生のときに相撲を始めたそうですね。

豊ノ島　最初はまったく興味がなくて、サッカーに夢中でした。裸にまわし一本の相撲よりもユニフォーム姿のほうが格好いいし、何よりやってて楽しかったですからね。

　小学1年生のときに参加した祭りの相撲大会で勝ったのが、その後の相撲人生の始まりです。地元の少年相撲クラブにスカウトされ、最初は嫌々稽古をしていたのですが、少しずつ面白さを感じるようになって。

 「お相撲さんになりたい」と決めたのは、小学2年生のとき。忘れもしない平成3年（1991年）夏場所の初日、18歳の貴花田さん（後の横綱・貴乃花）が、大横綱の千代の富士さんを破り、引退を決意させた大一番をテレビで見たのがきっかけです。

　まだ幼かったので、コトの重大さは正直よくわからなかったけど、周りの大人たちが大騒ぎしているのを見て「すごいことなんだ」と興奮しました。そして、いまとなっては笑い話ですが「次は自分の番だ。大人になったら、俺が貴花田を倒して引退させてやる」と奮い立ったのです（笑）。

──その後、中学、高校と相撲部で活躍し、全国大会に出場。高校卒業後、時津風部屋に入門します。力士になれた喜びは大きかったですか？

豊ノ島　嬉しさはありましたが、一瞬でしたね。最初の1年間は、辛かった思い出しかありません。プロの世界と学生相撲では、稽古の厳しさが比べものにならないと聞いていましたが、その点は想像を超えるほどではありませんでした。

　むしろ、プライベートのない大部屋での共同生活や、兄弟子にいろいろと気遣いしなければならないことのほうが辛かったですね。精神的な負担が大きかったせいか、入門してから1年で20キロ近く痩せました。

──初土俵は平成14年（2002年）の初場所。そこから序ノ口、序二段で連続優勝と、好調な滑り出しでした。

豊ノ島　力士は関取（十両以上）にならないと給料がもらえないのですが、序ノ口、序二段でも、優勝すると賞金が出るので嬉しかったですね。10万円、20万円程度なのでサラリーマンの初任給よりも少ないのですが、高卒の若造にとっては大金でした。

　いま現役力士は約600人ですが、私が力士になったばかりの頃は900人ほどいました。でも、十両以上の関取は70人。つまり給料をもらえるのは数パーセントだけ。

　横綱になれば給料だけで年収3000万円以上も稼げるけど、十両から陥落して幕下になると100万円にも満たなくなる。実力次第とはいえ、相撲界は“超・格差社会”と言えると思います。

──その“格差”を乗り越え、豊ノ島さんは入門からわずか2年で関取になられていますね。最初にもらった給料は何に使いましたか？

豊ノ島　兄弟子が持っていたブランド品に憧れ、銀座の高級店でブランドロゴがでかでかと入ったバッグを買いました。田舎者丸出しですよね（笑）。

関取になってからは年収が90万円ちょっと⇒1000万円以上に！
毎晩のように若い衆を連れて外食し、お金は貯まらなかった

──関取になって、年収が一気にアップしたんじゃないですか？

豊ノ島　幕下の年収は90万円ちょっと。十両は1000万円以上ですからね。境目を一つ超えるだけで、年収が十数倍になるんだから驚きですよ。いかに関取の価値が大きいのかを表していると思います。

──入門して2年目だから20歳ですか。それで年収1000万円超えはすごいですね！ 稼いだおカネはどうしていたんですか？

豊ノ島　関取になってからしばらくは貯金していました。毎月100万円以上の給料が入ってくるし、稽古漬けの毎日は幕内に上がっても変わらないので、おカネを使う暇もありませんでしたからね。どんどん貯まる一方なので、毎日、預金通帳を眺めてはニヤニヤしていました（笑）。

　でも、途中で「もう貯めなくてもいいか」と思うようになったんです。頑張って稼いだのだから、破天荒に使ってやろうという気持ちが強くなり、毎晩のように若い衆を引き連れて食事に出ていました。

──若くて体格のいいお相撲さんたちだから、ものすごく食べるんでしょうね。支払いも相当だったんじゃないでしょうか。

豊ノ島　見栄を張って、高級な店ばかりに連れていきましたからね。あまりショボい店だと、若い衆からケチだと思われかねないと心配していたので。でも、いい店に連れていくと若い衆たちは遠慮して、あんまり食べないんです。

