2024年相場を占う中央銀行の金融政策。先週は重要イベントが2つ発生
本連載で今年取り上げる題材は「金利」を中心としたものが圧倒的に多い。年頭において「今年の相場を占うポイントは何と言っても日米の中央銀行の金融政策転換が最重要である。すなわち、米連邦準備理事会(FRB)の金融引き締めから金融緩和への転換、そして、日銀のマイナス金利から金融正常化への転換である」と申し上げたが、先週は政策金利を巡って重要なイベントが2つ起こった。
まず、先陣を切って政策金利を引き下げたのがカナダの中央銀行だ。6月5日に政策金利を5.0%から4.75%に引き下げると発表。利下げは2020年3月以来となる4年3カ月ぶりだ。4月の消費者物価指数(CPI)の前年同月比上昇率が2.7%と3月の2.9%から鈍化して2021年3月以来の低水準になるなど足元でインフレ鈍化が進んでいることが背景にある。2022年から始まった一連のインフレ局面で利下げに転じたのは主要7カ国(G7)の中央銀行で初めてである。
カナダ中銀に続き、欧州中銀も政策金利を4.25%に引き下げることを決定
続いて、注目された6月6日の欧州中央銀行(ECB)理事会は、政策金利を4.50%から4.25%に引き下げることを決定。利下げは2019年9月以来4年9カ月ぶりとなる。ラガルド総裁は理事会後の記者会見で「金融引き締めの度合いを緩めるのが適切」「インフレ見通しは大幅に改善してきた」と語り2%の物価目標達成に自信を示した。インフレが中期的に落ち着くとみて金融引き締めの度合いを緩めるのが適切との判断である。
5月のユーロ圏のCPIは前年同月比2.6%上昇し、上昇率は4月の2.4%から加速したものの、2022年10月につけた過去最高の10.6%からは大幅に鈍化。インフレの主因だった食品・エネルギー価格が落ち着いたことが大きい。一方で、欧州経済は堅調な米国経済とは対照的に個人消費の冷え込みで需要回復が遅れている。経済をテコ入れするとの意味合いも今回の政策金利の引き下げに含まれている。
政策金利引き下げも欧州株価は停滞。追加利下げへの慎重姿勢が要因か
ちなみに四半期に1度公表される景気・物価見通しにおいて、ユーロ圏の物価上昇率は2024年に2.5%、2025年に2.2%で推移するとのシナリオが示された。前回3月時点の予測から0.2%ずつ上方修正されたが、2026年には1.9%まで落ち着く見通しとなっている。
政策金利を引き下げたとは言え依然として4.25%という高水準のままだ。今後の焦点は、ECBがどのようなペースで利下げしていくかである。いまだ賃上げ圧力は衰えておらず、人件費に敏感なサービス業ではしつこいインフレが定着している。公表された声明文では2%の物価目標の達成に向けて「必要な限り政策金利を高水準にとどめる」と明記されており、利下げを急がない姿勢を強調している。6月6日の欧州株式市場は上昇したものの、追加利下げが不透明なことから伸び悩んでいる。次回7月の理事会での連続利下げは見送られる可能性が極めて高い。
FRBは据え置きが濃厚。先走るマーケットに肩透かしを食らわせる格好か
本丸のFRBの金融政策はどうなるだろうか。6月12日(日本時間6月13日未明)に公表される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが予想される。現在の米国の政策金利は5.25~5.50%であり、これはリーマン・ショック直前の水準を上回るレベルにある。米国では直近の1週間で景気や雇用の減速を示唆する指標が相次ぎ、足元で利下げ観測が再び強まっているが、FRBが目標とする2%に達するには時間がかかる。また、3カ月ごとに更新されるドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利の見通し)では2024年の利下げ回数は3月時点の3回から減る可能性が高い。要するに、マーケットは目先の数字を頼りに先走り過ぎており、肩透かしを食らう形になると予想する。
5月22日に公表された5月FOMCの議事要旨では、FOMCメンバーが強いインフレ警戒懸念を示していたことが明らかとなり、最近もFRB高官から相次ぐ利下げへの慎重発言が飛び出している。そもそもパウエル議長は一貫して「早期の利下げには慎重」との姿勢を示しており、この姿勢は直近1週間の景気や雇用のデータでやすやすと覆らないだろう。また今年は11月に大統領選挙もあるため安易な利下げは行われないと考えるべきであろう。個人的なシナリオでは、今年利下げがあったとしても12月のFOMCだと考えている。
6月の日銀会合では国債買い入れ額の減額、7月には追加利上げを決定か
一方、6月14日の日銀の金融政策決定会合。こちらは金融正常化に向けた動きが見られる筈だ。すなわち「国債買い入れ額の減額」を発表すると私は見ている。すでに5月13日に債券市場で私たちはサプライズを見た。国債買い入れオペ(公開市場操作)において、日銀は5年超10年以下の国債の買い入れ額を従来の4750億円から4250億円に500億円減額した。6月発表の金融正常化に向けての地ならしである。
そして、早ければ7月の金融政策決定会合において植田和男総裁は0.25%の追加利上げを決定すると私は考えている。市場関係者の間では「9月か10月頃」との見方がなされていると思うが、今の長期金利の急速な上昇ペースではそんな悠長なことを言ってはいられない。やや軽はずみの感があった植田総裁の「円安容認発言」でドル円は一気に160円台まで円安が進み、政府が2度に渡って9.7兆円ものドル売り・円買いの為替介入を行なった。今は植田総裁も更なる円安には歯止めをかけたいはずである。日銀は為替レートそのものを金融政策の目標にはしないが、経済の安定を損ねかねない円安への警戒を強めていると思う。
バリュー投資戦略を採用する「勝者のポートフォリオ」は最高値を更新!
以上、見てきたように欧米では利下げへの舵を切り、日本はマイナス金利を脱却して金融正常化へと踏み出した。今は逆業績相場から金融相場への過渡期だ。私の経験則からすれば、かなり相場がガタガタする時期である。日々、金融政策を巡る思惑で株式市場は楽観的になったり悲観的になったりを繰り返している。この環境下においてはジタバタしても仕方がない。じっくりと金融相場の到来を待ちつつ、投資戦略を練ることが大事だ。しばらくの間は今のマーケットに合致したバリュー投資戦略がベストであると私は考えている。
さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行なっている「勝者のポートフォリオ」。6月3日時点でのパフォーマンスは+57.2%となり3月末の最高値+57.0%を更新した。2021年10月から運用開始したが、同期間のTOPIXは+47.0%、日経平均+39.3%、東証グロース250指数-44.8%となっており圧勝している(いずれも配当込みベース)。非常に好調だ。
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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。
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