「勝者のゲーム」と資産運用入門

6月の日米金融政策が公表、今後のマーケットは?エヌビディアなどの活躍で好調の米国市場に対し、日本市場は決算発表が本格化する7月末まで軟調か。太田忠の勝者のポートフォリオ 第141回

2024年6月18日公開(2024年6月17日更新)
太田 忠
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FOMCは7会合連続で金利を据え置き。利下げ回数見通しも年内1回に変更

 先週は6月の日米金融政策の公表が立て続けに行われた慌ただしい週となった。米連邦公開市場委員会(FOMC)が6月12日(水)、そして日銀の金融政策決定会合が6月14日(金)に結果を公表。マーケットがほぼ予想していた通りの内容となったが、株式市場の反応と今後について解説したい。

 まずはFOMCである。政策金利は7会合連続での据え置きとなり5.25~5.5%を維持。最後の利上げとなった2023年7月以降、2001年以来の高金利が約1年間続いている。併せて公表されたドットチャート(FOMCメンバーによる政策金利見通し)は2024年の利下げ回数が減らされる形となった。ドットチャートは4半期ごとに開示されており、前回の2024年3月時点では2024年の利下げ回数は3回であったが、今回は1回に変更された。

 市場関係者の事前予想では「2回に減る」との見方が多かった。9月と12月にそれぞれ0.25%ずつ利下げされるのが有力な見方であり、1回になるとの予想は少なかった。したがって、米連邦準備理事会(FRB)はマーケット予想より厳しい姿勢で金融引き締めを続けると示唆したことになる。同時に経済安定のための中立金利は前回の2.6%から2.8%に切り上げた。コロナ禍を経て一段と強くなった経済状況が高金利への耐性を高めたことになる。一方で、2025年と2026年の利下げ回数は前回の3回ずつから4回ずつにそれぞれ増やされた。

ネガティブな見通しにも関わらず、ナスダックが高値更新する理由は?

 FOMC公表後に行われた記者会見でのパウエル議長の主な発言は「インフレはピークから大きく和らいだが依然として高すぎる」「インフレが持続的に2%に向かうという確信が得られるまで利下げしない。まだ確信は得られていない」「今後の政策運営はデータ次第」とのことで、内容自体に目新しさはなかった。

 「年内の利下げ回数が3回から1回に減らされたら、ますます金融相場の到来が遠のく!」「株式市場にとっては大きなマイナスだ!」というネガティブな反応が起こってもいいはずだが、S&P500とナスダック指数はFOMC公表後も最高値更新を続けている。どうしてだろうか?

 パウエル議長は「単月の指標ではなく3カ月、6カ月、12カ月と連続する期間で理解することに意味がある」と記者会見の席でクギを刺したが、同日の午前中に発表された5月の消費者物価指数(CPI)は予想の+3.4%(前年同月比)に対して結果が+3.3%と下回り、翌日に発表された5月の卸売物価指数(PPI)は予想の+0.1%(前月比)に対して-0.2%と下回った。このため「年内の利下げ回数は1回ではなく2回になる」との従来の見方が堅持されているのである。マーケット参加者の予想であるフェッドウオッチによる9月の利下げ確率は5割から6割に上昇した。長期金利も4.4%台から再び4.2%台に低下している。

ナスダックは、エヌビディアなどの指数寄与度の高い個別銘柄が大活躍

 「米国株はグロース主体のナスダックが上昇、景気敏感主体のNYダウが下がっていますが、この理屈は何になるのでしょうか? 米国の利下げ期待が先延ばしになり、逆になると思ったので教えてください」との質問を個人投資家から受けたが答えは明白だ。本来ならば、利下げ先延ばしするというシステマティックリスク(市場全体のリスク)によってNYダウもナスダックも下落するところだが、ナスダックの場合は指数寄与度の高い個別銘柄のエヌビディア、アップルなどが大活躍しているために上昇している。要するに現状のナスダックは「システマティックリスク<アンシステマティックリスク(個別銘柄リスク)」という構図になっている。この状況はまだしばらく続きそうである。

