「勝者のゲーム」と資産運用入門

マイナス金利解除後、日銀の金融政策はどうなる?
利上げに慎重な内田眞一日銀副総裁発言も。
政策金利1%でも正常化の範囲。過度な心配は不要!太田忠の勝者のポートフォリオ 第123回

2024年2月13日公開
太田 忠
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今年の株式市場を占う日銀の金融政策。昨年12月以降の動きをおさらい

 先週のコラムでは「マイナス金利解除カウントダウンの日銀 vs 利下げに慎重なFRB」というテーマを取り上げた。今年の株式市場を占う最重要ポイントは、日米中央銀行の金融政策転換にある。日銀は金融正常化に向けて舵を取り、米連邦準備理事会(FRB)は金融緩和に向けて動き出す。まさにこれが株式市場の行方を決めるというお話だった。今回もその続き。日銀がマイナス金利を解除した後、どのような金融政策を取るのかに焦点を当てて考えてみよう。

 今一度、日銀を取り巻く現状を確認しておきたい。

 「チャレンジングな状況が続いていますが、年末から来年にかけて一段とチャレンジングになると思っています」。昨年12月7日の参議院財政金融委員会における植田和男総裁の発言だ。これを受けて為替市場でドル円は145円台から一気に141円台まで急騰、日経平均株価も大幅安となり円高・株安が進んだことは記憶に新しい。この植田発言は金融政策に関する答弁ではなかったため、勝手に誤解されてマーケットが動いたのは想定外だった。

 注目された昨年12月19日。日銀の金融政策決定会合の結論は「マイナス金利継続、大規模金融緩和維持」であった。大方のマーケット関係者の予想通りだったが、驚いたのが金融政策の先行き指針を盛り込んだフォワードガイダンスが全く変更されなかったことだ。「全然チャレンジングじゃないじゃないか!」との声があちこちから聞こえてくる内容だった。ある意味、なかなか愉快で可笑しい12月のマーケットだった。国内長期金利は大きく低下し、12月20日には0.550%まで下がった。11月1日に0.950%まで上昇していたことからすれば様変わりだ。

1月会合は予想通り緩和維持だったが、政策修正に前向きな意見が相次ぐ

 そして、今年1月22日~23日に開催された最初の金融政策決定会合。結論は12月と全く同じく「マイナス金利継続、大規模金融緩和維持」だったが、会合参加者の発言内容をまとめた「主な意見」が公表され、植田総裁のモゴモゴした記者会見では明確に伝わってこなかった部分がビシバシ伝わってくる内容だった。

 「マイナス金利解除を含めた政策修正の要件は満たされつつある」「今が正常化に動く千載一遇の状況」、そして「能登半島地震の影響を今後1~2カ月程度フォローし、マクロ経済への影響を確認できれば、金融正常化が可能な状況に至ったと判断できる可能性が高い」という具体的な意見、さらには「物価目標の実現が見通せるようになれば、ETF(上場投資信託)などの買い入れをやめるのが自然。やめても市況などへの影響は大きくない」という踏み込んだ意見まで出されたのが印象的だ、というコメントを私は前回のコラムで述べた。

 これを受けて国内長期金利は1月24日には0.745%まで上昇。12月に大きく下げていた銀行株が1月から大幅に上昇する、という分かりやすい相場展開となった。

4月会合で政策金利をマイナス0.1%から0.0%に引き上げると筆者は予想

 個人的には、4月の金融政策決定会合が金融政策転換の焦点になると見ている。金融正常化に向けて日銀が重要な判断材料にしているのが賃上げ動向だからだ。春季労使交渉において、大企業の交渉結果がまとまるのは3月中旬。その結果を詳細に検討した上で日銀が3ヶ月ごとの物価見通しを示す4月会合で動くというシナリオだ。現在の政策金利はマイナス0.10%だが、これが0.00%のゼロ金利に修正されると考えている。日銀がマイナス金利を解除すれば実に17年ぶりの金利引き上げとなる。

 ところで、先週は興味深い要人発言が飛び出した。日銀の内田眞一副総裁がマイナス金利解除後、「どんどん利上げをしていくようなパスは考えにくく、緩和的な金融環境を維持していくことになる」と奈良で開催された金融経済懇談会でコメント。マイナス金利解除後の具体的な金融政策を発信するのは初めて。その当日の2月8日の株式市場が盛り上がり、日経平均終値は744円高となる3万6863円と1990年2月以来となる34年ぶりの高値を付けた大きなキッカケとなった。

海外投資家はマイナス金利解除後も利上げ続き0.25%までいくとの見方も

 実は海外投資家の間では、マイナス金利解除後も利上げが続くとの見方が多い。日本の政策金利の予想は、ロンドン証券取引所のスワップ市場の値動きから算出されるデータが参考になる。現状では2024年12月時点の政策金利予想は0.14%。実際のマーケット参加者からは0.25%まで引き上げられるとの見方が強まっているようだ。そうなれば国内長期金利は1.0%レベルまで「チャレンジング」することになると思う。

 もちろん、このような追加的利上げは難しいとの見方もある。FRBによる早期利下げ転換が近づく中、米国と逆行する金融政策を日銀が行えば急速な円高・ドル安が進んでマーケットは混乱するため、そのような事態を避けるはずとの見立てだ。米金利先物市場の値動きから先行きの政策金利を予想する「フェドウオッチ」では、FRBが6月までに利下げに転換する確率が9割を超える。

短絡的な予想は当たらない。金利差縮小を意識し円高進むとの見方は外れ

 とは言え、日本は本格的利上げをするわけではない。マイナス金利と言ういびつな世界から金融正常化というまともな世界に踏み出すだけだ。たとえ政策金利が1%程度になったとしても、それは金融正常化の範囲内と私なら解釈する。

 「今年は日米金利差が縮小して、急速な円高・ドル安になる」「ドル円レートは130円!」

   2024年の開始当初、為替市場では急激な円高が進む見方が有力だったが、今どうなっているだろうか? 思惑とは裏腹にドル円は150円に接近しており、昨年末の141.25円から急速な円安となっている。皮肉なものだ。やはり、短絡的な予想は全く当たらないという典型的な事例だと思う。

 さあ、ここから先はどうなるのか? 皆さんで考えていただきたい。

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 先週の水曜日、2月7日20時よりWebセミナーを開催した。テーマは『マイナス金利解除で株式市場はどうなる?』。平日夜にもかかわらず291名もの参加となった。Q&Aも含めて22時半に終了。すでに会員ページのアーカイブでWebセミナー動画をアップ済である。冒頭に投資家にとって大事なことを申し上げた。次回は3月6日(水)20時からの開催予定である。

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

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