中国人の日本株「爆買い」過熱で、上海上場の日経ETFの売買が一時停止
上海上場の日経ETFの売買が一時停止―。
先週水曜日の東京市場。朝方から日経平均はグングン上昇し、前日比620円高の3万6200円台を付けていたところでショッキングなニュースが飛び込んできた。上海証券取引所に上場する日経平均連動型ETFの売買が一時停止との報道である。中国人投資家による日本株ブームでETF価格が実際の基準価格より大幅に上回る過熱ぶりとなったことが要因だ。対照的に上海総合指数は2020年6月以来となる3年7か月ぶりの安値をつけた。中国では「中国株を売って、日本株を買おう!」という流れが鮮明になっている。「インフレ時代に入った日本経済 vs デフレ時代に入った中国経済」という構図で捉えるとわかりやすいと思う。
ETF売買の一時停止をきっかけに、株価指数先物に怒涛の売りが浴びせられて日中値幅が762円にも達したためこの日の日経平均は結局下げた。ボラティリティの大きさは2023年7月28日の809円以来の大きさである。こうした動き自体はネガティブに捉える必要はなく、日本株が注目されていることの証左だと思う。それにしても売買停止は凄い。投機好きの中国の個人投資家たちの姿が浮き彫りになっている。
海外投資家の1月第2週買越額は1兆4439億円。2012年以降6番目の規模
さて、本題である。先週木曜日に日本取引所グループが投資部門別の売買動向を発表した。海外投資家は1月第2週(9日~12日)において日本株を1兆4439億円(現物9557億円、先物4882億円)買い越した。データを遡ることができる2012年以降で6番目の大きさとなる。現物の買越額だけを見ると2012年の暮れから始まったアベノミクス相場初期並みの水準であり、日本株への期待値が大いに高まっていることがうかがわれる。実際に先々週の日経平均は2200円も上昇しており、2020年3月第4週以来の急騰ぶりだった。
以前にこのコラムで述べたが、マーケットの大きな流れを理解する際は現物の動きが大事だ。先物の動きに気を取られていると判断を誤ってしまう。なぜなら、先物は短期目的の売買やヘッジ機能、あるいは投機目的として活用されるからだ。そもそも、先物は現物株のように無期限に保有できず、取引限月の決められた短期決戦である。トレンドを正しく判断するためには現物の動きを見ないといけない。その現物が大きな動きを見せている。
資本効率改善期待による買越額はアベノミクス初期を上回り、現在も継続
ここで皆さんにアベノミクス相場を今一度思い出していただきたい。起点は2012年11月におこなわれた党首討論会。当時の野田佳彦首相が衆議院解散に突然言及。自民党の安倍晋三総裁は「それは約束ですね、約束ですね。よろしいんですね、よろしいんですね」と念を押しての解散劇となり、自民党が選挙で圧勝して政権を奪取した。金融緩和を軸とした「3本の矢」が日本経済を押し上げるとの期待が高まり、海外勢の現物買いが急増。そして2013年4月に黒田東彦日銀前総裁が異次元緩和を打ち出すと、海外勢の現物の買越額は4月第2週に1兆5865億円に達した。日本株に大いなる光が当たった瞬間である。
そして、昨年3月末。東京証券取引所の主導による日本企業に対するPBR(株価純資産倍率)1倍割れから脱却するための資本政策・経営効率化の要請がきっかけで、海外投資家は12週連続で日本株を買い越し、買越額は6兆1000億円となった。これはアベノミクス相場初期(2012年11月~13年3月)の18週連続での買越額5兆7000億円を上回った。その流れが2024年になっても継続しているのだ。日本企業の資本効率改善に期待した海外勢の買いが続くとの見方が再び強まっている。東証はPBRの改善への対策を開示している企業の一覧を公表し始めており、株価に向き合う経営を促していることは大きな追い風となる。
日経平均株価が過去最高値3万8915円を突破する5つの理由
海外投資家が記録的な買い越しをした一方、個人投資家は記録的な売り越しとなった。個人の売越額は1兆2127億円(現物1兆695億円、先物1432億円)で2013年11月以来の規模。もちろん、新NISAを通じた買いは増えているが、株価急騰で利益確定の売りを出した個人が多かったとみられる。前回のコラムで「今年の日本株の焦点は個人投資家だと思う」と述べたが、現状は目先の動きに支配された投資行動を取っている。2024年は上に突き抜けていく相場である。「逆業績相場」から「金融相場」へと移行する年である。金融相場に入れば、日経平均は1989年12月に付けた過去最高値3万8915円(終値ベース)を突破すると私は考えている。
その理由は以下の5つである。昨年からコメントしているが今一度整理してみよう。
(1)本格的な海外投資家の買い
(2)日本企業の今後の資本効率改善努力
(3)日本株はグローバルで割安
(4)世界でも珍しい金融緩和政策継続
(5)今年から新NISAスタートで資産形成作り
レンジ相場を前提としたカラ売りは危険。踏み上げにあってお金を失う
この中で注釈をつけるとすれば(4)だが、日銀は今後マイナス金利解除により金融正常化に向けての舵取りをおこなう。これは欧米の中央銀行がおこなってきた金融引き締めではなく、金融正常化である。要するに経済が低体温の「金利のない世界」から経済が活性化する「金利のある世界」に戻るということである。日本全体にとってプラス、そして株式市場にとっても大いにプラスに働くと私は見ている。
個人投資家へのアドバイスとしては「レンジ相場を前提としたカラ売りは危険」である。「日経平均が3万6000円になったから、もうそろそろ下がるだろう」と思ってカラ売りすると踏み上げにあってお金を失う。今年は株価水準がどんどん切り上がっていくことを前提とすべきである。
次回セミナーは2月7日に開催。2024年に大きく飛躍したい方は参加を!
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言をおこなっている「勝者のポートフォリオ」。新たな講義動画として太田流「新NISA活用法」のスペシャル講義がスタートしている。新NISAは本格的な個人の資産形成にとても有力な枠組みであり、活用しない手はない。第1弾として「何に投資をして、どう資産配分すればいいの?」という投資初心者の要望にも分かりやすく解説させていただいた。1月からは年代別、シチュエーション別の新NISA活用のシミュレーションの講義をおこなう予定だ。
そして、毎月恒例のWebセミナーを大発会の1月4日(木)20時より開催した。仕事初めの日の平日夜にもかかわらず315名もの参加で盛況だった。このコラムでは個別銘柄の話はできないが、セミナーでは今後大きな上昇が期待できる注目銘柄やテンバガー(10倍株)についても解説。セミナーは会員限定だが10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能である。次回は2/7(水)20時より開催予定である。2024年に大きく飛躍されたい方々の多数のご参加をお待ちしている。
●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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