 一方、日銀の金融政策決定会合。現状の政策金利0.0~0.1%程度は据え置き、そして国債買い入れの減額については「市場参加者の意見も確認し、次回の7月会合で今後1~2年程度の具体的な減額計画を決定する」と発表した。6月の時点では明確な回答を出さず、7月に具体的な発表をするという「予告型」の珍しい内容だった。結論の先送りにはなるが日銀内部だけではなく、マーケットとしっかり対話をして決めていくという姿勢が示されている。

植田総裁就任以降の日銀会合後はすべて円安に。「植田トレード」が活況

 事前の市場予想では、6月の金融会合では「国債購入額を現在の月6兆円程度から5兆円程度に減額」「7月の利上げに向けて地ならしをおこなう」というのが大方の見方だったが、結果はややトーンの異なるものとなった。植田和男総裁の今回の決定は「ハト派的」と受け止められ、この日のマーケットは円安・株高という結果になった。ちなみに、2023年4月に植田総裁が就任してからの金融政策決定会合後のドル円はすべて円安に動いている。「植田トレード」とでも言うべき現象が続いているのが興味深い。要するにドル円という視点で見た場合の解釈は「結論はいつもハト派」「とにかくドルを買って、円を売るのが得策」となっている。

 記者会見において植田総裁は「国債買い入れの減額はわずかではなく相応の規模になる」「状況次第では7月の利上げもありうる」と述べたことでハト派的な要素をやや打ち消そうとする様子が見られたが、ドル円は158円台まで円安が進んだ。

3万9000円が上値の壁となる日経平均株価。上値が重い2つの理由とは?

 日本の株式市場はこのところ沈滞ムードが続いている。日経平均株価は3月22日に史上最高値の4万888円を付けた後、ピークアウト感が出ており3万9000円が上値の壁となっている。その結果、3万7000円台~3万8000円台で推移している。

 以前にも指摘したが2つの理由があると私は考えている。1つが日本は金融正常化に向けて金融緩和策から脱却することにより短期的な逆風を受けやすいこと。もう1つが今期の企業業績予想が非常に保守的なことである。再びマーケットが上昇基調を強めるためには、やはり企業業績が予想よりも良いことがカタリストになる。7月末から本格化する第1四半期の決算発表までは値動きの乏しい軟調な展開になる可能性がある。このひと休みの間に投資家としてやるべきことをやる姿勢が大事である。果たして、あなたは何に取り組まれるだろうか?

 さて、太田忠投資評価研究所とダイヤモンド・フィナンシャル・リサーチ(DFR)がコラボレーションして投資助言を行っている「勝者のポートフォリオ」。6月3日時点の累計パフォーマンスは+57.2%となり、3月末の最高値+57.0%を更新した。2021年10月から運用を開始したが、同期間のTOPIXは+47.0%、日経平均+39.3%、東証グロース250指数-44.8%となっており圧勝している(いずれも配当込みベース)。非常に好調だ。

次回のWebセミナーは7月4日開催。次の上昇相場に乗るために備えよう

 2大特典として毎月のWebセミナー開催とスペシャル講義を提供している。6月6日(木)20時より開催したWebセミナーは平日夜にもかかわらず266名が参加し、大いに盛り上がった。テーマは『好調な米国株vs軟調な日本株―今後の展開を読む』。次回は7月4日(木)20時より開催する。10日間の無料お試し期間を使えば誰でも参加が可能だ。

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●太田 忠 DFR投資助言者。ジャーディン・フレミング証券(現JPモルガン証券)などでおもに中小型株のアナリストとして活躍。国内外で6年間にわたり、ランキングトップを維持した。現在は、中小型株だけではなく、市場全体から割安株を見つけ出す、バリュー株ハンターとしてもDFRへのレポート提供によるメルマガ配信などで活躍。

※この連載は、ワンランク上の投資家を目指す個人のための資産運用メルマガ『太田忠 勝者のポートフォリオ』で配信された内容の一部を抜粋・編集の上お送りしています。メルマガに登録すると、メルマガ配信の他、無料期間終了後には会員専用ページで「勝者のポートフォリオ」や「ウオッチすべき銘柄」など、具体的なポートフォリオの提案銘柄の売買アドバイスなどがご覧いただけます。原則毎月第一木曜夜は、生配信セミナーを開催。

 

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