「勝者のゲーム」と資産運用入門

「日本の早まる利上げ vs 米国の遅れる利下げ」で、短期的には株式相場にダブルパンチも焦る必要なし。金融相場に備えつつバリュー投資戦略を継続しよう。太田忠の勝者のポートフォリオ 第139回

2024年6月4日公開
太田 忠
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金利と株式の関係を理解していないばかりに右往左往する個人投資家たち

 「どうして株式市場はこんなに下がるのですか?」「今のマーケットについて分かる人教えてください。毎日含み損が増えて辛いです」

 株式投資を行う個人投資家にとって、金利と株式の関係を理解しておくことは基本中の基本である。こうしたキーポイントを理解せずに株式投資を行っている人たちがあまりにも多いことに今更ながら驚かされる。SNS上で悲鳴に似た投稿をこのところ連日のように目にするが、精神的にかなりきついのではないかと推測される。昨今の株式市場の動きは日々の金利動向がダイレクトに関係しており、ある意味非常に分かりやすい動きと言える。私の想定通りのシナリオで進んでおり、私が携わる資産運用業務はほとんど悪影響を受けておらず、おかげざまで余裕の日々である。不安にさいなまれている人はもっと投資の基礎力を身につけたほうがよい。でないとこういう局面で間違った行動を取りやすい。

日銀の金融政策修正観測で上昇を続ける長期金利。5月30日には1.1%台に

 前回のコラム『国内長期金利は1.000%を回復 ― 金融正常化への歩みを進める日銀』の冒頭で5月22日に国内長期金利が1.000%を回復したことを述べた。2013年5月以来11年ぶりの高水準だ。その後、あれよあれよという間に連日で上昇し続け、5月30日の債券市場で1.100%にまで上昇。2011年7月以来13年ぶりとなる1.1%台だ。わずか1週間のうちに10%も金利が上昇したことになる。

 長期金利の上昇どこまで、市場は日銀政策を読めず―。

 こうした見出しの解説記事がメディアに出ていた。「債券市場にくすぶる日銀の金融政策を巡る不透明感を挙げる声は多い」とのことだが、私に言わせれば日銀の金融政策を巡る不透明感は日に日に払拭されつつある、というのが正直な感想だ。長期金利上昇で「あたふた」しているようでは個人投資家と同じになってしまう。私の考えはこうだ。

6月の日銀会合で国債買い入れ額の減額、7月会合で0.25%の利上げを予想

 3月の金融政策決定会合で、マイナス金利解除、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の撤廃、ETF・REITの新規買い入れ終了という3点セットが決定された。この時点では「国債買い入れは従来通り継続」だったし、4月の金融政策決定会合でもその姿勢は堅持された。だが、5月13日に債券市場でサプライズが起こる。国債買い入れオペ(公開市場操作)において、5年超10年以下の国債の買い入れ額を従来の4750億円から4250億円に500億円減額したのだ。金融正常化に向けて一段と歩みを進めた瞬間だ。次回6月に開催される金融政策決定会合において「国債の買い入れ額を減額」を発表すると私は見ている。

 そして、早ければ7月の金融政策決定会合において植田和男総裁は0.25%の追加利上げを決定すると私は考えている。市場関係者の間では「9月か10月頃」との見方が多いが、今の長期金利の急速な上昇ペースではそんな悠長なことを言ってはいられない。日経平均株価が34年ぶりに史上最高値を更新した2月22日、衆議院予算委員会の席上で植田総裁は「日本経済はデフレではなくインフレの状態にある」と発言した。日経平均の歴史的ニュースで大きく報道されなかったが、日銀総裁として初のインフレ認定をおこなった日だ。

金融正常化に利上げは必要。株式市場に短期は逆風も、中長期ではプラス

 金融正常化において利上げは絶対に必要である。デフレ経済下では景気が低迷しモノやサービスの価格が下落するため、そのカンフル剤として金融緩和政策によるテコ入れが必要だが、インフレ経済下で金融緩和策を続けることは「火に油を注ぐ」ようなものであり、インフレを加速させて逆効果になってしまう。金利引き上げによって日本は金融正常化を取り戻し、日本経済は酸欠状態から解放され、株式市場にもプラスに働く。もちろん、短期的には金利上昇は株式市場には逆風だが、金融正常化でようやく日本も他の先進国と同じスタートラインに立てる。来春までにさらに0.25%の利上げをおこなうというのが私の見立てである。

 一方、米国はどうか? NYダウが5月20日に初の4万ドル台乗せとなり、主要3指数揃って過去最高値を更新。その背景にあったのが、インフレ鈍化を受けた長期金利の低下である。5月3日に発表された4月の米雇用統計は+17.5万人と予想の+24万人を下回り、平均時給も前月比+0.2%と予想の+0.3%に届かなかったことで労働需給の緩和を示した。また5月15日に発表された4月の消費者物価指数(CPI)は前月比+0.3%と予想の+0.4%を下回った。CPIは今年に入り3カ月連続で上振れしていたが、インフレ再加速におびえる市場に安堵感をもたらした。4月下旬には4.7%台まで上昇していた長期金利は4.3%台まで低下し、FRBが年後半にも利下げを開始し、米経済がソフトランディング(軟着陸)できるとの観測が強まっていた。

米国の利下げは遅れる可能性が大。仮にあるとしても12月のFOMCと予想

 ところが、5月30日時点でNYダウは3万8111ドルとなっており、高値から2000ドルも下落している。営業日日数でわずか8日の出来事だ。5月の購買者担当景気指数(PMI)が製造業とサービス業においてともに上回り、5月22日に公表された5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨でメンバーが強いインフレ警戒懸念を示していたことが明らかとなり、さらに米連邦準備理事会(FRB)高官から相次ぐ利下げ慎重発言が飛び出したことが要因だ。だが、思い出してほしい。そもそもパウエル議長は一貫して「早期の利下げには慎重」との姿勢を示してきた。浮かれていたのはマーケットだけ。長期金利も再び4.6%台まで上昇している。今年は11月に大統領選挙があるため安易な利下げは行われないと考えるべきであろう。個人的なシナリオでは、今年利下げがあったとしても12月のFOMCだと考えている。

 以上を整理すると『日本の早まる利上げ vs 米国の遅れる利下げ』という今回のコラムのタイトルになる。さらに深掘りすれば米国の遅れる利下げで金融相場到来が遅くなることへの失望感、そして日本の早まる利上げで日本市場にとってはダブルパンチとなる。

 とは言え、今は逆業績相場から金融相場への過渡期だ。私の経験則からすれば、かなり相場がガタガタする時期である。この環境下でジタバタしても仕方がない。金融相場の到来をじっくりと待ちつつ、今のマーケットに合致したバリュー投資戦略を実行するのみだ。このスタンスが今のベストな投資戦略と考えており、資産運用業務において大いに奏功している。

「勝者のポートフォリオ」の成績は好調。6月6日セミナーに参加し参考に

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。5月31日時点の累計パフォーマンスは+56.1%となり3月末の最高値+57.0%にあと一歩と迫った。2021年10月から運用を開始したが、同期間のTOPIXは+45.6%、日経平均は+37.7%、東証グロース250指数は-47.7%(いずれも配当込みベース)と圧勝している。非常に好調だ。

 勝者のポートフォリオでは2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。次回のWebセミナーは6月6日(木)20時より開催。テーマは『好調な米国株vs軟調な日本株―今後の展開を読む』。本コラムではなかなか書けない個別銘柄やテンバガー(10倍株)などのお話も満載である。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加可能だ。

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案や銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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