　だったら、気兼ねなく食べられる安い店や、食べ放題の店に連れていったほうがいいと思うようになりました。それでも毎晩のように出掛けていたので、貯金はほとんど残らなくなりましたね（笑）。

──2011年に結婚されていますが、家庭を持ったことでおカネの使い方は変わりましたか？

豊ノ島　結婚したのは、僕自身のキャリアハイである14勝1敗で横綱白鵬（現・宮城野親方）との優勝決定戦に臨み、敗れてしまった平成22年（2010年）九州場所の直後です。三役に定着し、僕の相撲人生の中でも最高潮の時期だったのですが、それなのに貯金がほとんどないことに妻はびっくりしていました。

　なので、結婚してからは妻に通帳を全部預け、管理してもらいました。それからは完全な“お小遣い制”です（笑）。給料にはなるべく手を付けず、貯金を少しでも増やすように、懸賞金を“お小遣い”とするルールを夫婦の間で取り決めました。

──懸賞金は、いくらもらえるのですか？

豊ノ島　1本7万円で、そのうち3万円が力士の手取り分になるんです。ひと勝負に懸賞金が10本掛かれば30万円の“お小遣い”になるのですから、かなり燃えましたね（笑）。横綱や大関にはそう簡単に勝てないけど、人気があった遠藤や高見盛（現・東関親方）との取り組みは懸賞がたくさん掛かるし、勝てるチャンスも大きいので、つい熱が入りました。

　でも、誤解のないように言っておきたいのですが、決しておカネのためだけに相撲を取っていたわけではありませんよ。力士にとって何よりの喜びは、勝負に勝つこと。おカネはその後から付いてくるものです。

稽古中の大ケガで関取から幕下に陥落し、年収も逆戻り！
相撲界の厳しさを味わうも、見事関取に復活！

──足掛け18年間の相撲人生を送られたわけですが、後半は苦しい時期が続いたようですね。

豊ノ島　忘れられないのは、稽古中にアキレス腱を断裂し、関取から幕下に陥落したこと。32歳のときだったのですが、年齢も年齢だったので、一時は引退も考えました。

　でも、辛いリハビリを経験して何とか土俵に戻り、幕下の力士たちと胸を合わせるうちに「まだやれる」という気力が蘇って、踏みとどまったんです。結局、幕下の期間は2年半に及びましたが、何とか耐えてよかったと思います。

──幕下に下がると年収90万円に逆戻りしてしまうんですよね。

豊ノ島　そうなんです。何も知らない人たちからは「下がっても、今までどおり給料はもらえるんでしょ」と言われたりしましたが、本当にもらえなくなる。しかも、関取ではないので、自ら大部屋生活に戻ることにしました。相撲界の厳しさをあらためて思い知らされましたね。

　恐ろしいのは、収入が一気に減っても、それまでの習慣はなかなか抜けないことです。つい見栄を張って若い衆に奢ったりするので、おカネはどんどん減っていきました。

──どうやって、おカネをやりくりしたのですか？

豊ノ島　幕内のころに蓄えたおカネを取り崩しながら、何とかやりくりしました。そう考えると、妻に通帳を預けておいて本当によかったと思います。稼いだ給料をしっかり貯めておいてくれたんですからね。

──奥さまの支えもあって見事関取に返り咲き、令和2年（2020年）の春場所で引退。現在はタレントとして活躍されていますが、なぜ相撲界を離れたのですか？

豊ノ島　引退してから2年間、部屋付き親方として指導にあたっていたのですが、相撲界の発展を支える仕事は、中にいなくてもできるんじゃないかと思ってタレントになりました。お年寄りだけでなく、若い人にも相撲にもっと興味を持ってもらいたい。タレント活動を通じて、その魅力を1人でも多くの人に伝えられたらと思っています。

　最近の相撲部屋は、世代交代によって、伝統を受け継ぎつつも新しい取り組みをするところが増えています。昔は若い衆は大部屋生活が当たり前でしたが、最近はプライバシーを大切にする若者の風潮に合わせて、個室を与える部屋もある。外にいる立場を生かしながら、そんな新しい姿も紹介していきたいですね。
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